2023年1月20日金曜日

最高裁判決:著作権:複製主体,私的使用との限界「解釈」「基準」:(最一小平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件))





目 次


最高裁判決:著作権:複製主体,私的使用との限界「解釈」「基準」:(最一小平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件))



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縮小版・最縮小版




複製主体「基準」「事実認定」(縮小版)



「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。」(最一小平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件))

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複製主体「解釈」(最縮小版)



「複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当である」(最一小平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件))

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あてはめ



本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく,親機ロクラクが被上告人の管理,支配する場所に設置されていたとしても本件番組等の複製をしているのは被上告人とはいえないとして上告人らの請求を棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記の機器の管理状況等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。




→→「管理状況等の認定」は不可欠である(最一小平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件)参照)


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「カラオケ法理」への考え方について(最一小平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件)裁判官金築誠志の補足意見)



「最高裁昭和63年3月15日第三小法廷判決(民集42巻3号199頁)以来のいわゆる「カラオケ法理」が援用されることが多く,本件の第1審判決を含め,この法理に基づいて,複製等の主体であることを認めた裁判例は少なくないとされている。「カラオケ法理」は,物理的,自然的には行為の主体といえない者について,規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二つの要素を中心に総合判断するものとされているところ,同法理については,その法的根拠が明らかでなく,要件が曖昧で適用範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。しかし,著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。」(最一小平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件)裁判官金築誠志の補足意見)

「「カラオケ法理」は,法概念の規範的解釈として,一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり,これを何か特殊な法理論であるかのようにみなすのは適当ではないと思われる。したがって,考慮されるべき要素も,行為類型によって変わり得るのであり,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない。この二要素は,社会的,経済的な観点から行為の主体を検討する際に,多くの場合,重要な要素であるというにとどまる。にもかかわらず,固定的な要件を持つ独自の法理であるかのように一人歩きしているとすれば,その点にこそ,「カラオケ法理」について反省すべきところがあるのではないかと思う。」(最一小平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件)裁判官金築誠志の補足意見)

「同判例は,著作権侵害者の認定に当たっては,単に物理的,自然的に観察するのではなく,社会的,経済的側面をも含めた総合的観察を行うことが相当であるとの考え方を根底に置いているものと解される。」(最一小平成23年1月20日判決(平成21年(受)第788号著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件)裁判官金築誠志の補足意見)

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H230121現在のコメント


適法な私的使用の集積とみた知財高裁判決を補足意見が叩いています。

自炊行為等の解釈にも影響を与えるものだと考えます。私的使用も,規範的な判断というのは,この判決から補足意見から読み取れます。本人のみが主体となるという解釈がいかに不十分な言い方と分かります。

   参考URL:

        http://utsuboiwa.blogspot.com/2010/09/blog-post_883.html

        http://utsuboiwa.blogspot.com/2010/09/blog-post_17.html

        http://utsuboiwa.blogspot.com/2010/09/blog-post_54.html

        http://www.mizogami.gr.jp/news/ne_back/jim2207I02.htm

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判決原文(引用)




4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。



放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。

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5 以上によれば,



本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく,親機ロクラクが被上告人の管理,支配する場所に設置されていたとしても本件番組等の複製をしているのは被上告人とはいえないとして上告人らの請求を棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記の機器の管理状況等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官金築誠志の補足意見がある。



裁判官金築誠志の補足意見は,次のとおりである。



著作権法上の複製等の主体の判断基準に関しては,従来の当審判例との関連等の問題があるので,私の考え方を述べておくこととしたい。

1 上記判断基準に関しては,最高裁昭和63年3月15日第三小法廷判決(民集42巻3号199頁)以来のいわゆる「カラオケ法理」が援用されることが多く,本件の第1審判決を含め,この法理に基づいて,複製等の主体であることを認めた裁判例は少なくないとされている。「カラオケ法理」は,物理的,自然的には行為の主体といえない者について,規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二つの要素を中心に総合判断するものとされているところ,同法理については,その法的根拠が明らかでなく,要件が曖昧で適用範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。しかし,著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。

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このように,「カラオケ法理」は,法概念の規範的解釈として,一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり,これを何か特殊な法理論であるかのようにみなすのは適当ではないと思われる。したがって,考慮されるべき要素も,行為類型によって変わり得るのであり,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない。この二要素は,社会的,経済的な観点から行為の主体を検討する際に,多くの場合,重要な要素であるというにとどまる。にもかかわらず,固定的な要件を持つ独自の法理であるかのように一人歩きしているとすれば,その点にこそ,「カラオケ法理」について反省すべきところがあるのではないかと思う。

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2 原判決は,本件録画の主体を被上告人ではなく利用者であると認定するに際し,番組の選択を含む録画の実行指示を利用者が自由に行っている点を重視したものと解される。(★重要です)



これは,複製行為を,録画機器の操作という,利用者の物理的,自然的行為の側面に焦点を当てて観察したものといえよう。そして,原判決は,親機を利用者が自己管理している場合は私的使用として適法であるところ,被上告人の提供するサービスは,親機を被上告人が管理している場合であっても,親機の機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境,条件等を,利用者に代わって整備するものにすぎず,適法な私的使用を違法なものに転化させるものではないとしている。しかし,こうした見方には,いくつかの疑問がある。

法廷意見が指摘するように,放送を受信して複製機器に放送番組等に係る情報を入力する行為がなければ,利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであるから,放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているかという点は,録画の主体の認定に関して極めて重要な意義を有するというべきである。したがって,本件録画の過程を物理的,自然的に観察する限りでも,原判決のように,録画の指示が利用者によってなされるという点にのみに重点を置くことは,相当ではないと思われる。

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また,ロクラクⅡの機能からすると,これを利用して提供されるサービスは,わが国のテレビ放送を自宅等において直接受信できない海外居住者にとって利用価値が高いものであることは明らかであるが,そのような者にとって,受信可能地域に親機を設置し自己管理することは,手間や費用の点で必ずしも容易ではない場合が多いと考えられる。そうであるからこそ,この種の業態が成り立つのであって,親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。

さらに,被上告人が提供するサービスは,環境,条件等の整備にとどまり,利用者の支払う料金はこれに対するものにすぎないとみることにも,疑問がある。本件で提供されているのは,テレビ放送の受信,録画に特化したサービスであって,被上告人の事業は放送されたテレビ番組なくしては成立し得ないものであり,利用者もテレビ番組を録画,視聴できるというサービスに対して料金を支払っていると評価するのが自然だからである。その意味で,著作権ないし著作隣接権利用による経済的利益の帰属も肯定できるように思う。もっとも,本件は,親機に対する管理,支配が認められれば,被上告人を本件録画の主体であると認定することができるから,上記利益の帰属に関する評価が,結論を左右するわけではない。

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3 原判決は,本件は前掲判例と事案を異にするとしている。


そのこと自体は当然であるが,同判例は,著作権侵害者の認定に当たっては,単に物理的,自然的に観察するのではなく,社会的,経済的側面をも含めた総合的観察を行うことが相当であるとの考え方を根底に置いているものと解される。原判断は,こうした総合的視点を欠くものであって,著作権法の合理的解釈とはいえないと考える。





判決原文(全文)



  • 1 -




主 文



原判決を破棄する。

本件を知的財産高等裁判所に差し戻す。

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理 由



上告人X1代理人梅田康宏ほかの上告受理申立て理由並びに上告人X2及び同X3代理人松田政行ほか,同X4及び同X5代理人岡崎洋ほか,同X6及び同X7代理人前田哲男ほか,同X8及び同X9代理人伊藤真ほか並びに同X10代理人尾崎行正ほかの上告受理申立て理由(ただし,いずれも排除されたものを除く。)について

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1 本件は,



放送事業者である上告人らが,「ロクラクⅡ」という名称のインターネット通信機能を有するハードディスクレコーダー(以下「ロクラクⅡ」という。)を用いたサービスを提供する被上告人に対し,同サービスは各上告人が制作した著作物である放送番組及び各上告人が行う放送に係る音又は影像(以下,放送番組及び放送に係る音又は影像を併せて「放送番組等」という。)についての複製権(著作権法21条,98条)を侵害するなどと主張して,放送番組等の複製の差止め,損害賠償の支払等を求める事案である。

上告人らは,上記サービスにおいて複製をしているのは被上告人であると主張するのに対し,被上告人は,上記サービスの利用者が私的使用を目的とする適法な複製をしているのであり,複製をしているのは被上告人ではないと主張する。

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2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。



(1) 上告人X1,同X2,同X4,同X8及び同X10は,それぞれ,別紙著作物目録記載のとおり,同目録記載の各放送番組について複製権を有する。上告人ら(上告人X6を除く。)は,放送事業者であり,それぞれ,1審判決別紙放送目録記載のとおり,同目録記載の各放送に係る音又は影像について複製権を有する(以下,別紙著作物目録記載の各放送番組及び1審判決別紙放送目録記載の各放送に係る音又は影像等を併せて「本件番組等」と総称する。)。

Aは,放送事業者であった者であり,別紙著作物目録記載のとおり,同目録記載の放送番組について複製権を有し,また,1審判決別紙放送目録記載のとおり,同目録記載の放送に係る音又は影像について複製権を有していた。上告人X6は,放送事業者であり,平成20年10月1日,会社分割により,Aのグループ経営管理事業を除く一切の事業に関する権利義務を承継した。

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(2) 被上告人は,ロクラクⅡを製造し,これを販売し,又は貸与している。



ロクラクⅡは,2台の機器の一方を親機とし,他方を子機として用いることができる(以下,親機として用いられるロクラクⅡを「親機ロクラク」といい,子機として用いられるロクラクⅡを「子機ロクラク」という。)。親機ロクラクは,地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し,受信した放送番組等をデジタルデータ化して録画する機能や録画に係るデータをインターネットを介して送信する機能を有し,子機ロクラクは,インターネットを介して,親機ロクラクにおける録画を指示し,その後親機ロクラクから録画に係るデータの送信を受け,これを再生する機能を有する。

ロクラクⅡの利用者は,親機ロクラクと子機ロクラクをインターネットを介して1対1で対応させることにより,親機ロクラクにおいて録画された放送番組等を親機ロクラクとは別の場所に設置した子機ロクラクにおいて視聴することができる。

その具体的な手順は,① 利用者が,手元の子機ロクラクを操作して特定の放送番組等について録画の指示をする,② その指示がインターネットを介して対応関係を有する親機ロクラクに伝えられる,③ 親機ロクラクには,テレビアンテナで受信された地上波アナログ放送が入力されており,上記録画の指示があると,指示に係る上記放送番組等が,親機ロクラクにより自動的にデジタルデータ化されて録画され,このデータがインターネットを介して子機ロクラクに送信される,④ 利用者が,子機ロクラクを操作して上記データを再生し,当該放送番組等を視聴するというものである。

