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2011年4月19日火曜日

著作権:【著作物性】(データベース)「事実認定」:(知財高裁平成23年4月19日判決(平成23年(ネ)第10005号損害賠償等請求控訴事件))

著作権:【著作物性】(データベース)「事実認定」:(知財高裁平成23年4月19日判決(平成23年(ネ)第10005号損害賠償等請求控訴事件))

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(知財高裁平成23年4月19日判決(平成23年(ネ)第10005号損害賠償等請求控訴事件))

第2 事案の概要
1 被控訴人(被告)は自ら開設するウェブサイト上に「住宅ローン商品 金利
情報」を掲載しているが,控訴人(原告)は,そのうちの,全国の金融機関の金利
情報を整理した被告図表(原判決別紙Aにおいて示された図表部分)が,控訴人の
著作物(図形,編集著作物又はデータベースの著作物)である本件図表(原判決別
紙Bにおいて示された図表部分)を複製したものであり,被控訴人の上記掲載行為
は控訴人の有する本件図表の著作権(複製権,公衆送信権)を侵害する旨主張し,
被控訴人に対し,著作権法112条1項に基づく差止請求として上記「住宅ローン
商品 金利情報」が掲載されたウェブページの閉鎖と,著作権侵害の不法行為によ
る損害賠償の一部請求として706万4000円の支払を求めた。
2 原判決は,本件図表の著作物性(図形,編集著作物又はデータベースの著作
物)を否定し,控訴人の請求をいずれも棄却した。
3 控訴人は,当審において,本件図表が著作物に当たらないとしても,被控訴
人が本件図表の複製と同視し得る被告図表を掲載したウェブサイトの運営を行うこ
とは,本件図表を掲載したウェブサイトの運営による控訴人の営業活動に対する侵
害行為であり,かつ,公益法人による民業圧迫であるから,法的保護に値する利益
の侵害による不法行為に当たると主張し,この不法行為に基づく請求を追加した。

第4 当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の本訴請求は当審において追加された請求を含めて棄却すべ
きものと判断する。原審から請求されている著作権侵害に係る請求が理由のないこ
とは,原判決10頁10行目以下の「第3 当裁判所の判断」の1に記載のとおり
であり,当審での追加請求に理由のないことは,次に示すとおりである。
控訴人は,追加請求の原因として,被告図表の特徴が本件図表のそれと同一であ
り,本件図表の複製と同視し得るので,被告図表を掲載したウェブサイトの運営を
行うことは,本件図表を掲載したウェブサイトの運営による控訴人の営業活動に対
する侵害行為であり,かつ,公益法人による民業圧迫であるから,不法行為に当た
る旨主張する。
しかしながら,被告図表は,控訴人も認めるように,本件図表それ自体を用いて
作成されたもの(いわゆるデッドコピー)ではない。また,本件図表の特徴とされ
る,全国の金融機関の住宅ローン商品について,金融機関名,商品名,変動金利,
固定金利の各固定期間の順に配列することや,これらの情報をデータベース化し,
抽出し,並び替えるといった機能自体は,公表されたデータで,しかも全国の金融
機関といっても数が限られたものを整理するにとどまるものであって,ありふれた
ものであるから,これらの配列や機能に被告図表と共通する部分があるからといっ
て,そのこと自体において,被告図表が本件図表の複製と同視し得るものとは認め
られず,被告図表を掲載したウェブサイトの運営が控訴人に対する不法行為に当た
るとはいえない。また,民業圧迫の点についても,証拠(乙7)によれば,被控訴
人の法人の目的として,「住宅金融等に関する…情報提供…」と記載されているこ
とが認められ,被告図表の作成等により住宅ローンの金利情報を提供することは上
記目的に含まれると解されるところ,そのような目的・行為は公益に合致するもの
であるから,被控訴人が被告図表を掲載したウェブサイトの運営を行うことと控訴
人の業務との間に競合する部分があるとしても,被控訴人の上記行為が違法である
とはいえない。
他に控訴人主張の事実関係を最大限考慮に入れたとしても,本件において法的保
護に値する利益の侵害に当たる事実があるものとは認められず,そのことの不法行
為に基づく控訴人の請求も理由がない。

知的財産高等裁判所第2部  裁判長裁判官塩月秀平


平成23(ネ)10005 損害賠償等請求控訴事件 著作権 民事訴訟
平成23年04月19日 知的財産高等裁判所


(知財高裁平成23年4月19日判決(平成23年(ネ)第10005号損害賠償等請求控訴事件))
http://chizaibengoshi.appspot.com/20110420155715.html
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2011年4月7日木曜日

特許:【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10217号審決取消請求事件))

特許:【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10217号審決取消請求事件))

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(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10217号審決取消請求事件))

http://chizaibengoshi.appspot.com/20110329161827.html

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特許:【実施可能要件】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10249号,第10250号審決取消請求事件))

特許:【実施可能要件】「事実認定」:(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10249号,第10250号審決取消請求事件))

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(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10249号,第10250号審決取消請求事件))


平成22(行ケ)10249等 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成23年04月07日 知的財産高等裁判所 

第2 事案の概要

本件は,被告からの無効審判請求に基づき請求項1ないし4に係る原告らの特許
を無効とする審決の取消訴訟である。争点は,訂正後の請求項1ないし4の発明に
つき,明細書の発明の詳細な説明に当業者がその実施をすることができる程度に記
載がされているか否か(実施可能要件の有無)である。なお,以下に「原告」とい
うときは,原告両名を総称するものとする。

「これらの温度,時間についての実験条件と,通常のセボフルラン含有麻
酔薬の製造,保存等の環境下での条件との関係については,訂正明細書には何ら説
明がない。また,原告は,訂正明細書の実験例において採用される条件が『最悪の
場合のシナリオ』と主張するにとどまり,両者の具体的な関係は明らかにしていな
い。」と説示する。しかし,訂正明細書の実施例3,4で採用されている実験条件が
通常想定される使用条件を超える過酷なもので,短時間で実験を終える加速試験の
条件として設定されたものであるとすれば,上記実験条件下でも安定している薬剤
は,上記実験条件未満の通常の使用条件の下でも安定しているものと考えるのが当
業者の当然の理解であって,さらに詳細に製造条件等を開示するか否かは,明細書
の作成者において発明の詳細な説明をどこまで具体的かつ詳細に記載し,当該発明
の実施形態を詳細に開示するかによるものにすぎず,かかる詳細な製造条件等の開
示が特許法36条4項1号の規定の適用上必須だとされるものではない。そうする
と,審決の上記説示は誤りである。

(知財高裁平成23年4月7日判決(平成22年(行ケ)第10249号,第10250号審決取消請求事件))
http://chizaibengoshi.appspot.com/20110411135336.html

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2011年3月24日木曜日

不正競争防止法:【不正競争防止法2条1項1号の該当性】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(ネ)第10077号不正競争行為差止等請求控訴事件))






不正競争防止法:【不正競争防止法2条1項1号の該当性】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(ネ)第10077号不正競争行為差止等請求控訴事件))






知的財産高等裁判所第2部「塩月秀平コート」


平成22(ネ)10077 不正競争行為差止等請求控訴事件 不正競争 民事訴訟
平成23年03月24日 知的財産高等裁判所


(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(ネ)第10077号不正競争行為差止等請求控訴事件))


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【不正競争防止法2条1項1号の該当性】「事実認定」


(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(ネ)第10077号不正競争行為差止等請求控訴事件))

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判示・縮小版なし




第2 事案の概要

1 被控訴人は,控訴人商品の形態は被控訴人商品との混同を生じさせるものであり,また,控訴人商品は被控訴人商品の形態を模倣した商品であるから,控訴人による控訴人商品の販売は,不競法2条1項1号又は3号の不正競争行為に当たると主張して,控訴人に対し,不競法3条1項に基づき,控訴人商品の譲渡等の差止めを求めるとともに,同法4条に基づき,損害賠償として3996万円及び遅延損害金の支払を求めた。
原審は,控訴人商品を販売する控訴人の行為は不競法2条1項1号の不正競争行為に当たるとして,控訴人商品の譲渡等の差止請求を認めるとともに,被控訴人は控訴人の上記不正競争行為により183万円6180円の損害を被ったとして,183万円6180円及びこれに対する遅延損害金の支払の限度で,被控訴人の損害賠償請求を認めた。



第4 当裁判所の判断

当裁判所も,控訴人商品を販売する控訴人の行為は,不競法2条1項1号の不正競争行為に該当するものと認め,被控訴人は控訴人の上記不正競争行為によって被控訴人商品に係る営業上の利益を侵害されているものであるから,不競法3条1項に基づき,控訴人に対し,控訴人商品の譲渡,引渡し,又は譲渡若しくは引渡しのための展示の差止めを請求することができるとともに,不競法4条に基づき,控訴人が控訴人商品の販売によって受けた損害の額(控訴人が控訴人商品の販売によって受けた利益の額である183万6180円)及びこれに対する遅延損害金につき損害賠償請求ができると判断する。この点に関する当事者双方の主張に対する当裁判所の判断は,控訴人の当審補充主張についての判断を次のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第4 当裁判所の判断」記載のとおりである。

1 商品等表示について(争点1-1)
(1) 控訴人は,被控訴人商品の形態の独自性につき,販売開始時期は不明で
あっても,現段階においては被控訴人商品と同種商品が多数流通しているし,被控
訴人商品の商品形態は長さ数センチ程度の小さな円筒形状の金属製パイプであり,
商品それ自体の形態では何らの独自性を有するものではないと主張する。

しかし,被控訴人商品の形態が,被控訴人が被控訴人商品の販売を開始した平成
18年9月26日当時,他の商品(角質除去具)には見られない独自の特徴を有す
る形態であったものであることは,原判決23頁以下のイの項で認定されていると
おりである上,平成19年11月の時点においても,控訴人が指摘する同種商品
(乙23~25)の商品の販売が開始されていたことを認めるに足りる証拠はない
のであるから,現段階で控訴人が指摘する同種商品が流通しているとしても,それ
をもって被控訴人商品の形態の独自性を否定する事情にはならないというべきであ
る。
(2) 控訴人は,被控訴人商品の形態の周知性につき,被控訴人商品の販売開始
時期から被告製品の販売開始時期まではわずか1年2か月であり,このような短期
間で周知性を取得したとするためには,表示の識別力が特に顕著であるとか,広告
宣伝に莫大な費用を投じた等の特殊な事情が認められる例外的な場合に限られると
解すべきであるところ,被控訴人商品につき広くテレビコマーシャルが流されたこ
ともなく新聞広告も行われておらず,雑誌等での紹介も他の美容品と合わせてもの
にすぎないのであり,被控訴人商品は出所識別機能を有するほどの周知性を獲得し
たとはいえないなどと主張する。