(3) 被上告人は,平成17年3月ころから,初期登録料を3150円とし,レンタル料金を月額6825円ないし8925円として,親機ロクラク及び子機ロクラクを併せて貸与するサービスや,子機ロクラクを販売し,親機ロクラクのみを貸与するサービスを開始した(以下,これらのサービスを併せて「本件サービス」という。)。

本件サービスの利用者は,子機ロクラクを操作して,親機ロクラクの設置されている地域で放送されている放送番組等の録画の指示をすることにより,当該放送番組等を視聴することができる。

3 原審は,仮に各親機ロクラクが被上告人の管理,支配する場所に設置されていたとしても,被上告人は本件サービスの利用者が複製を容易にするための環境等を提供しているにすぎず,被上告人において,本件番組等の複製をしているとはいえないとして,上告人らの請求を棄却した。

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4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。



放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて,サービスを提供する者(以下「サービス提供者」という。)が,その管理,支配下において,テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器(以下「複製機器」という。)に入力していて,当該複製機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合には,その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても,サービス提供者はその複製の主体であると解するのが相当である。すなわち,複製の主体の判断に当たっては,複製の対象,方法,複製への関与の内容,程度等の諸要素を考慮して,誰が当該著作物の複製をしているといえるかを判断するのが相当であるところ,上記の場合,サービス提供者は,単に複製を容易にするための環境等を整備しているにとどまらず,その管理,支配下において,放送を受信して複製機器に対して放送番組等に係る情報を入力するという,複製機器を用いた放送番組等の複製の実現における枢要な行為をしており,複製時におけるサービス提供者の上記各行為がなければ,当該サービスの利用者が録画の指示をしても,放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであり,サービス提供者を複製の主体というに十分であるからである。

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5 以上によれば,



本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく,親機ロクラクが被上告人の管理,支配する場所に設置されていたとしても本件番組等の複製をしているのは被上告人とはいえないとして上告人らの請求を棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記の機器の管理状況等について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官金築誠志の補足意見がある。



裁判官金築誠志の補足意見は,次のとおりである。





著作権法上の複製等の主体の判断基準に関しては,従来の当審判例との関連等の問題があるので,私の考え方を述べておくこととしたい。



1 上記判断基準に関しては,最高裁昭和63年3月15日第三小法廷判決(民集42巻3号199頁)以来のいわゆる「カラオケ法理」が援用されることが多く,本件の第1審判決を含め,この法理に基づいて,複製等の主体であることを認めた裁判例は少なくないとされている。「カラオケ法理」は,物理的,自然的には行為の主体といえない者について,規範的な観点から行為の主体性を認めるものであって,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二つの要素を中心に総合判断するものとされているところ,同法理については,その法的根拠が明らかでなく,要件が曖昧で適用範囲が不明確であるなどとする批判があるようである。しかし,著作権法21条以下に規定された「複製」,「上演」,「展示」,「頒布」等の行為の主体を判断するに当たっては,もちろん法律の文言の通常の意味からかけ離れた解釈は避けるべきであるが,単に物理的,自然的に観察するだけで足りるものではなく,社会的,経済的側面をも含め総合的に観察すべきものであって,このことは,著作物の利用が社会的,経済的側面を持つ行為であることからすれば,法的判断として当然のことであると思う。

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このように,「カラオケ法理」は,法概念の規範的解釈として,一般的な法解釈の手法の一つにすぎないのであり,これを何か特殊な法理論であるかのようにみなすのは適当ではないと思われる。したがって,考慮されるべき要素も,行為類型によって変わり得るのであり,行為に対する管理,支配と利益の帰属という二要素を固定的なものと考えるべきではない。この二要素は,社会的,経済的な観点から行為の主体を検討する際に,多くの場合,重要な要素であるというにとどまる。にもかかわらず,固定的な要件を持つ独自の法理であるかのように一人歩きしているとすれば,その点にこそ,「カラオケ法理」について反省すべきところがあるのではないかと思う。

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2 原判決は,本件録画の主体を被上告人ではなく利用者であると認定するに際し,番組の選択を含む録画の実行指示を利用者が自由に行っている点を重視したものと解される。



これは,複製行為を,録画機器の操作という,利用者の物理的,自然的行為の側面に焦点を当てて観察したものといえよう。そして,原判決は,親機を利用者が自己管理している場合は私的使用として適法であるところ,被上告人の提供するサービスは,親機を被上告人が管理している場合であっても,親機の機能を滞りなく発揮させるための技術的前提となる環境,条件等を,利用者に代わって整備するものにすぎず,適法な私的使用を違法なものに転化させるものではないとしている。しかし,こうした見方には,いくつかの疑問がある。

法廷意見が指摘するように,放送を受信して複製機器に放送番組等に係る情報を入力する行為がなければ,利用者が録画の指示をしても放送番組等の複製をすることはおよそ不可能なのであるから,放送の受信,入力の過程を誰が管理,支配しているかという点は,録画の主体の認定に関して極めて重要な意義を有するというべきである。したがって,本件録画の過程を物理的,自然的に観察する限りでも,原判決のように,録画の指示が利用者によってなされるという点にのみに重点を置くことは,相当ではないと思われる。

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また,ロクラクⅡの機能からすると,これを利用して提供されるサービスは,わが国のテレビ放送を自宅等において直接受信できない海外居住者にとって利用価値が高いものであることは明らかであるが,そのような者にとって,受信可能地域に親機を設置し自己管理することは,手間や費用の点で必ずしも容易ではない場合が多いと考えられる。そうであるからこそ,この種の業態が成り立つのであって,親機の管理が持つ独自の社会的,経済的意義を軽視するのは相当ではない。本件システムを,単なる私的使用の集積とみることは,実態に沿わないものといわざるを得ない。

さらに,被上告人が提供するサービスは,環境,条件等の整備にとどまり,利用者の支払う料金はこれに対するものにすぎないとみることにも,疑問がある。本件で提供されているのは,テレビ放送の受信,録画に特化したサービスであって,被上告人の事業は放送されたテレビ番組なくしては成立し得ないものであり,利用者もテレビ番組を録画,視聴できるというサービスに対して料金を支払っていると評価するのが自然だからである。その意味で,著作権ないし著作隣接権利用による経済的利益の帰属も肯定できるように思う。もっとも,本件は,親機に対する管理,支配が認められれば,被上告人を本件録画の主体であると認定することができるから,上記利益の帰属に関する評価が,結論を左右するわけではない。

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3 原判決は,本件は前掲判例と事案を異にするとしている。


そのこと自体は当然であるが,同判例は,著作権侵害者の認定に当たっては,単に物理的,自然的に観察するのではなく,社会的,経済的側面をも含めた総合的観察を行うことが相当であるとの考え方を根底に置いているものと解される。原判断は,こうした総合的視点を欠くものであって,著作権法の合理的解釈とはいえないと考える。

(裁判長裁判官金築誠志裁判官宮川光治裁判官櫻井龍子裁判官横田尤孝裁判官白木勇)


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(別紙)著作物目録



1 X1

番組名「バラエティー生活笑百科」

番組名「福祉ネットワーク」

2 X2

番組名「踊る!さんま御殿!!」

3 X4

番組名「関口宏の東京フレンドパークⅡ」

4 A

番組名「MUSIC FAIR21」

5 X8

番組名「いきなり!黄金伝説。」

6 X10

番組名「ペット大集合!ポチたま」

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裁判所Webサイトからコピペ


事件番号 平成21(受)788

事件名 著作権侵害差止等請求控訴,同附帯控訴事件

裁判年月日 平成23年01月20日

法廷名 最高裁判所第一小法廷

裁判種別 判決

結果 破棄差戻し

判例集等巻・号・頁

原審裁判所名 知的財産高等裁判所

原審事件番号 平成20(ネ)10055

原審裁判年月日 平成21年01月27日

判示事項

裁判要旨 放送番組の複製物の取得を可能にするサービスの提供者が,その管理,支配下において,アンテナで受信した放送を複製機器に入力し,当該機器に録画指示がされると放送番組の複製が自動的に行われる場合,当該サービスの提供者はその複製の主体である

参照法条

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Last Update: 2011-03-01 13:06:00 JST

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……………………………………………………判決末尾top
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2023年1月18日水曜日

最高裁判決:送信可能化侵害,公衆送信権侵害「解釈」「基準」:(最三小平成23年1月18日判決(平成21年(受)第653号著作権侵害差止等請求事件))






最高裁判決:送信可能化侵害,公衆送信権侵害「解釈」「基準」:(最三小平成23年1月18日判決(平成21年(受)第653号著作権侵害差止等請求事件))




縮小版




送信可能化権侵害について


「送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。

自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。」(最三小平成23年1月18日判決(平成21年(受)第653号著作権侵害差止等請求事件))

「そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。」(最三小平成23年1月18日判決(平成21年(受)第653号著作権侵害差止等請求事件))

 

【あてはめ】(最三小平成23年1月18日判決(平成21年(受)第653号著作権侵害差止等請求事件))

 

これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。

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公衆送信権侵害について


 

【あてはめ】(最三小平成23年1月18日判決(平成21年(受)第653号著作権侵害差止等請求事件))

本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。

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最縮小版




送信可能化侵害について


「公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。」(最三小平成23年1月18日判決(平成21年(受)第653号著作権侵害差止等請求事件))

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H23019現在のコメント


ずっと追いかけてきた事件の最高裁判決が出ました。知財高裁判決を破棄した事例となります。

   参考URL:

       http://utsuboiwa.blogspot.com/2010/11/it.html

       http://www.mizogami.gr.jp/news/ne_back/jim1901L25.htm

       http://www.mizogami.gr.jp/news/ne_back/jim1901L25-2.htm

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判決原文(引用)




4 原審は,次のとおり判断して,上告人らの請求をいずれも棄却すべきものとした。


(1) 送信可能化は,自動公衆送信装置の使用を前提とするところ(著作権法2条1項9号の5),ここにいう自動公衆送信装置とは,公衆(不特定又は多数の者)によって直接受信され得る無線通信又は有線電気通信の送信を行う機能を有する装置でなければならない。各ベースステーションは,あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信するという1対1の送信を行う機能を有するにすぎず,自動公衆送信装置とはいえないのであるから,ベースステーションに本件放送を入力するなどして利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くことは,本件放送の送信可能化には当たらず,送信可能化権の侵害は成立しない。

(2) 各ベースステーションは,上記のとおり,自動公衆送信装置ではないから,本件番組を利用者の端末機器に送信することは,自動公衆送信には当たらず,公衆送信権の侵害は成立しない。

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5 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。




(1) 送信可能化権侵害について


ア送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。

自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であると- 5 -いえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。

イそして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

ウこれを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。

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(2) 公衆送信権侵害について


本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。

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判決原文(全文)




主 文


原判決を破棄する。

本件を知的財産高等裁判所に差し戻す。



理 由


上告人X1代理人梅田康宏ほかの上告受理申立て理由並びに上告人X2代理人松田政行ほか,上告人X3代理人岡崎洋ほか,上告人X4代理人前田哲男ほか,上告人X5代理人伊藤真ほか及び上告人X6代理人尾崎行正ほかの上告受理申立て理由(ただし,いずれも排除されたものを除く。)について