しかし,被控訴人商品につきテレビコマーシャルが流されたり,新聞広告が行わ
れたことがなかったからといって,1年2か月間で周知性が獲得できないというも
のではなく,被控訴人商品が,多くの全国的な雑誌,新聞,テレビ番組等で繰り返


  • 6 -


し取り上げられて効果的な宣伝広告がなされるなどした結果,周知性を獲得したと
認められることは,原判決34頁以下のエ(ア)の項で小括して認定したとおりである。
控訴人の上記主張は採用することができない。

(3) 控訴人は,被控訴人商品の形態の持つ意味につき,被控訴人商品の形態は
角質除去用具としての機能と密接に関連しており,需要者はその機能性に着目して
被控訴人商品を購入しているのであって,不競法2条1項1号が保護する周知商品
等表示の営業上の信用に由来するものではないなどと主張するが,需要者の中に被
控訴人商品の機能性に着目して購入している者があったとしても,そのことが被控
訴人商品の形態が周知の商品等表示(不競法2条1項1号)に該当するか否かの認
定を左右するものではない。

2 類似性(争点1-2)及び混同のおそれの有無(争点1-3)について
控訴人は,被控訴人商品と控訴人商品のパッケージ形状・色彩の違いといった販
売形態の差異からすれば,被控訴人商品と控訴人商品との混同が生じるおそれは全
くないと主張する。

しかし,被控訴人商品と控訴人商品の形態が類似することは,原判決36頁以下
の(2)の項で認定したとおりであるところ,需要者である一般消費者において,商
品選別の主たる要素は商品本体であるから,被控訴人商品本体の形態と類似した控
訴人商品本体を見て被控訴人商品と混同するおそれはあると容易に認めることがで
きるというべきである。

第5 結論
以上より,被控訴人の控訴人に対する請求を認容した原判決部分は相当であって,
本件控訴は理由がない。
よって,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官塩月秀平

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H230328現在のコメント


(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(ネ)第10077号不正競争行為差止等請求控訴事件))

不正競争防止法2条1項1号の「事実認定」判決です。

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Last Update: 2011-03-28 21:31:34 JST

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……………………………………………………判決末尾top
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2011年3月15日火曜日

著作権:【職務著作性】「事実認定」,【「プログラム言語のちがい」による著作物性】「判断」:(知財高裁平成23年3月15日判決(平成20年(ネ)第10064号著作権確認等請求控訴事件))






著作権:【職務著作性】「事実認定」,【「プログラム言語のちがい」による著作物性】「判断」:(知財高裁平成23年3月15日判決(平成20年(ネ)第10064号著作権確認等請求控訴事件))





知的財産高等裁判所第2部「塩月秀平コート」


平成20(ネ)10064 著作権確認等請求控訴事件 実用新案権 民事訴訟
平成23年03月15日 知的財産高等裁判所 

(知財高裁平成23年3月15日判決(平成20年(ネ)第10064号著作権確認等請求控訴事件))

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【職務著作性】「事実認定」,【「プログラム言語のちがい」による著作物性】「判断」


(知財高裁平成23年3月15日判決(平成20年(ネ)第10064号著作権確認等請求控訴事件))



判示


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第2 事案の概要


原判決別紙著作権目録記載の「船舶情報管理システム (本」件システム)を開発作成し,その著作権を有すると主張する控訴人(原告)は,元の勤務先である被控訴人(被告)が同システムを使用しているとして,被控訴人に対し,①本件システムについて,控訴人が著作権を有することの確認を求めるとともに,②控訴人による開発寄与分の確認を求めた。


原判決は,本件システムはプログラムの著作物であるが,仮に同システムが控訴人の著作に係るものと認めるとしても,著作権法15条2項の職務著作に該当するとして,その著作権を有することの確認請求を棄却するとともに,本件システムについての開発寄与分がどれほどの割合かの確認を求める請求については,訴えの利益がないとして,その訴えを却下した。

控訴審では,①の請求については,控訴人が単独で著作権を有することの確認を主位的請求とし,予備的に,被控訴人又は信友株式会社(信友)及び中国塗料技研株式会社(中国塗料技研)と共同で著作権を有することの確認を請求した。

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第4 当裁判所の判断


控訴人が本件システムについてその著作権の確認を求める請求に関する判断は,次のとおり加えるほかは,原判決28頁22行目以下の「2本件システムの著作物性について」及び30頁9行目以下の「3 本件システムは職務著作に係る著作物であるかについて」記載のと(おり ただし,原判決30頁15行目「冒頭の の」は 「ある,」と訂正する )であり。,本件システムは,職務著作(著作権法15条2項)に該当し,その著作者は信友又は中国塗料技研であると認められるから,控訴人が作成した部分があるとしても,その著作権を有するものではない。

(1)

控訴人は,昭和60年から控訴人が退職する平成5年1月末まで,被控訴人が控訴人に対して,本件システムについて何らの開発指示・命令を行うことなく,同システムは,控訴人が一人で考えてアイデアを具現化して作られたものであるから 「法人等の発意」はなかった旨主張する。

そこで検討するに,証拠(甲135,136,153,乙4∼6。枝番号の書証を含む。証人A,控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。

ア被控訴人においては,昭和61年2月に,信友に出向中の控訴人が起案した「海運をとりまく環境が悪化しておりますが,限られた船舶用塗料を1隻でも多く獲注するため,就航中の船舶を徹底的にフォローし,船舶情報をコンピューターに入力して,当社及び他社の使用状況,塗装仕様及び実績,次回入渠成績予定などを把握して営業戦略の一助とすべく情報管理システムを計画しております。本システム業務を下記要領にて信友(株)に一括委託いたしたく稟請申しあげます 」と。の稟議書に基づいて稟議がなされ,信友との間で5年間にわたる総額4575万円のリース契約を締結し,信友に対して当該リース物件購入のための金員3500万円を貸し付けることを含めて,代表取締役Bの決裁により,上記船舶情報管理システム業務を信友に委託することが承認された。


その後,信友では,昭和61年8月 に「新,造船受注情報システム計画案」が策定され,昭和61年9月には,プログラム作成の外注先として選定された田中電機の見積りに基づいて,上記船舶情報管理システムのプログラムの追加が同様に稟議され,信友との間で5年間にわたる総額165万6000円のリース契約の締結が決裁された。さらに,昭和63年6月に,上記田中電機の見積りに基づいて,上記船舶情報管理システムの端末機1台及びソフトの追加が同様に稟議され,信友との間で5年間にわたる総額146万1000円のリース契約の締結が決裁された。


田中電機に対する本件システムのプログラム作成等の費用は,昭和60年以降,控訴人の信友在職中は同社から,平成4年6月に控訴人が中国塗料技研に代表取締役として出向してからは同社から,それぞれ支払われており,田中電機ではそれに基づいて本件システムに係るプログラム作成等が進められた。

(2)

以上の認定事実及び原判決の認定事実(原判決30頁14行目∼32頁6行目)によれば,船舶情報管理システムである本件システムは,被控訴人の社内稟議を経ての代表者の決裁という明確な発意に基づいて開発が開始され,被控訴人が全額出資する完全子会社である信友に対して,当該開発業務の委託と必要に応じての資金援助が行われるとともに,追加のプログラムのリース契約等も締結されたものであり,信友においても 「新,造船受注情報システム」が会社としての事業計画とされていたのであるから,本件システムの作成は,法人としての信友の発意に基づくものであると認められる。また,信友と同様に被控訴人が全額出資する完全子会社である中国塗料技研についても,被控訴人と業務運営上一体的な立場に立つ法人であって,平成4年6月に本件システムの開発に従事していた控訴人が同社に代表取締役として出向した際も,船舶情報管理システムの開発業務が同社に移管され,田中電機に対して本件システムのプログラム作成のための支払を行っているのであるから,その後の本件システムの作成は,法人としての中国塗料技研の発意に基づくものと認められる。

以上のとおり,本件システムの開発が,控訴人が在籍中の出向元である被控訴人の指示により開始され,被控訴人の完全子会社である信友及び中国塗料技研がその意向を受けて法人として本件システムの開発を発意しているのであるから,両社において当該開発業務に従事する控訴人が,その職務上作成した本件システムのプログラムの著作者は,その作成時における契約や勤務規則等の別段の定めがない限り,法人である信友又は中国塗料技研となるものと認められ(著作権法15条2項 ,)上記別段の定めについての主張立証はないのであるから,結局,本件システムのプログラムの著作者は,信友又は中国塗料技研,あるいはその双方であると認めるべきである。

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(3)

控訴人は,本件システムを一人で考えてアイデアを具現化して作成したから著作者であると主張し,田中電機に外注を行うに当たり,コンピュータ画面設計やカーソル操作,ファンクションキーらの設定,入力方法などについて,詳細な指示を行っていた旨を強調する。

しかし,そのような事実が認められるとしても,控訴人による上記の指示が,信友又は中国塗料技研の業務に従事する者の立場で(控訴人が,本件システムのプログラムの開発中,被控訴人から出向して信友又は中国塗料技研の業務に従事し,給与の支払を受けていたことは,当事者間に争いがない。),職務上行われたものである以上,控訴人が個人として当該システムのプログラムの著作物の著作者となるものでないことは,条文上明らかであるから,控訴人の上記主張を採用することはできない。

また,控訴人は 「, 法人等の発意」というためには,雇用者の被雇用者に対する命令でなければならず,雇用者は命令が忠実に実行されているか確認を常に怠っていてはならないにもかかわらず,被控訴人は,本件システムについて一切の命令もせず,控訴人に任せきりにしていたから,被控訴人の「法人等の発意」が存在したとはいえないと主張する。


しかし,前示のとおり,本件システムの開発が被控訴人の指示により開始され,被控訴人の完全子会社である信友及び中国塗料技研がその意向を受けて同システムの開発を発意している以上,その後の開発過程において,被控訴人や信友又は中国塗料技研からプログラム作成についての具体的な指示等がなされなかったとしても,また,控訴人主張の確認が継続していなかったとしても,当該各法人による発意の存在が左右されるものではない(なお,被控訴人から信友に対して,本件システムのプログラム作成のための資金援助がなされたこと,信友及び中国塗料技研が田中電機に本件システムのプログラム作成のための支払を行い,これに基づいて本件システムのプログラム開発が進められたことは,前記認定び原判決認定(31頁12行目∼15行目)のとおりである。。したが)って,控訴人の上記主張を採用することはできない。

(4)

以上のとおり,本件システムについては,控訴人が作成した部分があるとしても職務著作が成立し,控訴人が共同著作権も含め著作権を有するものではないから,その著作権の確認を求める請求は,主位的請求及び予備的請求のいずれについても理由がないものといわなければならない。


  • 11 -




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なお,本件システムと,被控訴人において稼動していた「船舶情報管理システム」との関係について判断する。

(1)