1 本件は,放送事業者である上告人らが,「まねきTV」という名称で,放送番組を利用者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する機器を用いたサービス(以下「本件サービス」という。)を提供する被上告人に対し,本件サービスは,各上告人が行う放送についての送信可能化権(著作権法99条の2)及び各上告人が制作した放送番組についての公衆送信権(同法23条1項)を侵害するなどと主張して,放送の送信可能化及び放送番組の公衆送信の差止め並びに損害賠償の支払を求める事案である。



2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。


(1) 上告人ら(上告人X4を除く。)は,放送事業者であり,それぞれ,原判決別紙放送目録記載のとおり,同目録記載の各放送(以下,同目録記載の各放送を「本件放送」と総称する。)について送信可能化権を有する。Aは,放送事業者であった者であり,同目録記載のとおり,同目録記載の放送について送信可能化権を

有していた。

上告人ら(上告人X4を除く。)及びAは,それぞれ,別紙放送番組目録記載のとおり,同目録記載の各放送番組(以下「本件番組」と総称する。)を制作した。上告人X4は,放送事業者であり,平成20年10月1日,会社分割により,Aのグループ経営管理事業を除く一切の事業に関する権利義務を承継した。

(2) 本件サービスにおいては,Bが販売するロケーションフリーという名称の商品(以下「ロケーションフリー」という。)が用いられるが,ロケーションフリーは,地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し,受信する放送を利用者からの求めに応じデジタルデータ化し,このデータを自動的に送信する機能を有する機器(以下「ベースステーション」という。)を中核とする。

ロケーションフリーの利用者は,ベースステーションと手元の専用モニター等の端末機器をインターネットを介して1対1で対応させることにより,ベースステーションにおいてデジタルデータ化されて手元の端末機器に送信される放送を,当該端末機器により視聴することができる。その具体的な手順は,① 利用者が,手元の端末機器を操作して特定の放送の送信の指示をする,② その指示がインターネットを介して対応関係を有するベースステーションに伝えられる,③ ベースステーションには,テレビアンテナで受信された地上波アナログ放送が継続的に入力されており,上記送信の指示がされると,これが当該ベースステーションにより自動的にデジタルデータ化される,④ 次いで,このデータがインターネットを介して利用者の手元の端末機器に自動的に送信される,⑤ 利用者が,手元の端末機器を操作して,受信した放送を視聴するというものである。top

(3) 被上告人は,本件サービスを行うに当たり,利用者から入会金3万1500円,月額使用料5040円の支払を受けて,利用者が被上告人から本件サービスを受けるために送付した利用者の所有するベースステーションを,被上告人事業所内に設置し,分配機等を介してテレビアンテナに接続するとともに,ベースステーションのインターネットへの接続を行っている。

本件サービスの利用者(以下,単に「利用者」という。)は,ベースステーションと対応関係を有する手元の端末機器を操作することにより,ベースステーションの設置された地域の放送を視聴することができる。

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3 上告人らは,被上告人が,ベースステーションに本件放送を入力することにより,又は本件放送が入力されるベースステーションのインターネットへの接続を行うことにより,利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くことは,本件放送の送信可能化に当たるとして,上告人らの送信可能化権の侵害を主張する。

また,上告人らは,被上告人が,本件番組を公衆である利用者の端末機器に送信することは本件番組の公衆送信に当たるとして,上告人らの公衆送信権の侵害を主張する。top



4 原審は,次のとおり判断して,上告人らの請求をいずれも棄却すべきものとした。


(1) 送信可能化は,自動公衆送信装置の使用を前提とするところ(著作権法2条1項9号の5),ここにいう自動公衆送信装置とは,公衆(不特定又は多数の者)によって直接受信され得る無線通信又は有線電気通信の送信を行う機能を有する装置でなければならない。各ベースステーションは,あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信するという1対1の送信を行う機能を有するにすぎず,自動公衆送信装置とはいえないのであるから,ベースステーションに本件放送を入力するなどして利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くことは,本件放送の送信可能化には当たらず,送信可能化権の侵害は成立しない。

(2) 各ベースステーションは,上記のとおり,自動公衆送信装置ではないから,本件番組を利用者の端末機器に送信することは,自動公衆送信には当たらず,公衆送信権の侵害は成立しない。

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5 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。




(1) 送信可能化権侵害について


ア送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。

自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。

イそして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。

ウこれを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。

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(2) 公衆送信権侵害について


本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。

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6 以上によれば,ベースステーションがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しないことのみをもって自動公衆送信装置の該当性を否定し,被上告人による送信可能化権の侵害又は公衆送信権の侵害を認めなかった原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,論旨は理由がある。原判決は破棄を免れず,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官田原睦夫裁判官那須弘平裁判官岡部喜代子裁判官

大谷剛彦)

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(別紙)

放送番組目録

1 X1

番組名「バラエティー生活笑百科」

番組名「福祉ネットワーク」

2 X2

番組名「踊る!さんま御殿!!」

3 X3

番組名「関口宏の東京フレンドパークⅡ」

4 A

番組名「MUSIC FAIR21」

5 X5

番組名「いきなり!黄金伝説。」

6 X6

番組名「ハロー!モーニング。」

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……………………………………………………判決末尾top
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2020年9月8日火曜日

最高裁判決:商標類否基準「基準」:(最二小平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件,集民第228号561頁))





目 次


最高裁判決:商標類否基準「基準」:(最二小平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件,集民第228号561頁))




縮小版



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【商標法4条1項11号に係る商標類否】(non結合商標)



「法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),」,最高裁が繰り返し判示するところである(最二小平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件,集民第228号561頁))。

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【商標法4条1項11号に係る商標類否】(結合商標含む)



「法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。」(最二小平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件,集民第228号561頁))



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【あてはめ】(原文段落分け)



(2) これを本件についてみるに,本件商標の構成中には,称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが,本件商標は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。

文字部分含まれているが・・・

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【称呼】


→標準文字,横書き,各文字の大きさ及び書体は同一,ぞの全体が等間隔に1行でまとまりよく



→独立して見る者の注意をひくように構成されていない


また,前記事実関係によれば,引用各商標は平成3年に商標登録されたものであるが,上告人の祖父は遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになったというのであるから,本件指定商品の販売業者等の取引者には本件審決当時,堤人形は仙台市堤町で製造される堤焼の人形としてよく知られており,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分から地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記「つつみ」の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者である被上告人が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,他にこのようにいえるだけの原審認定事実は存しない。

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【観念】



→指定商品の出所である識別標章として強く支配的な印象



さらに,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分については,これに接した全国の本件指定商品の取引者,需要者は,ひな人形ないしそれに関係する物品の製造,販売等を営む者を表す言葉と受け取るとしても,「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから,新たに造られた言葉として理解するのが通常であると考えられる。そうすると,上記部分は,土人形等に密接に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえず,自他商品を識別する機能がないということはできない。



→密接に関連する一般的,普遍的な文字とはいえない



→自他商品を識別する機能がないということはできない


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このほか,本件商標について,その構成中の「つつみ」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分だけを引用各商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許されないというべきである。

【結合商標】



→文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情なし



→構成部分全体を対比するのが正当



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【結論】




(3) そして,前記事実関係によれば,本件商標と引用各商標は,本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見いだし得るにすぎず,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,いずれの商標からも堤人形に関係するものという観念が生じ得るとしても,全体として類似する商標であるということはできない。

【外観】


→本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見出し得るにすぎない





H230120現在のコメント


繰り返し知財高裁で述べられている論理ですので,最高裁判決として,しっかりと挙げておきます。

事実認定についても,大いに参考にすべき重要判決です。




判決原文(引用)【】は,サイト管理人追記




【商標法4条1項11号に係る商標類否】



(1) 法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。

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【あてはめ】



(2) これを本件についてみるに,本件商標の構成中には,称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが,本件商標は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。また,前記事実関係によれば,引用各商標は平成3年に商標登録されたものであるが,上告人の祖父は遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになったというのであるから,本件指定商品の販売業者等の取引者には本件審決当時,堤人形は仙台市堤町で製造される堤焼の人形としてよく知られており,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分から地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記「つつみ」の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者である被上告人が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,他にこのようにいえるだけの原審認定事実は存しない。さらに,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分については,これに接した全国の本件指定商品の取引者,需要者は,ひな人形ないしそれに関係する物品の製造,販売等を営む者を表す言葉と受け取るとしても,「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから,新たに造られた言葉として理解するのが通常であると考えられる。そうすると,上記部分は,土人形等に密接に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえず,自他商品を識別する機能がないということはできない。

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このほか,本件商標について,その構成中の「つつみ」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分だけを引用各商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許されないというべきである。

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【結論】



(3) そして,前記事実関係によれば,本件商標と引用各商標は,本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見いだし得るにすぎず,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,いずれの商標からも堤人形に関係するものという観念が生じ得るとしても,全体として類似する商標であるということはできない。



判決原文(全文)




平成19(行ヒ)223 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟平成20年09月08日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻し 知的財産高等裁判所



  • 1 -


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主文



原判決を破棄する。
本件を知的財産高等裁判所に差し戻す。



理由



上告代理人須田篤の上告受理申立て理由について

1 本件は,被上告人が,上告人を商標権者とする後記商標登録を無効とすることについての審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求める訴訟である。



2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。



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(1) 上告人は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成り,指定商品を商標法施行令(平成15年政令第398号による改正前のもの)別表第1の第28類の区分に属する「土人形および陶器製の人形」(以下「本件指定商品」という。)とする登録第4798358号の登録商標(平成16年2月18日商標登録出願,同年8月27日商標権の設定の登録。以下,この商標を「本件商標」といい,その商標登録を「本件商標登録」という。)の商標権者である。

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(2) 仙台市堤町(現仙台市青葉区堤町)で製造される土人形は,江戸時代の堤焼に始まり,「おひなっこ」,「つつみのおひなっこ」とも呼ばれていたが,昭和初期に入ってからは「堤人形」と呼ばれるようになった。上記土人形(以下,仙台市堤町で製造される堤焼の人形を「堤人形」という。)を製造する人形屋は,かつては13軒を数えるほどの全盛期を迎えて明治に至ったが,次第に廃業が目立つようになり,大正期にはA家及びB家の2軒だけとなった。そして,昭和期には被上告人の父Cだけが堤人形を製造するようになり,その技術は被上告人に承継された。


上告人の祖父Dは,遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになり,その技術は,上告人の父Eを経て上告人に承継された。

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(3) 被上告人は,いずれも指定商品を上記別表第28類の区分に属する「土人形」として,「つゝみ」の太文字を横書きして成る商標(登録第2354191号。以下「引用商標1」という。)及び「堤」の太文字1字から成る商標(登録第2365147号。以下「引用商標2」といい,引用商標1と併せて「引用各商標」という。)の商標権者である。なお,引用各商標に係る商標登録出願については,当初,ありふれた氏である「堤」あるいはこれを認識させる「つゝみ」の文字を普通に用いられる方法で表して成るものにすぎず,商標法(以下「法」という。)3条1項4号に該当するなどとして拒絶査定がされたが,平成3年4月4日,これに対する不服審判において,明治以来継続して商品「土人形」に使用された結果,需要者が被上告人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったから同条2項に該当するとして,引用各商標のそれぞれにつき商標登録を認めるべきものであるとの審決がされ,引用各商標は同年12月までに商標登録をされるに至ったものである。