控訴人は,現在,被控訴人において稼働している船舶情報を管理する船舶情報管理システムについての判断を求める。その趣旨は,同システムが,本件システムを移植したものであって,実質的に同一のものであるから,控訴人の著作物であるというものである。

そこで検討するに,証拠(甲16,23∼37,132,133,136,138,143∼145,153,乙5∼34。枝番号の書証を含む。証人A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。


船舶情報管理のための本件システムは,昭和60年から平成5年にかけて,控訴人が作成したシステム仕様書や画面仕様書などの発注仕様書に基づいて,IBMの代理店である田中電機においてそのプログラムの開発作業が進められて作成されたものであり,一応完成された部分についても,被控訴人に納品されて稼働確認等がなされ,その結果に応じてプログラムの修正が行われた。本件システムは,控訴人の退職後に完成され,信友からのリースを受ける形態により被控訴人において使用され,その間,新造船又は修繕船の履歴に関するデータが集積された。

本件システムのプログラムは,その構成内容が明らかでなく,サーバ側のプログラムと端末側のプログラムの切り分けやプログラム言語もほとんど不明であるが,IBM社のオフィスコンピュータ S/36 又は AS/400 専用に開発されたものであり,同社製のコンピュータ上で動作するデータベース管理プログラムである Query/36が用いられている。

イ被控訴人は,営業規模の拡大などに対応するため,新たな船舶情報管理システムの開発を企画し,平成8年9月,NECに1982万6985円で同システムの開発を発注し,平成9年3月と6月に同社又はNECソフトウェア中国により船舶情報管理システム(NECシステム)が納品され,それ以降,NECシステムを使用していた。NECシステムの作成に際しては,本件システムが参考とされ,集積された新造船又は修繕船の履歴に関するデータが移管された。また,被控訴人は,平成10年7月,田中電機との間で締結していた本件システムの稼働のためのIBM機器の保守点検契約を終了した。

NECシステムのプログラムは,オペレーティングシステム(OS)であるマイクロソフトの Windows95 及びその上で動作するデータベース管理プログラムであるマイクロソフトの Access を用いることを前提として,Visual Basic 又は VisualBasic for Application を用いて作成されたものである。


NECシステムは,OS 等が旧式化して使用上の不都合が増大したため,被控訴人の内部においても徐々に利用されなくなり,被控訴人は,新たにウェブ配下で稼働する船舶情報管理システムの作成を富士通株式会社に依頼し,そのシステムが完成,稼働したことから,平成22年8月に,NECシステムを廃棄した。

(2)

以上の認定事実及び原判決の認定事実(原判決28頁24行目∼30頁8行目)によれば,本件システムとNECシステムとは,ともに新造船又は修繕船の履歴に関する情報管理システムであり,当該情報の入力及び出力の機能等に共通する点があるとしても 例えば ,NEC,システムが Visual,Basic 又は Visual Basicfor Application により,表示された船舶画面上でマウスによるカーソル移動によって指示を受けて塗装部位等に関する情報を入力させるような画面を提供するのに対し,本件システムで用いられるデータベース管理プログラムである Query/36 に対してそのような画面入力を行うことは困難であるから,プログラムの表現において両者が異なることは当然であり,両者がプログラム著作物として同一又は実質的に同一といえないことは明らかである(なお,控訴人は,NECシステムが本件システムを翻案(著作権法27条)した著作物である旨を主張立証するものでないことを明言している。。)

(3) 控訴人は,本件システムのうち,マスター類,船舶基本情報,塗装実績,塗装仕様発行システム,新造船受注システムなどは,控訴人が退職する平成5年1月末までには膨大なデータ量になっていた上,同期日までに控訴人が開発した成績管理システム,修繕船管理システム,店所別,造船所別入渠予定,建造予定線表などにも,毎日膨大な船舶塗料に関するデータが入力・出力されたはずであり,蓄積されたデータを被控訴人が廃棄することはあり得ないことを根拠に,NECシステムが本件システムと実質的に同一であると主張する。

確かに,前記認定のとおり,本件システムは,被控訴人において使用され,その間,新造船又は修繕船の履歴に関するデータが集積されており,当該データはNECシステムの作成に際して同システムに移管されたものと認められる。また,NECシステムの作成に際して,本件システムの機能や構成等が参考とされたものと推測するのが自然である。しかし,新造船又は修繕船の履歴に関して集積されたデータが移管されたり,システムの機能や構成等が参考とされたことと,プログラム著作物としての表現自体の同一性とは別問題であり,プログラム著作物としての表現が同一又は実質的に同一といえないことは,前記説示のとおりであるから,控訴人の主張を採用することはできない(なお,控訴人は,本件システムがデータベースの著作物(著作権法12条の2)である旨を主張立証するものではない。。)

(4)
以上のとおりであるから,被控訴人において使用されていたNECシス
テムについて,本件システムと著作物として同一又は実質的に同一であることを根
拠に,本件システムと一体のものとしてその著作権を有することの確認を求める請
求は,その前提において理由がないものといわなければならない。

控訴人が本件システムに対する開発寄与分がどれほどの割合かの確認を求める訴えについて判断するに,この割合自体が現在の権利又は法律関係となるものではなく,単なる事実関係の範疇に属するものであり,その事実関係から直截に現在の権利又は法律関係が導かれ,紛争を抜本的に解決するような事実関係ということもできないので,この訴えは,確認の利益を欠くものといわなければならない。

よって,上記訴えは,不適法であって却下を免れない。

第5

結論


  • 14 -



以上によれば,控訴人の著作権の確認を求める主位的請求は理由がなく,これを棄却した原判決は相当であり,また,本件システムについての開発寄与分の割合の確認を求める請求は訴えの利益がなく,これを却下した原判決は相当であるから,本件控訴は理由がないのでこれを棄却する。併せて,当審における予備的請求も理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官塩月秀平



縮小版


(知財高裁平成23年3月15日判決(平成20年(ネ)第10064号著作権確認等請求控訴事件))



【プログラム言語のちがい】「判断」


「あてはめ」例

控訴人は,現在,被控訴人において稼働している船舶情報を管理する船舶情報管理システムについての判断を求める。その趣旨は,同システムが,本件システムを移植したものであって,実質的に同一のものであるから,控訴人の著作物であるというものである。

そこで検討するに,証拠(甲16,23∼37,132,133,136,138,143∼145,153,乙5∼34。枝番号の書証を含む。証人A)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。


船舶情報管理のための本件システムは,昭和60年から平成5年にかけて,控訴人が作成したシステム仕様書や画面仕様書などの発注仕様書に基づいて,IBMの代理店である田中電機においてそのプログラムの開発作業が進められて作成されたものであり,一応完成された部分についても,被控訴人に納品されて稼働確認等がなされ,その結果に応じてプログラムの修正が行われた。本件システムは,控訴人の退職後に完成され,信友からのリースを受ける形態により被控訴人において使用され,その間,新造船又は修繕船の履歴に関するデータが集積された。

本件システムのプログラムは,その構成内容が明らかでなく,サーバ側のプログラムと端末側のプログラムの切り分けやプログラム言語もほとんど不明であるが,IBM社のオフィスコンピュータ S/36 又は AS/400 専用に開発されたものであり,同社製のコンピュータ上で動作するデータベース管理プログラムである Query/36が用いられている。

イ被控訴人は,営業規模の拡大などに対応するため,新たな船舶情報管理システムの開発を企画し,平成8年9月,NECに1982万6985円で同システムの開発を発注し,平成9年3月と6月に同社又はNECソフトウェア中国により船舶情報管理システム(NECシステム)が納品され,それ以降,NECシステムを使用していた。NECシステムの作成に際しては,本件システムが参考とされ,集積された新造船又は修繕船の履歴に関するデータが移管された。また,被控訴人は,平成10年7月,田中電機との間で締結していた本件システムの稼働のためのIBM機器の保守点検契約を終了した。

NECシステムのプログラムは,オペレーティングシステム(OS)であるマイクロソフトの Windows95 及びその上で動作するデータベース管理プログラムであるマイクロソフトの Access を用いることを前提として,Visual Basic 又は VisualBasic for Application を用いて作成されたものである。


NECシステムは,OS 等が旧式化して使用上の不都合が増大したため,被控訴人の内部においても徐々に利用されなくなり,被控訴人は,新たにウェブ配下で稼働する船舶情報管理システムの作成を富士通株式会社に依頼し,そのシステムが完成,稼働したことから,平成22年8月に,NECシステムを廃棄した。

(2)

以上の認定事実及び原判決の認定事実(原判決28頁24行目∼30頁8行目)によれば,本件システムとNECシステムとは,ともに新造船又は修繕船の履歴に関する情報管理システムであり,当該情報の入力及び出力の機能等に共通する点があるとしても 例えば ,NEC,システムが Visual,Basic 又は Visual Basicfor Application により,表示された船舶画面上でマウスによるカーソル移動によって指示を受けて塗装部位等に関する情報を入力させるような画面を提供するのに対し,本件システムで用いられるデータベース管理プログラムである Query/36 に対してそのような画面入力を行うことは困難であるから,プログラムの表現において両者が異なることは当然であり,両者がプログラム著作物として同一又は実質的に同一といえないことは明らかである(なお,控訴人は,NECシステムが本件システムを翻案(著作権法27条)した著作物である旨を主張立証するものでないことを明言している。。)

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H230316現在のコメント


(知財高裁平成23年3月15日判決(平成20年(ネ)第10064号著作権確認等請求控訴事件))

プログラム言語が異なれば,実質的に同一とはいい難いというのは,そのとおりとおもいます。


NECシステムのプログラム言語は,
「Visual Basic 又は VisualBasic for Application」とはっきり出ていますが,

本件システムは,IBM専用機ということになれば,少なくとも「Visual Basic 又は VisualBasic for Application」ではないとは判断できるでしょう。



ただ,あまり知財高裁には意見を言わないようにしていますが,この縮小版として挙げていない「法人の発意」についての判断は,おかしいとおもいます。

「法人の発意」は,著作物に対する発意ですが,「本件システム」=プログラムと,必ずしもならないはずです。

「以上のとおり,本件システムの開発が,控訴人が在籍中の出向元である被控訴人の指示により開始され,被控訴人の完全子会社である信友及び中国塗料技研がその意向を受けて法人として本件システムの開発を発意しているのであるから,両社において当該開発業務に従事する控訴人が,その職務上作成した本件システムのプログラムの著作者は,その作成時における契約や勤務規則等の別段の定めがない限り,法人である信友又は中国塗料技研となるものと認められ(著作権法15条2項 ,)上記別段の定めについての主張立証はないのであるから,結局,本件システムのプログラムの著作者は,信友又は中国塗料技研,あるいはその双方であると認めるべきである。」

という判示だけをみれば,システム発注すれば,そのプログラムの中身を見る必要もないということになります。本件システムという結論を得るプログラムは,色々な道があるはずです。その結論を得るために,創作性があれば,そのプログラムについて,著作物性が論じられることになるはずです。

ただ,この事案

「本件システムのプログラムは,その構成内容が明らかでなく,サーバ側のプログラムと端末側のプログラムの切り分けやプログラム言語もほとんど不明であるが,IBM社のオフィスコンピュータ S/36 又は AS/400 専用に開発されたものであり,同社製のコンピュータ上で動作するデータベース管理プログラムである Query/36が用いられている。」

となっているところが,大きく結論を左右したともいえます。

ソースが明らかになっていないばかりか,職務著作性を主張した側において,自分の創作したとされるプログラムソースを示すことができなかった事例といえましょうか(判示からしかみていないので,わかりませんが)。

いずれにしても,この「法人の発意」に関する判断は,

「控訴人は,業務内容を信友及び中国塗料技研に頻繁に報告し,指示を仰いでいた。したがって,信友及び中国塗料技研には,黙示の「法人等の発意」があった。したがって,本件システムは,職務著作物であり,その著作権は信友ないし中国塗料技研にある 」

という原判決の判断を,飛び越えた判断とかんがえます。この知財高裁の判断については留保しておきます。

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Last Update: 2011-03-16 19:20:27 JST

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2011年3月3日木曜日

特許:【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月3日判決(平成22年(行ケ)第10216号審決取消請求事件))






特許:【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月3日判決(平成22年(行ケ)第10216号審決取消請求事件))





知的財産高等裁判所第2部「塩月秀平コート」


平成22(行ケ)10216 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成23年03月03日 知的財産高等裁判所

(知財高裁平成23年3月3日判決(平成22年(行ケ)第10216号審決取消請求事件))

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【容易想到性】「事実認定」


(知財高裁平成23年3月3日判決(平成22年(行ケ)第10216号審決取消請求事件))


判示・縮小版なし



第2
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事案の概要

本件は,特許出願に対する拒絶査定に係る不服の審判請求について,特許庁がした請求不成立の審決の取消訴訟である。争点は,本願発明の進歩性の有無である。



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取消事由3(相違点の判断の誤り)について

取消事由3は,本願発明と引用発明との対比において,取消事由2に示した新たな相違点が認められるのであるから,引用発明から本願発明を容易に発明することはできず,本願発明の進歩性を否定した審決の判断が誤りであると主張するものである。

しかし,本願発明と引用発明との対比において新たに相違点が認められるものでないことは,取消事由1及び2で判示したとおりであるから,本願発明の進歩性を否定した審決の判断の前提に誤りはなく,取消事由3には理由がない。

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H230307現在のコメント


容易想到性に関する事実認定判決です。

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Last Update: 2011-03-07 10:59:32 JST

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2011年2月24日木曜日

特許:【容易想到性(容易推考性)】「事実認定」:(知財高裁平成23年2月24日判決(平成22年(行ケ)第10162号審決取消請求事件))






特許:【容易想到性(容易推考性)】「事実認定」:(知財高裁平成23年2月24日判決(平成22年(行ケ)第10162号審決取消請求事件))




知的財産高等裁判所第2部「塩月秀平コート」



H230301現在のコメント


(知財高裁平成23年2月24日判決(平成22年(行ケ)第10162号審決取消請求事件))

 容易想到性判断に関する事実認定判決です。「塩月コート」は,「容易推考性」という言葉を好んで使う印象です。

 一致点認定の誤り→容易想到性の判断の誤りという流れです。



縮小版なし・判決原文(引用)


(知財高裁平成23年2月24日判決(平成22年(行ケ)第10162号審決取消請求事件))

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第2 事案の概要


本件は,被告の請求に基づいてされた原告らの特許を無効とする審決の取消訴訟であり,争点は,容易推考性の存否である。

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3 取消事由1について



(1) 原告らは,引用発明1には「急な曲面領域」は存在せず,これを境界とする中央部や周辺部も存在しないので,審決の引用発明1の認定は誤りであり,これに伴い,「急な曲面領域から周辺端面に至る領域」が本件発明1の「曲げ部」に相当するとの一致点認定も誤りである旨主張する。

しかし,上記2で認定したとおり,引用発明1の皮革片は,周辺端面に近い部分において急カーブの曲線となっており,その部分を挟んで,中心部では比較的緩やかな曲線に,周辺端面に至る領域では緩やかな曲線あるいは直線となっているのであるから,審決が引用発明1について「急な曲面領域」を認定したことに誤りはなく,「急な曲面領域から周辺端面に至る領域」が本件発明1の「曲げ部」に相当するとした一致点認定にも誤りはなく,この点に関する相違点の看過もない。

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(2) 原告らは,引用発明1の皮革片はカップ状の裾の部分しか接合しておらず,本件発明1の接合部とは異なっているので,「接合部」が設けられる点を一致点とした審決の認定に誤りがあると主張する。

上記1で認定したとおり,本件発明1は,皮革片の周縁部を折り曲げ,折り曲げ部に設けられる接合部において,隣接する皮革パネルと接着するという構成をとるものである。このように,本件発明1における「接合部」は,接着するための部位であるから,一定の領域を有する「面接触」を要するものと解される。これに対し,上記2のとおり,引用発明1は,カップ状の皮革パネルの裾部分(周辺端面)のみを接触させたものであり,接触している部分は線接触であると認めるのが自然である。

そうすると,引用発明1における皮革片の接触部は,接着するための接合部とはいえず,本件発明1における接合部に相当するということはできないから,この点を一致点とした審決の認定は誤りである。そして,「接合部」の有無は,皮革パネルの接着に関する相違点2の前提となるものであって,この点の相違も含めて相違点2についての本件発明1の構成の容易想到性を判断すべきなのに,審決はこれを怠っている。したがって,取消事由1は,理由がある。

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4 取消事由2について



(1) 上記1で認定したとおり,本件発明1の「折り曲げ部」は,縫いボールと同様の飛距離,グリップ性等を得るために,皮革パネル間に,縫いボールと同様の深くて狭い溝を形成するために採用された構成である。

これに対し,上記2で認定した内容によれば,引用発明1は,手工業的に実現さあれたボール,すなわち縫いボールに近い外観を有することを目的とするものであり,そのために,とりわけ隆起に着目し,隆起部分を有するボールとするために,皮革片を椀型(カップ状)に成形するという構成を採用したものと認められる。

このように,本件発明1と引用発明1は,貼りボールに縫いボールの特徴を取り入れようとする点では共通するものの,技術的着眼点は,本件発明1が飛距離等であるのに対し,引用発明1では外観であって,異なっている。また,貼りボールの外観を縫いボールに近付けるための手法としては,甲3の1に従来技術として記載された「縁端を装飾した皮革片を,空気袋に直接貼り付ける」手法,本件発明1のように「折り曲げ部」を設ける手法等,種々の構成が考えられるところ,引用発明1においては,上記のとおり「隆起部分」に着目した構成を採用したものであり,甲3の1の記載によっても,本件発明1のような,縫いボールと同様の深く狭い溝を形成するという思想は窺われないのであって,そのことに伴い当然のことながら,引用発明1と本件発明1とでは,採用された構成も異なっている。

(2) 本件発明1の「折り曲げ部」の構成については,曲げる角度が90度よりも小さな角度になる場合も含まれると解されるが,縫いボールと同様の溝を形成するという発明の目的や,「折り曲げ」の語意を考慮すると,単に曲げられているだけでなく,相当程度大きな角度で曲げられるべきものと解される。そうすると,仮に,引用発明1の皮革片の周縁部分に「折り曲げ部」の構成を採用した場合,「折り曲げ部」において相当程度大きな角度で曲げられることになり,それよりも内側の部分は平坦に近い状態になってしまうから,大きな隆起を形成することができなくなり,引用発明1の「隆起部分」の形成という目的に反することになる。

(3) さらに,縫いボールにおいて,「折り曲げ」は,縫うことによって必然的に生じるものであり,両者は一体不可分の構成ということができる。したがって,折り曲げ部を有する縫いボールが周知であるとしても,このうち折り曲げる構成のみに着目し,これを縫いボールから分離することが従来から知られていたとは認められず,これが容易であったということもできない。

(4) 小括

以上の点を総合すると,引用発明1において,「曲げ部」を「折り曲げ部」とすることが,当業者にとって容易に想到し得たことであるということはできない。したがって,引用発明1について,本件発明1の相違点1に係る構成とすることが容易であるとした審決は誤りであり,取消事由2には理由がある。


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判決原文(全文)




平成22(行ケ)10162 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟平成23年02月24日 知的財産高等裁判所



  • 1 -




平成23年2月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(行ケ)第10162号審決取消請求事件


口頭弁論終結日平成23年2月15日

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判 決



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主 文




特許庁が無効2009-800025号事件について平成22年1月7日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。

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事実及び理由





第1 原告らの求めた判決



主文同旨


  • 2 -



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第2 事案の概要



本件は,被告の請求に基づいてされた原告らの特許を無効とする審決の取消訴訟であり,争点は,容易推考性の存否である。

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1 特許庁における手続の経緯




原告らは,平成10年(1998年)5月22日(日本国)の優先権を主張して,平成11年5月20日,名称を「球技用ボール」とする発明について国際特許出願(PCT/JP1999/002667,日本国における出願番号は特願2000-550565号)をし,平成20年7月18日に,本件特許第4155708号として特許登録を受けた(請求項の数10)。

被告は,平成21年2月13日に,本件特許の請求項1~4,6~9に記載された発明について無効審判請求をした。特許庁は,この請求を無効2009-800025号事件として審理し,平成22年1月7日,「特許第4155708号の請求項1ないし4,6ないし9に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は平成22年1月19日に原告らに送達された。

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2 本件発明の要旨



本件特許の請求項1~4,6~9は次のとおりである。

【請求項1】

圧搾空気が封入された球形中空体の弾性チューブと,

該チューブ表面全面に形成された補強層と,

該補強層上に直接またはカバーゴム層を介して接着された複数枚の皮革パネルとを備えた球技用ボールにおいて,

前記皮革パネルは,その周縁部が前記弾性チューブ側に折り曲げられる折り曲げ部を有し,前記皮革パネルの折り曲げ部にて囲まれた前記皮革パネルの裏面に,厚さを調整する厚さ調整部材が接着せしめられ,

前記皮革パネルの折り曲げ部に設けられる接合部において,隣接する皮革パネルと接着されてなる球技用貼りボール。

【請求項2】

前記皮革パネルの周縁部が内側へ略180度折り込まれてなる請求項1記載の球技用貼りボール。

【請求項3】

前記皮革パネルの周縁部が内側へ略90度折り曲げられてなる請求項1記載の球技用貼りボール。

【請求項4】

前記皮革パネルの折り込まれた部分に,切り込みが形成されてなる請求項2記載の球技用貼りボール。

【請求項5】

前記厚さ調整部材が織布よりなる請求項1,2,3または4記載の球技用貼りボール。(請求項9が本請求項を引用しているので,ここに掲載しておく。)