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(4) 被上告人は,平成18年3月8日,本件商標登録が法4条1項8号,10号,11号,15号,16号,19号及び8条の規定に違反してされたものであるとして,法46条1項に基づき,本件商標登録を無効とすることについて審判を請求した。



上記審判請求につき,特許庁において無効2006-89030号事件として審理された結果,同年10月31日,本件商標は引用各商標のいずれにも類似しないから法4条1項11号に該当せず,被上告人の主張するその余の無効理由も認められないとして,審判請求を不成立とする審決がされた(以下,この審決を「本件審決」という。)。

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3 原審は,次のとおり判断して,本件商標について法4条1項11号該当性を否定した本件審決の判断部分は誤りであるとして,本件審決の取消しを求める被上告人の請求を認容した。



本件審決の当時,堤人形は,仙台市堤町で製造される堤焼の人形として,本件指定商品である「土人形および陶器製の人形」の販売業者等の取引者にはよく知られていた。そして,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分は,これに接する者に「ひな人形」である「おひな」,東北地方の方言などにみられる接尾語である「こ」及び特定の職業やそれを営む者を表す語である「や」から成る語であると認識されるものと認められる。そうすると,本件商標の構成中,「つつみ」の文字部分からは,地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が,「おひなっこや」の文字部分からは,「ひな人形屋」の観念が,それぞれ生じ,全体としては,「堤」という土地,人物の「ひな人形屋」あるいは堤人形の「ひな人形屋」との観念が生じるものと認められる。したがって,本件商標は,「つつみ」と「おひなっこや」とが組み合わされた結合商標として認識されるものであるが,その構成において「つつみ」の文字部分を分離することができないほど一体性があるものと認めることはできないから,冒頭の「つつみ」の文字部分のみが分離して認識され,そこから,地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念を生じるとともに,「ツツミ」のみの称呼をも生じるものと認められる。

他方,引用各商標からは,いずれも地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念を生じるとともに,「ツツミ」の称呼を生じる。

そうすると,本件商標と引用商標1がその外観の一部において類似するにすぎないこと,本件商標と引用商標2がその外観において類似するものとはいえないことを考慮しても,本件商標と引用各商標は全体として類似する商標であると認められるから,本件商標は引用各商標との間で法4条1項11号に該当するものというべきである。

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4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。



(1) 法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。

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(2) これを本件についてみるに,本件商標の構成中には,称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが,本件商標は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。また,前記事実関係によれば,引用各商標は平成3年に商標登録されたものであるが,上告人の祖父は遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになったというのであるから,本件指定商品の販売業者等の取引者には本件審決当時,堤人形は仙台市堤町で製造される堤焼の人形としてよく知られており,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分から地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記「つつみ」の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者である被上告人が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,他にこのようにいえるだけの原審認定事実は存しない。さらに,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分については,これに接した全国の本件指定商品の取引者,需要者は,ひな人形ないしそれに関係する物品の製造,販売等を営む者を表す言葉と受け取るとしても,「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから,新たに造られた言葉として理解するのが通常であると考えられる。そうすると,上記部分は,土人形等に密接に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえず,自他商品を識別する機能がないということはできない。

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このほか,本件商標について,その構成中の「つつみ」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分だけを引用各商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許されないというべきである。

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(3) そして,前記事実関係によれば,本件商標と引用各商標は,本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見いだし得るにすぎず,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,いずれの商標からも堤人形に関係するものという観念が生じ得るとしても,全体として類似する商標であるということはできない。

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5 以上によれば,本件商標と引用各商標が類似するとした原審の判断には,商標の類否に関する法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人が主張するその余の本件商標登録の無効理由につき更に審理を尽くさせるため,本件を知的財産高等裁判所に差し戻すこととする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官古田佑紀裁判官津野修裁判官今井功裁判官中川了滋)

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裁判所Webサイトからコピペ



事件番号 平成19(行ヒ)223

事件名 審決取消請求事件

裁判年月日 平成20年09月08日

法廷名 最高裁判所第二小法廷

裁判種別 判決

結果 破棄差戻し

判例集等巻・号・頁 集民 第228号561頁

原審裁判所名 知的財産高等裁判所

原審事件番号 平成18(行ケ)10532

原審裁判年月日 平成19年04月10日

判示事項 「つつみのおひなっこや」の文字を横書きして成り,土人形等を指定商品とする登録商標と,いずれも土人形を指定商品とする「つゝみ」又は「堤」の文字から成る引用商標が類似しないとされた事例

裁判要旨 「つつみのおひなっこや」の文字を横書きして成り,土人形等を指定商品とする登録商標と,いずれも土人形を指定商品とする「つゝみ」又は「堤」の文字から成る引用商標について,(1)上記登録商標は,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているとはいえないこと,(2)「つつみ」の文字部分が,土人形等の取引者や需要者に対し,引用商標の商標権者がその出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったとはいえないこと,(3)「おひなっこや」の文字部分は,全国の土人形等の取引者,需要者には新たに造られた言葉として理解されるのが通常であり,自他商品を識別する機能がないとはいえないことなど判示の事情の下においては,「つつみ」の文字部分だけを引用商標と比較し,その類否を判断することは許されず,商標の構成部分全体を対比すると,上記登録商標と引用商標は類似しない。

参照法条 商標法4条1項11号

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Last Update: 2011-01-20 16:41:04 JST

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2011年7月27日水曜日

著作権:知財高裁平成23年7月27日判決(平成22年(ネ)第10080号 譲受債権請求承継参加申立控訴事件)

知財高裁平成23年7月27日判決(平成22年(ネ)第10080号 譲受債権請求承継参加申立控訴事件)
http://tyosaku.hanrei.jp/hanrei/cr/9243.html

【コメント】
話題にはなりましたが,契約の解釈が争点となります。
著作権,複製権と書いてあれば,
「著作権」「複製権」には,「翻案権」は含まない旨は説得力ありますね。



第2 事案の概要
以下,略語は,原判決と同様のものを用いる。また,原判決の別紙第一目録,第
二目録及びウルトラマンキャラクター一覧表(別紙一覧表)を,いずれも引用する。

本件は,参加人が,別紙第二目録記載の各著作物(本件著作物)の著作権者であ
る被告に対し,①第1審脱退原告(脱退原告)は,別紙第一目録添付の契約書(本
件契約書)に記載された内容の契約(本件契約)に基づき,被告から,本件著作物
の日本以外の国における独占的利用権(本件独占的利用権)の許諾を受けた,②被
告は,日本以外の国において,第三者に対し,本件著作物や,同著作物の製作後に
被告が製作したいわゆるウルトラマンキャラクターの登場する映画作品及びこれら
を素材にしたキャラクター商品の利用を許諾している,③上記②の被告の行為は,
本件契約に違反するものであり,被告は,脱退原告に対し,本件契約の債務不履行
に基づく損害賠償義務ないし上記②の第三者から得た許諾料につき不当利得返還義
務を負う,④参加人は,脱退原告から,上記の損害賠償請求権及び不当利得返還請
求権を譲り受けた,と主張して,上記損害賠償請求権の一部請求又は上記不当利得
返還請求権の一部請求(選択的請求)として,1億円及びこれに対する平成18年
5月26日(被参加事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年
6分の割合による遅延損害金(不当利得返還請求の場合は,民法704条前段所定
の年5分の割合による法定利息。)の支払を求めた事案である。

原判決は,参加人主張の被告の債務不履行のうち,被告が,バンダイ(当審にお
ける被告補助参加人。以下「補助参加人」という。)に対し,平成8年9月1日か
ら平成9年12月31日まで,別紙一覧表記載(1) の各キャラクター(旧ウルトラ
マンキャラクター)に属する5個のキャラクターについて韓国等の外国における利
用権をライセンスし,当該ライセンス期間を現在に至るまで更新している行為が本
件契約の債務不履行に当たり,脱退原告にライセンス料相当額の損害が発生してお
り,かつ,当該ライセンス料相当額について脱退原告に損失が生じ,被告が利得し
たと認定した上,本件契約の債務不履行に基づく損害賠償請求権については一部商
事消滅時効が成立するため,不当利得返還請求権に基づく認容額の方がより高額で
あるとして,参加人の請求のうち,被告に対する不当利得返還請求に基づき163
6万3636円及びこれに対する平成18年5月26日から支払済みまで年5分の
割合による法定利息の支払を求める限度で認容し,その余の請求を棄却した。

当裁判所の判断

「「参加人は,本件契約の第3条3.2にいう制作権(Production Right)に,本件
著作物の二次的著作物を制作する権利ないし翻案権が含まれることを前提として,
被告が,本件契約に基づき,本件著作物及びそこに登場するウルトラマンキャラク
ター(旧ウルトラマンキャラクター)に類似するキャラクター(新ウルトラマンキ
ャラクター)の利用を第三者に許諾してはならない義務を負う旨主張する。しかし,
参加人の主張は失当である。制作権(Production Right)の通常の語義からすれば,
本件著作物の二次的著作物を制作する権利ないし翻案権が含まれると理解すること
は困難であり,本件契約において,特に,『制作権(Production Right)』の語に
そのような権利が含まれると解すべき事情があるとも認められない。また,本件契
約の第3条3.4に著作権(Copyright )と記載されているところ,『著作権
(Copyright )』の語に著作権の支分権である翻案権が含まれるとするならば,同
3.3に『複製権』と記載されていることと整合しないから,上記『著作権
(Copyright )』に支分権である翻案権が含まれるとは解されない。したがって,
被告が,本件契約に基づき,新ウルトラマンキャラクターの利用を第三者に許諾し
てはならない義務を負うとはいえない。」」

2011年4月19日火曜日

著作権:【著作物性】(データベース)「事実認定」:(知財高裁平成23年4月19日判決(平成23年(ネ)第10005号損害賠償等請求控訴事件))

著作権:【著作物性】(データベース)「事実認定」:(知財高裁平成23年4月19日判決(平成23年(ネ)第10005号損害賠償等請求控訴事件))

ここからリンク↓
(知財高裁平成23年4月19日判決(平成23年(ネ)第10005号損害賠償等請求控訴事件))