【請求項6】

前記厚さ調整部材が衝撃緩衝部材よりなる請求項1,2,3または4記載の球技用貼りボール。

【請求項7】

前記厚さ調整部材が,織布と衝撃緩衝部材の積層構造からなる請求項1,2,3または4記載の球技用貼りボール。

【請求項8】

前記衝撃緩衝部材が発泡材,不織布,嵩高織物又はハニカム構造部材よりなる請求項6または7記載の球技用貼りボール。

【請求項9】

前記皮革パネルと前記厚さ調整部材の間に補強層が介在せしめられてなる請求項1,2,3,4,5,6,7または8記載の球技用貼りボール。

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3 審判における被告主張の無効理由及び提出証拠



本件発明1~4,6~9は,それぞれ,本件特許の出願前に頒布された次の文献に記載された発明及び周知技術(周知例として括弧内の文献)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に違反する。

(1) 無効理由1(本件発明1について)

ア甲3の1及び甲4の1

イ甲3の1及び周知技術(甲5~8)

(2) 無効理由2(本件発明2について)

ア甲3の1,甲4の1及び甲7

イ甲3の1,甲7及び周知技術(甲5,甲6及び甲8)

(3) 無効理由3(本件発明3について)

ア甲3の1,甲9の1及び甲4の1

イ甲3の1,甲9の1及び周知技術(甲5~8)

(4) 無効理由4(本件発明4について)

ア甲3の1,甲4の1,甲6及び甲7

イ甲3の1,甲6,甲7及び周知技術(甲5及び甲8)

(5) 無効理由5(本件発明6について)

ア甲3の1,甲4の1及び甲10

イ甲3の1,甲10及び周知技術(甲5~8)

(6) 無効理由6(本件発明7について)

ア甲3の1,甲4の1及び甲11

イ甲3の1,甲11及び周知技術(甲5~8)

(7) 無効理由7(本件発明8について)

ア甲3の1,甲4の1,甲10及び甲11

イ甲3の1,甲10,甲11及び周知技術(甲5~8)

(8) 無効理由8(本件発明9について)

ア甲3の1,甲4の1及び甲11

イ甲3の1,甲11及び周知技術(甲5~8)

(9) 提出証拠

甲3の1:仏国特許出願公開第2443850号明細書

甲4の1:独国特許出願公開第19619796号明細書

甲5:実公昭33-1619号公報

甲6:実公昭38-16729号公報

甲7:登録実用新案第55967号明細書

甲8:実願昭56-153703号(実開昭58-58098号)のマイクロフィルム

甲9の1:英国特許第1555634号明細書

甲10:実公昭30-10612号公報

甲11:実願平3-59560号(実開平5-5157号)のCD-ROM


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4 審決の理由の要点



(1) 無効理由1について

ア本件発明1と仏国特許出願公開第2443850号明細書(甲3の1)に記載された発明(引用発明1)との間には,次の一致点と相違点1,2がある。

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【一致点】圧搾空気が封入された球形中空体の弾性チューブと,該チューブ表面全面に形成された補強層と,

該補強層上に直接接着された複数枚の皮革パネルとを備えた球技用ボールにおいて,

前記皮革パネルは,その周縁部が前記弾性チューブ側に曲げられる曲げ部を有し,前記皮革パネルの曲げ部にて囲まれた前記皮革パネルの裏面に,厚さを調整する厚さ調整部材が接着せしめられ,

前記皮革パネルの曲げ部に接合部が設けられてなる球技用貼りボール。

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【相違点1】

本件発明1では,前記皮革パネルの周縁部が「折り曲げられ」たものであって,前記「曲げ部」が「折り曲げ部」であるのに対して,引用発明1では,前記皮革パネルの周縁部は「折り曲げられ」たものではなく,前記「曲げ部」は「折り曲げ部」ではない点。
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【相違点2】

本件発明1では,前記皮革パネルが前記接合部において,「隣接する皮革パネルと接着され」ているのに対して,引用発明1では,前記皮革パネルは,前記接合部において,隣接する皮革パネルと接着されていない点。

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イ相違点1について

その周縁部が内側(弾性チューブ側)に折り曲げられる折り曲げ部を有する皮革パネルからなる縫いボールは,本件特許の優先日前に周知である(以下,この技術を「周知技術1」という。)。

引用発明1の「球技用貼りボール」は,複数の切片を縫い合わせて形成された皮革製の外側ケーシングと,ケーシング内に収容される空気注入式のブラダーとによって構成される職人による縫いボールと比べて遜色のない表面を有するものであるところ,引用発明1において,その周縁部が内側に折り曲げられる折り曲げ部を有する皮革パネルからなる周知の縫いボールと比べてより遜色のない表面を有するものとするために,引用発明1の「球技用貼りボール」において,「皮革パネル」の 「周縁部」を内側に折り曲げて「折り曲げ部」を形成し,周知技術1の縫いボールの皮革パネルの周縁部のような形状にすることは,当業者が周知技術1に基づいて容易に想到することができた程度のことである。

したがって,引用発明1において,上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が周知技術1に基づいて容易になし得た程度のことである。

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ウ相違点2について

複数の皮革パネルを下層に接着して皮革パネルで球体を構成して製造する球技用ボールであって,隣接する皮革パネルの周縁部同士が接合する接合部において,隣接する皮革パネル同士も接着することは,本件特許の優先日前に周知である(以下,この技術を「周知技術2」という。)。

引用発明1の「球技用貼りボール」は,「補強層(カバー)」の表面全体を覆うように複数の「皮革パネル」を貼り付けたものであって,前記「皮革パネル」は,「曲げ部」を有し,前記「皮革パネル」の「曲げ部」に「接合部」が設けられてなるものであるから,複数の皮革パネルを下層に接着して皮革パネルで球体を構成して製造する球技用ボールであるといえ,その下層に相当する「補強層(カバー)」に複数の「皮革パネル」を貼り付ける際に,隣接する皮革パネルの周縁部同士が接合する「接合部」において隣接する皮革パネル同士も接着することは,当業者が周知技術2に基づいて容易になし得た程度のことである。

したがって,引用発明1において,上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が周知技術2に基づいて容易になし得た程度のことである。

エ本件発明1が奏する効果は,引用発明1が奏する効果,周知技術1が奏する効果及び周知技術2が奏する効果から,当業者が予測できた程度のものである。

オしたがって,本件発明1は,甲3の1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであり,無効とすべきである。

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(2) 無効理由2について

本件発明2と引用発明1との間には,上記(1)のとおりの一致点と相違点1,2があるほか,次の相違点3がある。

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【相違点3】

本件発明2では,前記皮革パネルの周縁部が内側へ略180度折り込まれてなるものであるのに対して,引用発明1ではそのようになっていない点。

相違点1,2については上記(1)のとおりである。

相違点3について,登録実用新案第55967号明細書(甲7)には,「周縁部を内側へ略180度折り曲げた折り曲げ部を有する皮革パネルからなる縫いボール」が記載されているものと認められる。

引用発明1の「球技用貼りボール」は,職人による縫いボールと比べて遜色のない表面を有するものであるところ,引用発明1の「球技用貼りボール」を具体的にどの縫いボールに比べて遜色のない表面とするかは当業者が適宜決定すべき設計上の事項であるというべきである。しかるところ,引用発明1において,甲7記載の縫いボールと比べて遜色のない表面を有するものとするために,「皮革パネル」の「周縁部」を内側へ略180度折り曲げて「折り曲げ部」を形成することは,当業者が甲7記載の事項に基づいて容易に想到することができた程度のことである。

したがって,引用発明1において,上記相違点3に係る本件発明2の構成とすることは,当業者が甲7記載の縫いボールに基づいて容易になし得た程度のことである。

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(3) 無効理由3について

本件発明3と引用発明1との間には,上記(1)のとおりの一致点と相違点1,2があるほか,次の相違点4がある。

【相違点4】

本件発明3では,前記皮革パネルの周縁部が内側へ略90度折り曲げられてなるものであるのに対して,引用発明1ではそのようになっていない点。

相違点1,2については上記(1)のとおりである。相違点4について,独国特許出願公開第19619796号明細書(甲4の1)には,「パネル2及び3の個々の要素1の周縁部を内側(空気注入式のブラダー側)へ略90度折り曲げた折り曲げ部を有する縫いボール」が記載されているものと認められる。

上記(2)と同様に,引用発明1の「球技用貼りボール」を具体的にどの縫いボールに比べて遜色のない表面とするかは当業者が適宜決定すべき設計上の事項であるというべきである。しかるところ,引用発明1において,甲4の1記載の縫いボールと比べて遜色のない表面を有するものとするために,「皮革パネル」の「周縁部」を内側へ略90度折り曲げて「折り曲げ部」を形成することは,当業者が甲4の1記載の事項に基づいて容易に想到することができた程度のことである。

したがって,引用発明1において,上記相違点4に係る本件発明3の構成とすることは,当業者が甲4の1記載の縫いボールに基づいて容易になし得た程度のことである。

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(4) 無効理由4について

本件発明4と引用発明1との間には,上記(1)のとおりの一致点と相違点1,2,上記(2)のとおりの相違点3があるほか,次の相違点5がある。

【相違点5】
本件発明4では,前記皮革パネルの折り込まれた部分に,切り込みが形成されてなるものであるのに対して,引用発明1ではそのようになっていない点。

相違点1,2については上記(1)のとおりであり,相違点3については上記(2)のとおりである。

相違点5について,外表面が凸で内側になる裏面が凹である球等の形状を構成すある素材の周縁部を内側へ略180度折り込む際に折り込む部分に切り込みを形成することは本件特許の優先日前において常套手段である。

引用発明1の「球技用貼りボール」において,「皮革パネル」の「周縁部」を内側へ略180度折り曲げて「折り曲げ部」を形成し,登録実用新案第55967号明細書(甲7)記載の縫いボールの皮革パネルの周縁部のような形状にする際に,上記の常套手段を採用し,前記皮革パネルの折り込まれる周縁部に切り込みを形成して,上記相違点5に係る本件発明4の構成とすることは,当業者が常套手段に基づいて容易になし得た程度のことである。


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(5) 無効理由5について

本件発明6と引用発明1とを対比すると,上記(1)のとおりの一致点に加えて,

「前記厚さ調整部材が衝撃緩衝部材よりなるものである」点でも一致し,上記(1)のとおりの相違点1,2が相違している。

そして,相違点1,2については上記(1)のとおりである。

(6) 無効理由6について

本件発明7と引用発明1とを対比すると,上記(1)のとおりの一致点に加えて,「前記厚さ調整部材が衝撃緩衝部材よりなるものである」点でも一致し,上記(1)のとおりの相違点1及び2に加えて,次の相違点6の点でも相違している。

【相違点6】

本件発明7では,前記厚さ調整部材が,織布と衝撃緩衝部材の積層構造からなるものであるのに対して,引用発明1では,前記厚さ調整部材が,衝撃緩衝部材を有してはいるが,織布は有していないから,織布と衝撃緩衝部材の積層構造とはなっていない点。

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相違点1,2については上記(1)のとおりである。



相違点6について,実願平3-59560号(実開平5-5157号)のCDROM(甲11)には,「発泡層を皮革パネルのバッキング材料として使用したサッカーボールの皮革パネルにおいて,表皮層及び不織布が破れた場合,その下の層である発泡層が機械的に極めて弱いために,この破れが簡単に拡大していき,ボールの寿命を短くしてしまうという問題を解決するために,外側から表皮層,不織布層,布層,発泡層,布層の積層構造よりなるものとし,表皮層及び不織布層が破れたとしても,その下層の布層が強靱であるために,これより下層に破れが拡がることはないサッカーボールの皮革パネル。」の発明(引用発明2)が記載されているものと認められる。

引用発明1の「皮革パネル」は,ブラダー側が凹になるように曲げられ,発泡PVC等からなる柔軟で弾性的な素材で満たされた一種のカップを形成するような形状に形成され,そのくぼんだ面である裏面に前記素材が完全に接着しているものであるから,「発泡層を皮革パネルのバッキング材料として使用した球技用ボールの皮革パネル」であるといえ,その「発泡PVC等からなる柔軟で弾性的な素材」が引用発明2の「発泡層」に相当する。

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そうすると,引用発明1の「皮革パネル」も,皮革パネルが破れた場合,その下の層である「発泡層(発泡PVC等からなる柔軟で弾性的な素材)」が機械的に極めて弱く,この破れが簡単に拡大していき,ボールの寿命を短くしてしまうという問題を内在していることは,当業者が引用発明2に基づいて容易に想到することができるものであり,この問題を解決するために,引用発明1において,皮革パネルと発泡層との間に,強靱であるために下層に破れが拡がることはない布層を介在させた積層構造とすることは,当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。ここで,「布層」及び「発泡層」が,それぞれ,本件発明7の「織布」及び「衝撃緩衝部材」に相当することは明らかである。

したがって,引用発明1において,皮革パネルと厚さ調整部材である衝撃緩衝部材との間に「織布」を介在させて,前記厚さ調整部材が,織布と衝撃緩衝部材の積層構造からなるものとすること,すなわち上記相違点6に係る本件発明7の構成とすることは,当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。

(7) 無効理由7について

本件発明8と引用発明1とを対比すると,上記(1)のとおりの一致点に加えて,「前記厚さ調整部材が衝撃緩衝部材よりなるものであり,かつ該衝撃緩衝部材が発泡材よりなる」点でも一致し,上記(1)のとおりの相違点1,2の点で相違している。

そして,相違点1,2については上記(1)のとおりである。

(8) 無効理由8について

本件発明9と引用発明1との間には,上記(1)のとおりの一致点と相違点1,2があるほか,次の相違点7がある。

【相違点7】

本件発明9では,前記皮革パネルと前記厚さ調整部材の間に補強層が介在せしめられてなるものであるのに対して,引用発明1では,前記「厚さ調整部材(発泡PVC等からなる柔軟で弾性的な素材11)」が,皮革パネルの裏面に接着せしめられているから,前記皮革パネルと前記厚さ調整部材の間には何も介在せしめられていない点。

相違点1,2については上記(1)のとおりである。

相違点7について,実願平3-59560号(実開平5-5157号)のCDROM(甲11)には,上記(6)の引用発明2が記載されているところ,引用発明2の「強靱である布層」は,「これより下層に破れが拡がることはない」ようにするための層であるから,「補強層」であるといえる。

引用発明1の「皮革パネル」も,皮革パネルが破れた場合,その下の層である「発泡層(発泡PVC等からなる柔軟で弾性的な素材)」が機械的に極めて弱く,この破れが簡単に拡大していき,ボールの寿命を短くしてしまうという問題を内在していることは,当業者が引用発明2に基づいて容易に想到することができるものであり,この問題を解決するために,引用発明1において,皮革パネルと発泡層との間に,強靱であるために下層に破れが拡がることはない布層を介在させた積層構造とすることは,当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。

ここで,「布層」及び「発泡層」が,それぞれ,本件発明9の「補強層」及び「厚さ調整部材」に相当するから,引用発明1において,皮革パネルと厚さ調整部材との間に「補強層」を介在させること,すなわち上記相違点7に係る本件発明9の構成とすることは,当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。

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第3 原告ら主張の審決取消事由


1 取消事由1(引用発明1の認定の誤り,これに伴う本件発明1との一致点認
定の誤り,相違点の看過)
(1) 審決では,引用発明1の皮革片は「中央部分では緩やかな曲面であり,周
辺端面に近い領域では急な曲面であり,この急な曲面領域から周辺端面に至る領域
では緩やかな曲面あるいは平面であって,ブラダー側が凹になるように曲げられ」
ると認定した上で,その「急な曲面領域」が本件発明1の「曲げ」の箇所に相当し,
引用発明1の「急な曲面領域から周辺端面に至る領域」が本件発明1の「曲げ部」
に相当すると認定している。


  • 13 -


しかし,仏国特許出願公開第2443850号明細書(甲3の1)には,皮革片
の形状について「カップ形状」と記載されているだけで,皮革片が複数の領域に分
けられる旨の記載はなく,「(周辺端面に近い)急な曲面領域」が存する説明もな
い。甲3の1のFig.4においても,皮革片は全体として丸みを帯びた円弧状の
曲面形状を有することが示されているだけである。
また,引用発明1は,貼りボールにおいてカップ状の浮き出し部を設けることを
目的としている。この目的を達成すべく,皮革片をカップ形状に成形し,さらにそ
のカップの高さを高く維持するために,皮革片をカバーに接着させる際に,金型で
直接カップを押し付ける方法(カップの頂上近辺が強く押圧される方法)ではなく,
わざわざ金型内に流体層を設け,流体層を介して皮革片を押し付ける方法(カップ
全体が等しく押圧される方法)を採っている。引用発明1において,急な曲面領域
を有すると仮定すると,浮き出し部が低くなるので,引用発明1の目的に鑑みても,
皮革片の周辺端面に近い部分に「急な曲面領域」を設けることはあり得ない。
以上のとおり,甲3の1には,「周辺端面に近い急な曲面領域」は記載されてお
らず,これを境界とする「中央部」と「周辺部」も記載されていないので,審決に
おける引用発明1の認定は誤っている。
これに伴い,引用発明1の「急な曲面領域」が本件発明1の「曲げ」の箇所に相
当し,引用発明1の「急な曲面領域から周辺端面に至る領域」が本件発明1の「曲
げ部」に相当するとの一致点認定についても誤りであり,この点を相違点として看
過した誤りがある。そもそも,本件発明1の構成は「折り曲げ部」であり,本件発
明1が採用しておらず,かつ,技術的意義が不可解な「曲げ部」なる概念を作出し
て一致点とすることはできない。
(2) 審決は,引用発明1の「皮革パネル」は,「皮革パネルの曲げ部」に「接
合部」を有していると認定する(19頁5行~6行)。
しかし,本件発明1の「接合部」は折り曲げ部19に存し,折り曲げ部に存する
接合部で隣接する皮革パネルの折り曲げ部と接着することによって,「幅が小さく」


  • 14 -


かつ「深い」溝が形成できる。これに対し,引用発明1は皮革片8がカップ状であ
り,当該皮革片8が隙間なく球面のカバー10を覆うように貼り付けられているだ
けであるから,隣接するカップ状の皮革片同士は,外に広がるカップ形状の裾の部
分(底面と周縁部の境界線,周辺端面)で接触するだけである。したがって,引用
発明1の接合部は,カップ形状の裾(周辺端面)の部分のみに存する。
このように,本件発明1の「接合部」と引用発明1「接合部」は皮革パネル(皮
革片)における位置が異なり,本件発明1の接合部は,皮革片の周縁部に存在する
ことを前提とするから,カップ形状の裾の部分のみに接合部を有する引用発明1の
接合部は,本件発明1の接合部とは全く異なるものである。
したがって,引用発明1が接合部を有しており,これが本件発明1の接合部と同
一であるとする審決の認定は誤りである。
なお,引用発明1は,カップ状の浮き出し部を設けるという課題を解決するため
に,柔軟で弾性的な素材で満たされた皮革パネルをカップ形状に成形し,このよう
に成形された皮革パネルをカバーに接着する際に,流体層を用いて押圧することに
よって,当該カップ形状を変形させずに浮き出し部を有する貼りボールを提供する
発明である。したがって,互いに隣接する皮革パネルの周縁部(ただし,周辺端面
以外の部分)が,金型等によって上から押圧されるなどして変形し,その周縁部同
士が接合することはない。
2 取消事由2(相違点1に関する判断の誤り)
(1) 審決は,仏国特許出願公開第2443850号明細書(甲3の1)の「発
明の目的の一つは,職人によるボールのような外見を有し,膨張収縮が可能で,保
存および出荷が容易であるボールを工業的に製造することである。」という記載に
基づいて,貼りボールにおいて,縫いボールの皮革パネルのような形状にすること
は容易であると判断している。
(2) しかし,甲3の1に記載の引用発明1は,皮革パネルをカップ状に成形し,
このように成形された皮革パネルをカバーに接着する際に,当該カップ形状が変形


  • 15 -


しないように流体層を用いることによって,カップ状の浮き出し部を有する貼りボ
ールを提供する発明である。したがって,甲3の1に記載された職人によるボール
のような外見とは,カップ状の浮き出し部を有する縫いボールのような外見の意味
であり,それ以外の外見を意味していない。このように,引用発明1の具体的な内
容を度外視して,周知技術との組合せを容易とすることは不当である。
(3) また,引用発明1は貼りボールについての発明であり,これに,縫いボー
ルの構成を適用することには,阻害事由がある。
ア縫いボールは,通常,職人の手縫いによって製造されるボールであり,
機械的な大量生産が不可能なボールである。これに対し,貼りボールは,製造の機
械化により大量生産が可能なボールである。このように,縫いボールと貼りボール
とは構造だけでなく生産方法も互いに全く異なる。したがって,職人による縫製作
業で形成できる縫いボールの構成の一部を,何らの技術的裏付けもないまま,甲3
の1に記載された機械的な大量生産用の貼りボールの発明に適用することなどでき
ないというべきであり,引用発明1に周知技術1を適用することには阻害事由があ
るというべきである。
イ縫いボールでは,隣接する皮革パネルが縫い合わせられるから,皮革パ
ネルの周縁部は縫い合わせるために折り曲げられる必要性がある。これに対し,「貼
りボール」の皮革パネルは,ボールの球状を作り出すボール基体に張り付けられる
だけであって,そもそも皮革パネルを折り曲げる必要性が全くない。このように,
互いに縫い合わせるために皮革パネルの周縁部が折り曲げられる「縫いボール」の
発明における,「皮革パネルが折り曲げられ」かつ「皮革パネル同士が縫合されて
いる」という一体不可分の構成から,「皮革パネルが折り曲げられ」る構成だけを
切り出して,皮革パネルを折り曲げる必要のない甲3の1記載の「貼りボール」の
発明に適用することは当業者が容易に想到できることではない。
(4) 引用発明1の目的であるカップ状の浮き出し部を有する外見を得るため
には,皮革片は周縁部から中央部に向かって急な曲面領域を有さずに立ち上がって