第2 事案の概要
1 被控訴人(被告)は自ら開設するウェブサイト上に「住宅ローン商品 金利
情報」を掲載しているが,控訴人(原告)は,そのうちの,全国の金融機関の金利
情報を整理した被告図表(原判決別紙Aにおいて示された図表部分)が,控訴人の
著作物(図形,編集著作物又はデータベースの著作物)である本件図表(原判決別
紙Bにおいて示された図表部分)を複製したものであり,被控訴人の上記掲載行為
は控訴人の有する本件図表の著作権(複製権,公衆送信権)を侵害する旨主張し,
被控訴人に対し,著作権法112条1項に基づく差止請求として上記「住宅ローン
商品 金利情報」が掲載されたウェブページの閉鎖と,著作権侵害の不法行為によ
る損害賠償の一部請求として706万4000円の支払を求めた。
2 原判決は,本件図表の著作物性(図形,編集著作物又はデータベースの著作
物)を否定し,控訴人の請求をいずれも棄却した。
3 控訴人は,当審において,本件図表が著作物に当たらないとしても,被控訴
人が本件図表の複製と同視し得る被告図表を掲載したウェブサイトの運営を行うこ
とは,本件図表を掲載したウェブサイトの運営による控訴人の営業活動に対する侵
害行為であり,かつ,公益法人による民業圧迫であるから,法的保護に値する利益
の侵害による不法行為に当たると主張し,この不法行為に基づく請求を追加した。

第4 当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の本訴請求は当審において追加された請求を含めて棄却すべ
きものと判断する。原審から請求されている著作権侵害に係る請求が理由のないこ
とは,原判決10頁10行目以下の「第3 当裁判所の判断」の1に記載のとおり
であり,当審での追加請求に理由のないことは,次に示すとおりである。
控訴人は,追加請求の原因として,被告図表の特徴が本件図表のそれと同一であ
り,本件図表の複製と同視し得るので,被告図表を掲載したウェブサイトの運営を
行うことは,本件図表を掲載したウェブサイトの運営による控訴人の営業活動に対
する侵害行為であり,かつ,公益法人による民業圧迫であるから,不法行為に当た
る旨主張する。
しかしながら,被告図表は,控訴人も認めるように,本件図表それ自体を用いて
作成されたもの(いわゆるデッドコピー)ではない。また,本件図表の特徴とされ
る,全国の金融機関の住宅ローン商品について,金融機関名,商品名,変動金利,
固定金利の各固定期間の順に配列することや,これらの情報をデータベース化し,
抽出し,並び替えるといった機能自体は,公表されたデータで,しかも全国の金融
機関といっても数が限られたものを整理するにとどまるものであって,ありふれた
ものであるから,これらの配列や機能に被告図表と共通する部分があるからといっ
て,そのこと自体において,被告図表が本件図表の複製と同視し得るものとは認め
られず,被告図表を掲載したウェブサイトの運営が控訴人に対する不法行為に当た
るとはいえない。また,民業圧迫の点についても,証拠(乙7)によれば,被控訴
人の法人の目的として,「住宅金融等に関する…情報提供…」と記載されているこ
とが認められ,被告図表の作成等により住宅ローンの金利情報を提供することは上
記目的に含まれると解されるところ,そのような目的・行為は公益に合致するもの
であるから,被控訴人が被告図表を掲載したウェブサイトの運営を行うことと控訴
人の業務との間に競合する部分があるとしても,被控訴人の上記行為が違法である
とはいえない。
他に控訴人主張の事実関係を最大限考慮に入れたとしても,本件において法的保
護に値する利益の侵害に当たる事実があるものとは認められず,そのことの不法行
為に基づく控訴人の請求も理由がない。

知的財産高等裁判所第2部  裁判長裁判官塩月秀平


平成23(ネ)10005 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟
平成23年04月19日 知的財産高等裁判所


(知財高裁平成23年4月19日判決(平成23年(ネ)第10005号損害賠償等請求控訴事件))
http://chizaibengoshi.appspot.com/20110420155715.html
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2011年4月18日月曜日

特許:【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月18日判決(平成22年(行ケ)第10185号審決取消請求事件(特許))

特許:【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月18日判決(平成22年(行ケ)第10185号審決取消請求事件(特許))

(知財高裁平成23年4月18日判決(平成22年(行ケ)第10185号審決取消請求事件(特許))


平成22(行ケ)10185 審決取消 特許権 行政訴訟
平成23年04月18日 知的財産高等裁判所 

第2 事案の概要
1 本件は,原告が名称を「オークションによる商品販売方法及び当該方法を実
現するコンピュータ」とする発明につき特許出願をしたところ,拒絶査定を受
けたので,これに対する不服の審判請求をしたが,特許庁から請求不成立の審
決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。
2 争点は,原告が平成22年2月15日付けでなした手続補正後の請求項1に
係る発明(以下「本願発明」という。)が,下記引用例1ないし3に記載され
た発明及び周知技術から容易想到であったか,である。

イ 以上の記載によれば,従来,中古車販売業者が参加する中古車オークシ
ョンとしては,参加者が特定の会場に赴いて商品を直接確認した上で入札
を行う古典的な方法やインターネット等の通信ネットワークを介して遠
隔地から商品の情報の確認や入札を行うネットオークションによる方法
があり,その一方で,中古車販売業者のような「業者」ではなく「一般消
費者」が商品の出品や入札を直接行う一般消費者向けネットオークション
による商品販売方法があったところ,一般消費者向けネットオークション
では業者向けオークションが提供する品質保証機能が十分に提供されず
商品の本来の価格を大きく下回る入札価格でしか取引が成立しない可能
性があり,他方,業者向けオークションでは,流札となった場合に別のオ
ークションに出品する手間と時間がかかり,さらには,オークションを運
営する主催者にとって自らが主催するオークションのみで成約率を向上
させることが困難であるという課題があった。そこで本願発明は,これら
の課題を解決すべく,複数のオークションにより商品を効果的かつ効率的
に販売する方法及びそれを実現するコンピュータを提供しようとするも
のであり,そのために,通信ネットワークを介して端末と接続されたコン
ピュータが,出品者の端末から商品に関する情報や出品者の連絡先を含む
出品データを受け付けた後,これを「一般向け指定オークションの入札者」
に閲覧可能とするとともに出品取消連絡を受け付けるようにし,出品取消
連絡を受け付けなかった場合には,業者向けオークションに係る処理を行
い,業者向けオークションにおいて取引が成立しなかった場合には一般向
けオークションに係る処理を行うように構成したものである。



知的財産高等裁判所 第1部

裁判長裁判官 中 野 哲 弘

(知財高裁平成23年4月18日判決(平成22年(行ケ)第10185号審決取消請求事件(特許))
http://chizaibengoshi.appspot.com/20110421100107.html

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特許:【容易想到性】(進歩性)「事実認定」:(知財高裁平成23年4月18日判決(平成22年(行ケ)第10262号審決取消請求事件(特許)))

* 特許:【容易想到性】(進歩性)「事実認定」:(知財高裁平成23年4月18日判決(平成22年(行ケ)第10262号審決取消請求事件(特許)))

(知財高裁平成23年4月18日判決(平成22年(行ケ)第10262号審決取消請求事件(特許)))

平成22(行ケ)10262 審決取消 特許権 行政訴訟
平成23年04月18日 知的財産高等裁判所 

第2 事案の概要
1 本件は,被告が権利者であり発明の名称を「袋による包装方法」とする特許
第3908897号(ただし,平成20年3月27日訂正審決後のもの。請求
項の数7。本件特許)につき,原告がその請求項1ないし6につき無効審判請
求をしたところ,特許庁が請求不成立の審決をしたことから,これに不服の原
告がその取消しを求めた事案である。
2 争点は,上記訂正後の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1」等
といい,全体を「本件各発明」という。)が下記引用例との関係で進歩性を有
するか(特許法29条2項),である。

(3) 本件発明1と甲3の1発明とを対比
前記(1) 及び(2) によれば,本件発明1と甲3の1発明とを対比すると,
両者は「包装品を充填した袋の開口端部を搬送ベルト上に横置きにして行う
包装方法であって,袋の開口を開かせる工程と,袋の開口端部を挟んでシー
ルする工程を含む,袋による包装方法。」という点で一致し,「本件発明1
は,袋の開口を開かせる工程の後であって,かつ,袋の開口端部を挟んでシ
ールする工程の前に,開口した袋内に2本の拡開口バーを挿入しそれを横に
広げて袋の開口を横に広げる工程を含むのに対して,甲3の1発明は,その
ような工程を含まない点」(相違点1)及び「本件発明1は,袋の開口を開
かせる工程の前に,袋の開口端部に上方からエアを吹き付けて袋の開口部を
搬送ベルトに対して偏平状態にさせる工程を含むのに対して,甲3の1発明
は,そのような工程を含まない点」(相違点2)で相違するとした審決の認
定に誤りはない。
原告は,上記相違点2に関する審決の判断に関し,甲3の1発明と甲2発
明との組合せ等について言及するので,以下これについて検討する。

(知財高裁平成23年4月18日判決(平成22年(行ケ)第10262号審決取消請求事件(特許)))
http://chizaibengoshi.appspot.com/20110420104909.html

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2011年4月14日木曜日

特許:【実施可能要件】「判断基準」:(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10247号 審決取消請求事件))

特許:【実施可能要件】「判断基準」:(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10247号 審決取消請求事件))(縮小版あり)

(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10247号 審決取消請求事件))


平成22(行ケ)10247 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成23年04月14日 知的財産高等裁判所 

第2 事案の概要
本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,特許請求の範囲の記載を下記
2とする本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が,同請求は
成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のと
おり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。

2 取消事由(本願発明1の実施可能要件違反の認定判断の誤り)について
 実施可能要件の意義
法36条4項は,「発明の詳細な説明は,…その発明の属する技術の分野におけ
る通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記
載しなければならない」と規定している(以下「実施可能要件」ということがあ
る。)。
特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につ
き独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,当該発明の技術的内容を
一般に開示する内容を記載しなければならない。法36条4項が上記のとおり規定
する趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が容易にその実施をすることが
できる程度に発明の構成等が記載されていない場合には,発明が公開されていない
ことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くこ
とになるからであると解される。
そして,本件のような物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等
をすることをいうから(特許法2条3項1号),物の発明については,その物を製
造する方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても明
細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき当業者がその物を製造するこ
とができるのであれば,実施可能要件を満たすということができる。

【縮小版】
「実施可能要件の意義」

「法36条4項は,「発明の詳細な説明は,…その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載しなければならない」と規定している(以下「実施可能要件」ということがある。)。
特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につき独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,当該発明の技術的内容を一般に開示する内容を記載しなければならない。法36条4項が上記のとおり規定する趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が容易にその実施をすることができる程度に発明の構成等が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからであると解される。 そして,本件のような物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(特許法2条3項1号),物の発明については,その物を製造する方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき当業者がその物を製造することができるのであれば,実施可能要件を満たすということができる。」(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10247号 審決取消請求事件))

(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10247号 審決取消請求事件))
http://chizaibengoshi.appspot.com/20110419132527.html

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特許:【容易想到性」「事実認定」:(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10239号審決取消請求事件))

特許:【容易想到性」「事実認定」:(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10239号審決取消請求事件))

(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10239号審決取消請求事件))


平成22(行ケ)10239 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成23年04月14日 知的財産高等裁判所