  • 16 -


いる形状が有利であり,具体的には「おわん状の形状」が有利である。急な曲面領
域を有するカップ形状は,急な曲面領域を有さないカップ形状に比べてカップ形状
による浮き出し部が低くなってしまうので,引用発明1において,浮き出し部が低
くなる要因となる折り曲げ部を設けた皮革片を用いようと動機付けられることはな
い。
以上のとおり,相違点1に関する審決の判断は誤りである。
(5) 被告の主張に対する反論
被告は,当業者であれば,貼りボールの構成を縫いボールに近付けることを自然
と考慮し,その場合に,溝の形状に着目するのもごく自然であると主張する。しか
し,先行文献でもない本件明細書上の記載をもって,本件発明における「貼りボー
ルの品質を維持しつつ,縫いボールの飛距離,グリップ性,ボール,コントロール
性を併せもつボールを実現する」という目的が公知であったなどということはでき
ないし,被告が援用する実願昭58-76649号(実開昭60-25648号)
のマイクロフィルム(甲12)には,何ら縫いボールに関する記述はなく,甲12
記載の発明の発明者が貼りボールを縫いボールの性能に近付けることを課題として
いたかどうかそもそも不明である。さらに,上記(3)で主張したように縫いボールと
貼りボールとで生産方法が大きく異なることからすると,当業者が双方のボールに
関する知識を有しているからといって,これを適用することが自然であるとはいえ
ない。また,仮に,貼りボールを縫いボールの性能に近付けることを課題として認
識した当業者がいたとしても,その近付け方は千差万別であると考えられ,当業者
が「溝の形状」に着目することがごく自然であるなどと結論付けることはできない。
このことは,引用発明1の発明者が,カップ状の皮革片を用いることにより貼りボ
ールの外見を縫いボールに近付けようとしたことからも明らかである。
3 取消事由3(相違点2に関する判断の誤り)
(1) 審決は,隣接する皮革パネルの周縁部同士が接合する「接合部」において
隣接する皮革パネル同士も接着することは,当業者が,実公昭33-1619号公


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報(甲5)や実公昭38-16729号公報(甲6)に記載の周知技術2に基づい
て容易になし得た程度のことであると判断している(23頁11行~31行)。
(2) しかし,甲5記載の発明は,バレーボールを被包する皮革片の裏面に接着
剤を塗布することの欠点を解消すべく,皮革片の周縁部のみに接着剤を塗布する発
明である。
他方,引用発明1の皮革片は,ブラダー1のカバー10の表面全体を覆うように
貼り付けられ,カバー10には,接着剤を塗布するか,あるいは加熱又は冷却する
ことによって皮革片8を接合することの出来る材料をあらかじめ塗布しておくこと
が想定されている。
このように,引用発明1では,皮革片の裏面に接着剤を塗布するのに対し,甲5
記載の発明では,皮革片の裏面に接着剤を塗布することにより生じる問題点を解消
するために,皮革片の周縁部のみに接着剤を塗布しているのであって,「皮革パネ
ル」を貼り付ける際に,相矛盾する方法を採用しているのであるから,当業者が,
両発明を組み合わせようと想到することはない。
(3) 甲6記載のボールは,皮革素子の連接部が凸凹構造を有し,この凸凹が互
いに組み合わされて接合する特殊な構造を有する発明であるから,このような特殊
な構造を有する発明を引用発明1と組み合わせることは容易に想到し得ない。また,
甲6記載の発明は,皮革素子の連接部の凸凹によって互いに組み合わされるという
特殊な構造において皮革素子間に接着剤を用いて接着する発明であるから,この文
献に基づいて,周知技術として,「隣接する皮革パネルの周縁部同士が接合する「接
合部」において隣接する皮革パネル同士を接着するという技術」を認定することは
できない。
(4) 引用発明1では,金型の内部に流体層を設けることによって,カップ形状
全体が流体層で一律に押圧されるから,皮革片の周縁部は流体層によって内側(皮
革片が潰される方向)に押圧される。そのように皮革片が内側に押圧されると,皮
革片の間が広がるから,そもそも,引用発明1に皮革片同士を接着する技術を適用


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することには阻害事由があるというべきである。
(5) 引用発明1においては,皮革片のカップ形状の裾が接合しているだけであ
るから,これを一定の領域で接触するように押し付けて,接着剤を用いることまで
想到することは容易ではない。
(6) したがって,相違点2に関する審決の判断は誤りである。
4 取消事由4(本件発明1の効果についての判断の誤り)
(1) 本件発明1は,皮革パネル間の接合部を接着させるとともに縫いボールと
同様の「幅が小さく」かつ「深い」溝を形成することによって,「貼りボールの品
質(重量,大きさ,真球性,耐久性,形状維持性,経時変化に対する強度向上)を
維持しつつ,縫いボールの飛距離,グリップ性,ボールコントロール性を併せ持つ
ボールを実現するものである。
これに対し,引用発明1は,カップ状の浮き出し部を有する外見を得ることを目
的とした発明であり,甲3の1のFig.6からも明らかなように,皮革パネル間
の周縁部(裾以外の部分)同士は接合されておらず,また,「幅が小さく」かつ「深
い」溝を形成するものでないため,上記の効果を有しないことが明らかである。
また,上記2,3で主張したように,引用発明1に周知技術1及び2を適用する
ことには阻害事由があるから,引用発明1に周知技術2の効果を適用することもで
きない。さらに,周知技術2については,審決が挙げる文献から周知技術2を認定
すること自体が誤りである。
したがって,本件発明1の効果に関する審決の認定は誤りである。
(2) 本件発明1は,職人による縫製作業を経て製造される「縫いボール」での
み形成できた皮革パネル間の「幅が小さく」かつ「深い」溝を,工業的に大量生産
できる「貼りボール」で実現した発明である。
このような本件発明1の優れた効果は世界的に極めて高く評価され,世界最高峰
のサッカー大会であるワールドカップの公式試合球として採用された。
以上のとおり,本件発明1が甲3の1等に記載された発明から予測できた程度の


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ものであるという審決の認定は,誤っている。
5 取消事由5(本件発明2についての判断の誤り)
(1) 相違点1,2についての審決の判断が誤っていることは,上記2,3のと
おりである。
(2) 相違点3について
登録実用新案第55967号明細書(甲7)記載の発明は,縫いボールに関する
発明であって,皮革片が180度に折り曲げられているものである。
取消事由2で主張したのと同様に,縫いボールでは,縫合と折り曲げとは一体不
可分の関係にある。よって,甲7記載の縫いボールの発明から「皮革片が180度
折り曲げられること」だけを切り出して,貼りボールの発明である引用発明1に適
用することはできない。また,甲7記載の職人による縫製作業で製造される縫いボ
ールの構成を,甲3の1に記載された機械的な大量生産用の貼りボールの発明に適
用することには阻害事由がある。さらに,皮革片が180度折り曲げられて用いら
れることは,引用発明1の目的(カップ状の浮き出し部)の達成の障害となるから,
浮き出し部が低くなる要因となる180度折り曲げられた皮革片を用いようとする
動機付けはない。
以上のとおりであるから,審決の相違点3に関する判断は誤っている。
6 取消事由6(本件発明3についての判断の誤り)
(1) 相違点1,2についての審決の判断が誤っていることは,上記2,3のと
おりである。
(2) 相違点4については,上記5(2)で主張したのと同様の理由から,審決の
判断は誤りである。
7 取消事由7(本件発明4についての判断の誤り)
(1) 相違点1~3についての審決の判断が誤っていることは,上記2,3,5
のとおりである。
(2) 相違点5について


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ア引用発明1において,皮革片を折り曲げることは全く想定されていない。
したがって,引用発明1において皮革片が内側へ略180度折り曲げて「折り曲げ
部」を形成することを前提とした,皮革パネルの折り込まれる周縁部に切り込みを
形成することは容易とする審決の判断は,その前提が誤っているから,その判断も
誤っている。
イ審決において,切り込み部分の開示があるとしている実公昭38-16
729号公報(甲6)及び180度の折り曲げ部が形成されているとする登録実用
新案第55967号明細書(甲7)はいずれも縫いボールの発明である。
縫いボールと貼りボールとは構造だけでなく生産方法も互いに全く異なる。した
がって,甲6と甲7における職人による縫製作業で形成できる縫いボールの構成を,
甲3の1に記載された機械的な大量生産用の貼りボールの発明に適用することには
阻害事由がある。
以上のとおりであるから,審決の相違点5に関する判断は誤っている。
8 取消事由8(本件発明6についての判断の誤り)
相違点1,2についての審決の判断が誤っていることは,上記2,3のとおりで
ある。したがって,本件発明6に関する審決の判断は誤りである。
9 取消事由9(本件発明7についての判断の誤り)
(1) 相違点1,2についての審決の判断が誤っていることは,上記2,3のと
おりである。
(2) 相違点6について
審決は,相違点6に係る本件発明7の構成とすることは,当業者が実願平3-5
9560号(実開平5-5157号)のCD-ROM(甲11)に記載された引用
発明2に基づいて容易になし得たと判断する。
しかし,引用発明2は,縫いボールの発明である。縫いボールと貼りボールとは
構造だけでなく生産方法も互いに全く異なる。したがって,甲11に記載された職
人による縫製作業で形成できる縫いボールの構成の一部を,甲3の1に記載された


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機械的な大量生産用の貼りボールの発明に適用することには阻害事由がある。
以上のとおりであるから,審決の相違点6に関する判断は誤っている。
10 取消事由10(本件発明8についての判断の誤り)
相違点1,2についての審決の判断が誤っていることは,上記2,3のとおりで
ある。したがって,本件発明8に関する審決の判断は誤りである。
11 取消事由11(本件発明9についての判断の誤り)
(1) 相違点1,2についての審決の判断が誤っていることは,上記2,3のと
おりである。
(2) 相違点7については,取消事由9(2)で主張したのと同様の理由から,審
決の判断は誤りである。