第2 事案の概要
本件は,原告らが,下記1のとおりの手続において,本件出願に対する拒絶査定
不服審判の請求について,特許庁が,特許請求の範囲を下記2からへと補正す
る本件補正を却下した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件
審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張し
て,その取消しを求める事案である。



(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10239号審決取消請求事件))
http://chizaibengoshi.appspot.com/20110419114237.html

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特許:【相違点認定,容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10016号審決取消請求事件))

特許:【相違点認定,容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10016号審決取消請求事件))


(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10016号審決取消請求事件))

平成22(行ケ)10016 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成23年04月14日 知的財産高等裁判所


第2 事案の概要
本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,被告の下記2の本件発明に係
る特許に対する原告の特許無効審判の請求について,特許庁が同請求は成り立たな
いとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,
下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。

しかしながら,引用発明1の刃の稜線部に形成された凹凸は,あくまでもホイー
ルとガラス面とのスリップを防止する目的のために設けられたものである以上,微
細な山と谷とからなる凹凸にすぎないことについては,原告も争うものではない。
したがって,引用発明1の刃の稜線部に形成された凹凸によっては,ガラス表面
にスリップを防止することができる程度の打点が加えられることはあっても,ガラ
ス板に板圧を貫通するほどの極めて長い垂直クラックを発生させる程度の打点衝撃
を与えるものではないことは,引用例1の記載からも明らかである。原告の主張は,
引用発明1の突起の形状や大きさ,作用効果を無視したもので,相当ではない。
また,引用例1に示された図2は,引用発明1の刃先に形成された条痕によって
生じる,ホイールのスリップを防止するという効果は,ホイールにあたかも鋸の刃
先を形成した場合と同等の効果を有することを模式的に説明するために作成された
図にすぎず,引用発明1のホイールの刃先に,同図のような刃先が実際に形成され
ているわけでもない。
したがって,当業者は,図2をもって,「打点衝撃を与える所定形状の突起」に
係る示唆を与えられるものということはできない。原告の主張は,採用できない。
ウ 以上からすると,相違点1―1は,実質的な相違点であるというべきである。


(知財高裁平成23年4月14日判決(平成22年(行ケ)第10016号審決取消請求事件))
http://chizaibengoshi.appspot.com/20110419105131.html
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2011年4月7日木曜日

特許:【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10217号審決取消請求事件))

特許:【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10217号審決取消請求事件))

リンクはここから↓
(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10217号審決取消請求事件))

http://chizaibengoshi.appspot.com/20110329161827.html

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特許:【実施可能要件】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10249号,第10250号審決取消請求事件))

特許:【実施可能要件】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10249号,第10250号審決取消請求事件))

リンク(html)はここから↓
(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10249号,第10250号審決取消請求事件))


平成22(行ケ)10249等 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成23年04月07日 知的財産高等裁判所 

第2 事案の概要

本件は,被告からの無効審判請求に基づき請求項1ないし4に係る原告らの特許
を無効とする審決の取消訴訟である。争点は,訂正後の請求項1ないし4の発明に
つき,明細書の発明の詳細な説明に当業者がその実施をすることができる程度に記
載がされているか否か(実施可能要件の有無)である。なお,以下に「原告」とい
うときは,原告両名を総称するものとする。

「これらの温度,時間についての実験条件と,通常のセボフルラン含有麻
酔薬の製造,保存等の環境下での条件との関係については,訂正明細書には何ら説
明がない。また,原告は,訂正明細書の実験例において採用される条件が『最悪の
場合のシナリオ』と主張するにとどまり,両者の具体的な関係は明らかにしていな
い。」と説示する。しかし,訂正明細書の実施例3,4で採用されている実験条件が
通常想定される使用条件を超える過酷なもので,短時間で実験を終える加速試験の
条件として設定されたものであるとすれば,上記実験条件下でも安定している薬剤
は,上記実験条件未満の通常の使用条件の下でも安定しているものと考えるのが当
業者の当然の理解であって,さらに詳細に製造条件等を開示するか否かは,明細書
の作成者において発明の詳細な説明をどこまで具体的かつ詳細に記載し,当該発明
の実施形態を詳細に開示するかによるものにすぎず,かかる詳細な製造条件等の開
示が特許法36条4項1号の規定の適用上必須だとされるものではない。そうする
と,審決の上記説示は誤りである。

(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10249号,第10250号審決取消請求事件))
http://chizaibengoshi.appspot.com/20110411135336.html

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2011年3月28日月曜日

商標:【商標の使用…否定】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))






商標:【商標の使用…否定】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))





知的財産高等裁判所第3部「飯村敏明コート」


平成22(ネ)10084 販売差止等請求控訴事件 商標権 民事訴訟
平成23年03月28日 知的財産高等裁判所



(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))

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【商標の使用…否定】「事実認定」


(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))

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判示




第2 事案の概要

1 原審の経緯等

以下,略語については,当裁判所も原判決と同一のものを用いる。

本件は,別紙「原告登録商標目録」記載の本件商標権を有する原告が,別紙「被告標章目録」記載1の被告標章1を包装に付した別紙「商品目録」記載の被告商品(クッション)を販売し,又は販売のために展示し,別紙「被告標章目録」記載2の被告標章2を被告商品に関する広告(被告カタログ,被告ウエブサイト)に使用している被告に対し,被告使用の上記被告各標章は,別紙「原告登録商標目録」記載の本件登録商標及び原告の商品等表示として周知又は著名な「ドーナツ枕」の表示とそれぞれ類似する標章(表示)であるから,被告の上記各行為は,原告の本件商標権の侵害行為に当たるとともに,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号の不正競争行為に当たる旨主張して,商標法36条又は不競法3条に基づいて,被告各標章を包装に付した被告商品の販売等の差止め等を求めるとともに,商標法36条,民法709条又は不競法4条に基づいて,損害金2310万円及びその遅延損害金の支払を求めた事案である。

原判決は,①被告商品の包装箱に付した被告標章1の使用,被告カタログ及び被告ウエブサイトにおける被告標章2の各使用は,いずれも,被告商品が中央部分を取り外すと,中央部分に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識させるものであって,商品の出所を想起させるものではないと認められ,商標としての使用(商標的使用)には当たらないから,「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)に該当することを前提とする商標法36条に基づく差止請求及び民法709条に基づく不法行為損害賠償請求は理由がない,②被告商品の包装箱,被告ウエブサイト及び被告カタログに表示された被告各標章は,同様の理由により,被告の商品であることを示す商品等表示(不競法2条1項1号,2号)には当たらないから,不競法3条に基づく差止請求及び同法4条に基づく損害賠償請求も理由がない旨判断して,原告の請求をいずれも棄却した。

これに対し,原告は,原判決を不服として本件控訴を提起した。



第3 当裁判所の判断


当裁判所も,被告各標章は,被告商品の出所識別表示として使用されているものではないから,その使用が「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)には該当せず,被告の商品であることを示す「商品等表示」(不競法2条1項1号,2号)にも当たらないとした原判決の判断は,正当であると判断する。

その理由は,以下のとおり当審における原告の主張に対する判断を付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」(原判決30頁12行~46頁21行)に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決30頁13行目を「1 商標的使用か否か―――事実認定」に改める。

原判決30頁23行目から31頁4行目「そこで,」までを削除する。

原判決31頁18行目から20行目に掛けての「上段の文字部分と下段の文字部分とが一体的に認識され,被告標章1全体から自然に『ドーナツクッション』の称呼が生じるものと認められる」を「上段の文字部分及び下段の文字部分は,一体的なまとまりのある『ドーナツクッション』と認識される。」と改める。

原判決31頁25行目の「被告標章2の各文字」から32頁1行目の「認められる。」までを「被告標章2の各文字は,一体的なまとまりのある『ドーナツクッション』と認識される。」と改める。

原判決32頁4行目から5行目に掛けての「両者が外観上不可分であるとまでは認められないので,」を「判断の便宜上」と改める。

原判決33頁5行目から6行目に掛けての「『ドーナツ椅子』,『ドーナツウォッチ』などの『ドーナツ』の語を商品名に冠した商品が販売されていた」を「『ドーナツ椅子』,『ドーナツチェアー』『ドーナツウォッチ』などの『ドーナツ』の語を先頭に付した商品が,第三者によって販売されていた」に改める。

原判決33頁8行目の「『ドーナツチェア』」を「『ドーナツチェアー』」に改める。

原判決34頁12行目冒頭から23行目末尾までを削除する。

原判決35頁1行目冒頭から35頁17行目末尾までを,以下のとおり改める。

「上記の点と前記アの認定を総合すれば,『ドーナツクッション』の語から,一般的には,中央部分に穴のあいた円形,輪形のクッション,あるいは,このような円形,輪形に似たクッションの観念が生じると認められる。

(イ) これに対し, 原告は,ドーナツの語を冠した複合語から,一般的に『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状の物』等が想起されることはない旨主張する。しかし,原告の主張は,失当である。

すなわち,前記のとおり,『ドーナツ』には,穴のあいた円形,輪形の形から,そのような形状と結びついた物との観念を生じると解するのが自然である。そして,『ドーナツ盤』,『ドーナツ椅子』等の『ドーナツ』を冠した複合語の用例があることをも勘案すれば,『ドーナツ』を冠した複合語からは,『ドーナツ』とそれに続く語との間の『型』又は『形』の語が省略されていたとしても,『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状の物』の観念が想起されるものと認められる。なお,原告は,中央部分に穴があるのはLPレコードもEPレコードも同じであるとも主張する。しかし,LPレコードの中心部の穴はEPレコードの中心部の穴に比べて極めて小さく,美観上は,その小さな穴を捨象しても差し支えない程度のものであるのに対して,EPレコードは,中心部に大きな穴があるとの印象を強く与える。そのような点を考慮するならば,EPレコードのみが『ドーナツ盤』と呼ばれることも,上記の結論に反するものではなく,ごく自然な用例といえる。

また,原告は,『ドーナツ椅子』,『ドーナツウォッチ』,『ドーナツスピン』などの用例は,特殊なものであり,このような用例があったとしても,『ドーナツ』から『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』との観念が生じると解することはできないと主張する。しかし,原告の上記主張も採用の限りでない。すなわち,ウエブサイト上のインターネット通販『Yahoo!ショッピング』の『ウッディストア・アクア』においては,『ドーナツ椅子』及び『ドーナツイス』が,中心部分に穴のある円形椅子に関して,中央部分に穴のない『丸形椅子』とは区別されて,表示されている(乙15)。また,株式会社ニーズのホームページにおいても,中央部分に穴のある,医療機関用の丸形椅子が『ドーナツチェアー』と表記されている(乙16)。さらに,『ドーナツスピン』についても,フィギアスケートのスピン技の名称として広く知られている(乙40,41)。その他,『ドーナツウォッチ』(乙33),『ドーナツ星雲M57』(乙37,38),『ドーナツターン』(乙42。自動車の運転方法)のような用例は,いずれも,中空部分を有する形状の物を指す語として使用されている。これらの『ドーナツ』を冠した複合語の用例は,『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』との観念を有する点において共通する。したがって,原告の上記主張は,理由がない。」

原判決35頁18行目冒頭から37頁16行目の末尾までを,以下のとおり改める。

「ウ 『ドーナツクッション』の語を含んだ宣伝広告,販売等の状況

(ア) 株式会社岸タンス店作成の平成21年9月29日付け証明書(乙43),有限会社シーワン作成の同日付け証明書(乙44),株式会社ユニークポイント作成の同年10月7日付け証明書(乙45),N作成の同日付け証明書(乙46),株式会社インフィストデザイン作成の同日付け証明書(乙47),株式会社幕傳作成の同月9日付け証明書(乙48)及びダブリュー・エンド・ジー・パブリックリレーションズ株式会社作成の同日付け証明書(乙49)中には,上記各事業者が,それぞれ取り扱っているクッションに『ドーナツクッション』という表示を継続的に使用している旨,クッションの取引業界においても,『ドーナツクッション』という表示のうち『ドーナツ』の部分を西洋菓子のドーナツの形状のように中央に切欠き部や窪みを設けた形状を意味するものとして使用している旨の記載部分がある。また,スキャン・グローバル・ロジスティックス株式会社作成の平成21年12月15日付け報告書(乙214)中にも,同社は,『ドーナツクッション』という表示のうち『ドーナツ』の部分を西洋菓子のドーナツの形状のように中央に切欠き部や窪みを設けた形状を意味するものと認識している旨の記載部分がある。

(イ) 乙50ないし90,92ないし111によれば,『ドーナツクッション』の語を付した多数のクッション商品が,中央部分に穴のあいた円形,輪形及び矩形(乙64)の形状のクッションの写真などとともに,宣伝広告され,販売される例が,数多く存在する。これらの商品は特定の製造者,販売者による商品に限られるものではないから,一般需要者において,『ドーナツクッション』の語について,特定の出所を表す記載であると認識することはないと解するのが自然である。

このうち,レハティームジャパン株式会社作成の『reha team 2005福祉用具カタログ』には,中央部に切欠きを設けた形状ではなく,窪みのある形状の『床ずれ予防』商品が,その写真とともに,『ナーシングラッグドーナツパッド』と表記されて,販売に付されている(乙20)。


(ウ) ウエブサイトにおける商品紹介では,例えば,中央部に切欠きを設けた矩形のクッションの写真とともに,姿勢矯正用のクッションの宣伝広告の説明がされているが,その説明文中には,『ドーナツクッションにもなっているので,産後・・お尻の痛いあなたにも』との説明がある(乙64)。同説明中の『ドーナツクッション』の部分は,尻部に負担を与えない中央部に切欠きないし窪みを設けた形状の商品であることを端的に示していると理解される。また,ウエブサイトにおける通信販売の商品紹介では,『セシールおすすめのドーナツクッションです。』との記載があるが,同記載も,特定の『ドーナツクッション』の語を,特有の形状を有することを示すために使用していると理解される(乙85)。さらに,ウエブサイトにおける需要者の意見として,『2日くらいでドーナツクッション無しでも座れる感じでした。』,『退院後もドーナツクッションが手放せなかったそうです。』,『ドーナツクッションなしでも楽勝でした』等の記載があり,同記載例も,前後の文脈から,『ドーナツクッション』の語を,尻部に負担を与えない中央部に切欠きないし窪みを設けた特有の形状を示す意味で使用していると理解される(乙82,83)。

(エ) また,前記のとおり,一般的に,『商品の形状を指す語』と『商品の用途を指す語』とを前後に組み合わせることによって,商品の性質等をわかりやすく表記する工夫は,例えば,『風船の形状をした椅子』を『バルーンチェア』と表記したり,『三日月の形状をした枕』を『クレセントボディピロー』と表記したりするようにしばしば行われることであり,特に,商品の宣伝広告,販売において,通常みられる(乙51)。

(オ) 上記認定した諸事実を総合すれば,『ドーナツクッション』の語は,これに接した需要者等において,中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似たドーナツ様の形状をしたクッションを指すものと認識し,特定の出所を表示するものとして認識することはないと解するのが相当である。この場合に,需要者等において,『ドーナツクッション』から,円形,輪形又はこれに似た形状のみを認識するのか,中央部に切欠きないし窪みを有する形状を認識するかについては,個別具体的な宣伝広告の態様や商品そのものの形態等を総合して,個別具体的に判断される筋合いであるといえる。」

原判決37頁18行目から19行目の「『ドーナツクッション』の称呼が生じる被告標章1全体から」を「被告標章1から」に改める。

原判決37頁23行目の冒頭から24行目の「生じることからすると」までを,「前記(1)イと同様の理由により,」に改める。

原判決38頁18行目の後に,行を改め,以下のとおり加える。

「ウ 原告は,各テンピュール商標は,被告のハウスマークとしての商標にすぎないから,被告各標章についてその出所表示機能を否定する根拠とはならないと主張する。しかし,原告の上記主張は採用の限りでない。すなわち,被告商品の包装箱に接した一般消費者は,被告標章1について,被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び包装箱の説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すことによって,その中央部分に穴のあいた輪形に似た形状となるクッションであるとの特徴を説明する目的で用いられたものであると認識するものと解される。また,被告ウエブサイト及び被告カタログにおける被告標章2についても,一般消費者は,同様の目的で用いられたものであると認識すると解される。よって,原告の上記主張は採用の限りでない。

また,原告は,テンピュール商標 1 及び3は,テンピュール商標2のように著名な商標であるとまではいえない以上,テンピュール商標 1 及び3の表示をもって,被告各標章の出所表示機能を否定する根拠とすることはできないとも主張する。しかし,原告の上記主張も,採用の限りでない。すなわち,たとえテンピュール商標1 及び3がテンピュール商標2のように著名な商標であるとまではいえないとしても,その図形と文字の組合せには特徴があり,その使用態様からみて需要者の注意を惹くものであることなどからすれば,需要者は,テンピュール商標 1 及び3が,当該商品の出所表示機能を有する部分であると認識すると認められる。したがって,原告の上記主張は採用の限りでない。

また,原告は,ウエブサイトのホームページ左上欄の表示は,当該サイトの通信販売業者が誰であるのかを示すものであるから,被告ウエブサイトのホームページ左上欄にあるテンピュール商標3が出所識別表示に当たるとはいえないと主張する。

しかし,原告の上記主張も採用の限りでない。すなわち,被告ウエブサイトのホームページ(甲6)には,その下段に『テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です。』との説明文があること,当該ホームページの最上部には『テンピュール・ジャパン|製品』とのホームページを特定する記載があり,さらに最下部にも『http://www.tempur-japan.co.jp/goods/goods/other/cushion/doughnut.html 』とのホームページを特定する記載があることに照らせば,需要者において当該サイトの通信販売業者が『テンピュール・ジャパン』であって,テンピュール商標3が商品の出所識別表示であると理解するものといえる。したがって,原告の上記主張は採用の限りでない。

さらに,原告は,被告はテンピュール商標2の使用を許諾された者にすぎず,商標権者ではないから(乙298),自らを商標権者であるとするかのような不正確なテンピュール商標2に係る説明文(「テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です」)をもって同商標に出所表示機能を認めることはできないと主張する。しかし,原告の上記主張も,採用の限りでない。すなわち,被告は,テンピュール商標2の専用使用権の設定登録を適法に受けた者であって(乙298),『テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です』との説明文は,必ずしも被告の専用使用権と矛盾するとはいえないから,原告の上記主張は採用の限りでない。」

原判決38頁21行目の「低反発素材を用いた本体とカバー等からなり,」を「テンピュール社製造に係る低反発素材を用いた,椅子の座部などに載置して使用するもので,腰を下ろしたときに,その弾力性によって衝撃や振動等を和らげるクッションであり,」に改める。

原判決39頁4行目の「(ア)a」を「(ア)」に,22行目の「b」を「(イ)」に,40頁20頁目の「c」を「(ウ)」に,41頁1行目の「d」を「(エ)」に,それぞれ改める。

原判決41頁8行目冒頭から43頁14行目末尾までを削除する。

原判決43頁21行目の②を③に,22行目の③を④に改める。

原判決43頁24行目冒頭から44頁14行目末尾までを削除する。

原判決44頁26行目冒頭から45頁18行目末尾までを削除する。

原判決45頁18行目の次に,行を改め,次のとおりの記載を加える。

「2 商標的使用か否か―――判断

上記の認定事実に基づいて,被告各標章の各表記態様が商標的使用であるか否かについて,判断する。

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(1) 被告商品の包装箱における被告標章1の表記について

ア 被告商品の包装箱の表記態様について

前記のとおり,①被告商品の包装箱には,被告標章1が合計5個(表面,裏面,右側面,上面及び下面(底面)に各1個)表示されているところ,表面,裏面及び右側面の被告標章1は,被告商品の本体について,取り外された楕円筒形の中央部分とその取り外し後に楕円形の穴があいた本体のイメージ図と一緒に表示されていること,②被告商品の包装箱の表面には,テンピュール商標1及び『中央にスーパーソフトな素材を用いてデリケートな部分を優しくサポート お産の後の妊婦さんや痔でお悩みの方などにお薦めのシートクッション。中央部分にはスーパーソフトなテンピュールRを用いて安らげる座りごこちを提供します。』との説明文が,裏面には,テンピュール商標1及び『・・・スーパーソフト部分は着脱が可能となっています。』との説明文が表示されていること,③右側面,上面及び下面(底面)の被告標章1は,テンピュール商標1と一緒に表示されていること,④被告標章1から中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッションあるいはこのような円形,輪形に似た形状のクッションの観念が生じること,⑤各テンピュール商標(テンピュール商標1ないし3)は,被告が販売する商品とともに全国放送のテレビ番組,新聞,雑誌等でたびたび紹介され,『テンピュール』の標準文字からなるテンピュール商標2は,平成20年7月当時までに,被告が販売する商品の商標として著名となっていたことを総合すると,被告商品の包装箱に接した取引者,需要者は,被告商品の包装箱に付されたテンピュール商標1,及び説明文中の『テンピュールR』の表示をもって,被告の出所表示であると認識すると解するのが相当である。

イ 『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する認識

前記のとおり,①『ドーナツクッション』の語を付した多数のクッション商品が,中央部分に穴のあいた円形,輪形及び矩形の形状のクッションの写真や図などとともに,宣伝広告され,販売される例が,存在し,これらの商品は特定の製造者,販売者による商品に限られるものではないことから,一般需要者において,『ドーナツクッション』の語について,特定の出所を表す表記であるとは認識されていないこと,②一般消費者においても,ウエブサイト等の書き込みにおいて,『ドーナツクッション』の語を,特有の形状を有するクッションとの意味で使用しており,特定の出所を示すものとして使用していない例が少なくないこと,③『商品の形状等を指す語』と『商品の種類を指す語』とを前後に組み合わせることによって商品をわかりやすく表記することは,一般に行われていることからすれば,被告標章1の出所識別力は極めて弱いといえる。

ウ 以上の経緯を総合するならば,被告商品の包装箱に接した一般消費者は,被告標章1について,被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び上記②の説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起するものではないものと認められる。

そうすると,被告標章1が被告商品の包装箱において商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告商品の包装箱における被告標章1の使用は,商標としての使用(商標的使用)に当たらないというべきである。

エ これに対し,原告は,以下のとおり主張するが,いずれも理由がない。

(ア) 被告商品の包装箱には,被告標章1以外には,被告商品の商品名に該当する表示は一切ないこと,表面及び裏面の商品の説明文に商品の種類を示す表示として『シートクッション』という語が用いられていることから,被告標章1は,被告商品の出所を表示するものとして使用されていると主張する。

しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,被告商品の包装箱の表面には,『お産の後の妊婦さんや痔でお悩みの方などにお薦めのシートクッション。中央部分にはスーパーソフトなテンピュールRを用いて安らげる座りごこちを提供します。』との説明文,同裏面には,『抜群のコンビネーションが自然な座りごこちを実現 テンピュールRのドーナツクッションは,一見すると通常のシートクッションと変わりませんが,デリケートな部分が触れるところをスーパーソフトのテンピュールRで構成することにより,自然な座りごこちを実現しています。・・・』との説明がされ,『シートクッション』の語は,被告商品が着座して使用するクッションであることを意味するものとして用いられていることが認められる。『シートクッション』の語が,このような文脈で説明的に用いられたからといって,『ドーナツクッション』からなる被告標章1が商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられていることの根拠となるものではない。

(イ) 原告は,被告商品は,四角形に近い形状であるから,『ドーナツクッション』より生じる観念とは一致しないと主張する。

しかし,原告の上記主張も採用の限りでない。すなわち,被告商品は,その外縁がやや四角形に近いとはいえ,その中央部分を取り外した場合には楕円形の穴が中央部分にできるものであって,取り外した状態では全体として,『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』であるといえるから(甲5の1,甲5の3),原告の上記主張は採用の限りでない。

(ウ) 原告は,被告商品は,その中央部分を取り外さないで使用することが推奨されている上,たとえ取り外したとしても,その中身は,肌色のデザイン性のない中綿であるので(甲242の3~6),一般消費者としては,被告商品に付属している四角形の穴のないカバーを取り付けて利用するはずであるといえるから(甲242の1~8),被告商品が『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』であると理解されるとはいえないと主張する。

しかし,原告の上記主張は採用の限りでない。すなわち,被告商品の包装箱には被告商品の中央部分を取り除いてカバーを取り付ける前の,楕円形の穴が内側にあいている状態が明確に図示されており,その状態はクッションとしては特徴的なものであって,『スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。』(甲6),『お産の後の妊婦さんや痔でお 悩みの方などにお薦めのシートクッション』(甲44の1,2,甲45の1)との説明文等があることからみても,需要者がそれらの商品特性を理解して,被告商品に付された『ドーナツ』の語句が『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』を表現したものであると理解するといえる。

したがって,中央部分を取り外す前の状態又はカバー取付後の状態を強調して上記の理解が生じ得ないとする原告の前記主張は採用の限りでない。

(エ) 原告は,商標が商品の形状を説明する機能を有すると同時に出所表示機能をも果たすことはあり得るから,被告各標章が形状表示機能を有するとしても,そのことが,出所表示機能を否定する根拠とはならないと主張する。

しかし,原告の上記主張は採用の限りでない。すなわち,被告各標章の表記態様,各テンピュール商標の存在や,説明文等をも総合考慮すれば,被告各標章は,出所の表示として使用されているものとはいえない。

したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

(2) 被告ウエブサイトにおける被告標章2の表記について

前記のとおり,被告ウエブサイトの表記態様については,別紙6の写真に示すとおりであり,①中央部に,被告標章2が表示され,その下にカバーが取り付けられた被告商品の写真が掲載されていること,②写真右側に,『スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。』との説明文が記載されていること,③左側上部に,テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が掲載されていること,④下部に,『テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です』との文章が掲載されていること,⑤被告標章2から中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッションあるいはこのような円形,輪形に似た形状のクッションの観念が生じること,⑥『テンピュール』の標準文字からなるテンピュール商標2は,平成20年7月当時までに,被告が販売する商品の商標として著名となっていたことが認められる。


上記の事実のほかに,前記(1)のイ記載のとおり,『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する一般取引者及び需要者の認識に照らすならば,被告標章2の出所識別力は極めて弱いといえることを総合すると,被告ウエブサイトの上記部分に接した一般消費者においては,被告標章2について,上記説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起するものではないものと認められる。

そうすると,被告標章2が被告商品のウエブサイトにおいて商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告商品のウエブサイトにおける被告標章2の使用は,本来の商標としての使用に当たらないというべきである。

(3) 被告カタログにおける被告標章2の表記について

前記認定のとおり,被告カタログにおける被告標章2の表記は,①表表紙の中央上部に,『テンピュールR総合カタログ』,『2009Autumn-2009Winter』との文字,『TEMPUR』の文字,テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が記載されていること,②被告商品を紹介している部分において,上から順に,被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章,被告商品の写真,『スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。』との説明文が記載されていること,③裏表紙の中央部に,テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が記載されていること,④また,被告ウエブサイトには,被告販売に係る他の商品も表記されているが,例えば,『座布団』,『トランジットピロー』,『New トラベルピロー』など,他の商品についても,およそ出所識別を有しない一般名詞が用いられていること,⑤被告標章2から中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッションあるいはこのような円形,輪形に似た形状のクッションの観念が生じること,⑥『テンピュール』の標準文字からなるテンピュール商標2は,平成20年7月当時までに,被告が販売する商品の商標として著名となっていたことが認められる。

上記の事実に前記(1)のイ記載のとおり,『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する一般取引者及び需要者の認識に照らすならば,被告標章2の出所識別力は極めて弱いといえることを総合すると,被告カタログの上記部分に接した一般消費者においては,上記説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起するものではないものと認められる。

そうすると,被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章が被告カタログにおいて商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告カタログにおける被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章の使用は,本来の商標としての使用に当たらないというべきである。」

原判決45頁19行目の「(6)」を「(4)」に改める。

原判決45頁1行目の「2 争点2-1」を「3 争点2-1」に改める。

原判決46頁22行目の冒頭から,24行目末尾までを,以下のとおり改める。

「4 小括

以上のとおり,①『ドーナツ』の語には,穴のあいた円形,輪形の形をした物の観念が含まれており,『ドーナツ盤』,『ドーナツ椅子』,『ドーナツスピン』,『ドーナツ星雲』等の『ドーナツ』を冠した複合語の用例が存在していることを総合すると,『ドーナツ』を冠した複合語からは,『ドーナツ』とそれに続く語との間の『型』又は『形』の文字が付加されていない場合であったとしても,『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状の物』の観念が想 起されること,②被告商品の包装箱,被告ウエブサイト又は被告カタログには,その出所識別表示としては,各テンピュール商標が別に存在しており,被告標章1(ドーナツ/クッション)又は2(ドーナツクッション)については,被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び包装箱の説明文等と相俟って,被告商品がその中央部分を取り外すと,中央部分に穴のあいた輪形に似た形状となるクッションであることを説明するために用いられたものであると需要者において認識し,商品の出所を想起するものではないといえることなどに鑑みれば,被告各標章は,被告商品の出所識別表示として使用されているものではないと認められるから,その使用が『登録商標に類似する商標の使用』 (商標法37条1号)には該当せず,被告の商品であることを示す『商品等表示』(不競法2条1項1号,2号)にも当たらないというべきである。

その他,原告は,縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。

5 結論

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。」

知的財産高等裁判所第3部



裁判長裁判官
飯 村 敏 明



裁判官
齊 木 教 朗



裁判官
武 宮 英 子



「被告標章目録」









「商品目録」


商品名:ドーナツクッション
販売元:被告




「原告登録商標目録」(甲3,4)


登録商標

登録番号 第822951号
出願年月日 昭和42年11月10日
登録年月日 昭和44年6月24日
更新登録日 平成21年1月13日
商品の区分及び指定商品

第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」

第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」

第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,
布団側,まくらカバー,毛布」

24



「被告商標目録」



1 登録番号 第4355267号(乙298,302,303)
出願日 平成11年5月14日
設定登録日 平成12年1月28日
更新登録日 平成21年12月22日
商標権者 ダン-フォーム・アンパルトセルスカプ
専用使用権の設定登録日 平成20年10月31日
専用使用権の範囲 地域 日本
期間 本商標権の存続期間中(平成22年1月28
日まで)
内容 「指定商品 第10類 医療用まくら 医療
用クッション,医療用マットレス,医療用
の補助器具及び矯正器具,その他の医療用
機械器具 第20類 クッション,座布
団,まくら,マットレス」
登録商標


25




2 登録番号 第4566278号(乙299,304)
出願日 平成12年5月1日
設定登録日 平成14年5月10日
商標権者 ダン-フォーム・アンパルトセルスカプ
専用使用権の設定登録日 平成20年10月31日
専用使用権の範囲 地域 日本
期間 本商標権の存続期間中(平成24年5月10
日まで)
内容 「指定商品 第10類・・・,第20類 ・・・
クッション,座布団,まくら,マットレ
ス・・・」
登録商標 テンピュール(標準文字)


3 国際登録番号 第961000号(乙301)
国際登録日 平成20年3月12日(2008年3月12日)
登録日 平成21年12月25日(2009年12月25日)

商標権者 Dan-Foam ApS
登録商標

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【商標の使用…否定】「事実認定」

あてはめ例

イ 『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する認識

前記のとおり,①『ドーナツクッション』の語を付した多数のクッション商品が,中央部分に穴のあいた円形,輪形及び矩形の形状のクッションの写真や図などとともに,宣伝広告され,販売される例が,存在し,これらの商品は特定の製造者,販売者による商品に限られるものではないことから,一般需要者において,『ドーナツクッション』の語について,特定の出所を表す表記であるとは認識されていないこと,②一般消費者においても,ウエブサイト等の書き込みにおいて,『ドーナツクッション』の語を,特有の形状を有するクッションとの意味で使用しており,特定の出所を示すものとして使用していない例が少なくないこと,③『商品の形状等を指す語』と『商品の種類を指す語』とを前後に組み合わせることによって商品をわかりやすく表記することは,一般に行われていることからすれば,被告標章1の出所識別力は極めて弱いといえる。

ウ 以上の経緯を総合するならば,被告商品の包装箱に接した一般消費者は,被告標章1について,被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び上記②の説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起するものではないものと認められる。

そうすると,被告標章1が被告商品の包装箱において商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告商品の包装箱における被告標章1の使用は,商標としての使用(商標的使用)に当たらないというべきである。

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H230331現在のコメント


(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))

【商標の使用…否定】「事実認定」の判決です。

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Last Update: 2011-03-31 15:13:00 JST

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