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第4 被告の反論


1 取消事由1に対し
(1)ア甲3の1のFig.4を見れば,引用発明1の皮革片が,「中央部」と
「周辺部」に区別される形状であることは明らかであり,両者の境界が「急な曲面
領域」となっていることにも疑いはない。
イ原告らは,引用発明1がカップ状の浮き出し部を設けることを目的とし
ており,急な曲面領域を有するカップ形状は,急な曲面領域を有しないカップ形状
に比べて浮き出し部が低くなってしまうので,引用発明1の目的に鑑みれば,「急
な曲面領域」が設けられることはあり得ないと主張している。
しかしながら,引用発明1の目的は,職人によるボール(すなわち,縫いボール)
のような外観を有するボールであって,保存及び出荷が容易なボールを工業的に製
造できるようにすることであり,カップ状に高く盛り上がった浮き出し部を設ける
ことを解決課題とするものではない。一般に,縫いボールは,表側同士を付け合わ
せた状態で縫い合わされた皮革片を裏返す製法を採用していることから,皮革片の
周辺部が裏側に折り曲げられた構成となっているので,皮革片の周辺部に急な落ち


  • 22 -


込みが必然的に存在する(溝が形成される)。したがって,「職人によるボールの
ような外見」とは,皮革片の周辺部に急な落ち込みが存在するような外見を意味し
ているのであって,カップ状に高く盛り上がった浮き出し部を有するという外見を
意味するのではない。「カップ状」という表現は,柔軟で弾性を有する素材を充填
できるよう内側に凹部を有する形状にすることを意図したものにすぎない。
また,皮革片が急な曲面領域を有している場合には,周辺部の立ち上がり角度が
急になるだけであって,中央部の盛り上がり形状が変わるものではない。
ウ原告らは,「折り曲げ」と「曲げ」が異なる旨主張する。
しかし,本件発明1の構成が「折り曲げ」であるとしても,「折り曲げる」とは
「折って曲げる」ことであるので,本件発明1の皮革パネルと甲3の1に記載され
た皮革片とで,「曲げる」ことが一致する点に変わりはなく,審決の認定に誤りは
ない。
(2) 原告らは,引用発明1の皮革片の裾のみが接触する態様は接合部に当たら
ないと主張する。
しかし,本件発明1の構成によれば,接合部は,①折り曲げ部の少なくとも一部
であり,②折り曲げ部内のどの位置に設けられるかについて限定されておらず,③
折り曲げ部の折り曲げ角度が略90度に限定されないため,折り曲げ部の少なくと
も一部において隣接パネルと接触すればよいから,接合部が裾の部分のみに設けら
れる態様も含む。
なお,甲3の1のFig.6によれば,皮革片8は,その周縁部が隣の皮革片8
の周縁部に接触するように配設されている。また,甲3の1では,皮革片8は「互
いに突き当てられるように置かれ」とされている(被告作成の訳文である甲3の2
参照)。さらに,ブラダーに空気を入れるとボール全体が膨張するため,皮革片間
の隙間が広がって補強層(又はカバーゴム層)が見えやすくなる「貼り目開き」と
いう品質不良があり,これを避けるため,皮革片の大きさは金型内面のサイズと比
べて大きく設計されるのが,当業者にとっては周知の技術である。したがって,引


  • 23 -


用発明1の皮革片に「接合部」は存在する。
2 取消事由2に対し
(1) 上記1(1)イで主張したとおり,引用発明1の目的である「職人によるボ
ールのような外見」とは,皮革片の周辺部に急な落ち込みが存在するような外見を
意味しているのであって,カップ状の浮き出し部を有するという外見を意味するの
ではない。
(2) 原告らは,貼りボールの発明である引用発明1に縫いボールの構成を適用
することに阻害事由が存在すると主張している。
しかし,本件発明1の目的は,「貼りボールの品質を維持しつつ,縫いボールの
飛距離,グリップ性,ボールコントロール性を併せもつボールを実現する」ことで
ある。このように,縫いボールと同等の性能を有する貼りボールを開発することを
課題とした当業者であれば,貼りボールの構成を縫いボールの構成に近付けること
を自然と考慮する。また,実願昭58-76649号(実開昭60-25648号)
のマイクロフィルム(甲12)の「従来技術」以下の記載を参酌すると,皮革片の
接合部に形成された凹溝が,ボールの飛距離向上,掴みやすさ等の感触性の改善に
必要なものであることが従来から知られていたことが窺われる。さらに,本件特許
の発明者も,縫いボールに関する特許出願をしており,当業者は,縫いボールと貼
りボールの双方に関する知識を有している。したがって,縫いボールの性能に近付
けることを課題とした当業者であれば,貼りボール及び縫いボールの溝の形状に着
目することはごく自然のことである。したがって,折り曲げと縫合が一体不可分と
しても,折り曲げの構成を切り出すことは自然である。
(3) 引用発明1の目的とされる「職人によるボールのような外見」とは,皮革
片の周辺部に急な落ち込みが存在するような外見を意味しているのであって,カッ
プ状に高く盛り上がった浮き出し部を有するという外見を意味するのではない。し
たがって,原告ら主張の動機付けの問題はない。
3 取消事由3に対し


  • 24 -


本件特許優先日前において,皮革パネル間の接合部からの浸水を低減するという
課題は,独国特許出願公開第19619796号明細書(甲4の1)及び登録実用
新案第55967号明細書(甲7)に示されるように周知であり,また,浸水を防
止してボールの重量増加を抑制するという課題は,甲4の1及び英国特許第155
5634号明細書(甲9の1)に示されるように周知である。したがって,皮革パ
ネル同士の接合部を接着するという実公昭33-1619号公報(甲5),実公昭
38-16729号公報(甲6)の開示に基づいて,引用発明1の皮革パネル同士
を接着することは容易である。
また,原告らは,皮革片が流体層に押圧されることによって皮革片間が広がるこ
とを理由として,引用発明1に皮革片同士を接着する技術を適用することには阻害
事由があると主張する。
しかしながら,貼りボールにおいて,皮革パネルの周縁部において隣接パネルと
の接合部が無いものはあり得ないのであって,仮に,皮革片が流体層に押圧された
ときに皮革片の急な曲面領域間が広がるように変形することがあったとしても,各
皮革片の周縁部には,隣の皮革片と接触した部位(例えばブラダー側の部位)が必
ずあるため,その部分が接着されれば十分である。したがって,皮革片が流体層に
押圧されることによって皮革片間が広がる部分が存在するとしても,そのことが阻
害事由になるものではない。
4 取消事由4に対し
(1) 上記1で主張したとおり,引用発明1では,皮革片間の周縁部の一部同士
が接合しており,また,引用発明1は,カップ状の浮き出し部を有する外見を得る
ことを目的としたものではなく,職人によるボール(すなわち,縫いボール)のよ
うな外観を有するボールを提供することを目的としているので,縫いボールと同様
の「幅が小さく」かつ「深い」溝を形成するものである。
(2) ワールドカップの公式試合球が仮に本件明細書の図7に示された貼りボ
ールだとしても,それは,皮革パネルの周縁部が90度に折り曲げられ(本件発明


  • 25 -


3),かつ厚さ調整部材が一様な厚みである,というように,溝の形状に影響を与
える要素について,本件発明1の構成をさらに限定した発明にすぎない。したがっ
て,本件発明1の貼りボールが世界的に高く評価されているとの原告らの主張には
疑問が残る。
5 取消事由5に対し(相違点3について)
上記2(2)で主張したとおり,本件発明の目的は,縫いボールと同等の性能を有す
る貼りボールを開発することであるため,このような目的を持った当業者であれば,
縫いボールにおいて「皮革片が折り曲げられること」と「皮革片同士が縫い合わさ
れること」が一体不可分の関係にあるとしても,「皮革パネルが折り曲げられ」た
構成を切り出して,「貼りボール」の発明である引用発明1に適用することは,ご
く自然に着想する。
また,引用発明1の目的は,職人によるボール(すなわち,縫いボール)のよう
な外観を有するボールであって,保存及び出荷が容易なボールを工業的に製造でき
るようにすることであり,高く盛り上がったカップ状の浮き出し部を設けることで
はない。「職人によるボールようの外見」とは,周辺部において急な落ち込みが存
在する外見を意味するのであって,具体的にどの縫いボールと比べて遜色のない表
面とするかは当業者が適宜決定すべき設計上の事項である。
6 取消事由6に対し
相違点4については,上記5で主張したのと同様の理由から,審決に誤りはない。
7 取消事由7に対し
原告らは,縫いボールの構成を貼りボールに適用することには阻害事由があると
主張する。
しかし,本件発明の目的は,縫いボールと同等の性能を有する貼りボールを開発
することであり,このような目的を持った当業者であれば,縫いボールの構成を貼
りボールの発明に適用することを自然に着想する。
8 取消事由9に対し


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上記7で主張したのと同様の理由から,実願平3-59560号(実開平5-5
157号)のCD-ROM(甲11)に記載された発明の構成を引用発明1に適用
することは,自然に着想する。

9 取消事由11に対し

上記7で主張したのと同様の理由から,甲11に記載された発明の構成を引用発明1に適用することは,自然に着想する。

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第5 当裁判所の判断



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1 本件発明1について



本件明細書(甲23)によれば,本件発明1は,次のような発明であると認められる。

本件発明1は,サッカーボール等の球技用ボールに関するものである(段落【0001】)。

従来,球技用ボールには,貼りボールと縫いボールの2種類があり,貼りボールは,ゴムチューブ等からなる中空体に皮革パネルを接着することにより製造されるため,製造が機械化できて安価であり,また真球性等に優れている一方,パネル接合部の溝の幅が広く(通常約8mm),かつ浅い(通常約1mm)ために,空気抵抗が減少せず,飛距離が伸びない,グリップ性に劣り掴みにくいという問題がある(段落【0002】~【0004】)。

これに対して縫いボールは,皮革パネルの端縁同士を内側に折り込んで,糸で縫い合わせて球状とした表皮層内に,チューブを収納したものであり,皮革パネルが内側へ折り込まれるので,この部分に形成される溝の幅は小さく(約2.5mm),かつ深い(約2mm)ため,空気抵抗が小さくなり,飛距離が大きくなり,またグリップ性等に優れるが,手縫いに頼らざるを得ず,生産性が悪く,品質も不安定で真球性にバラツキを生じやすい等の問題がある(段落【0005】,【0006】)。本件発明1の目的は,貼りボール構造における空力特性等を改善することであり,

皮革パネルの接合部に縫いボールと同様の溝を形成することにより,真球性等の貼りボールの品質を維持しつつ,縫いボールの飛距離,グリップ性等を併せもつボールを実現するものである(段落【0009】)
そのために,本件発明1のボールは,貼りボール構造において,皮革パネルの周a
縁部が内側へ折り込まれるとともに,折り込まれた部分にて囲まれた皮革パネルの裏面に,折り込みにより生じる段差を解消する厚さ調整部材が接着されてなる構成とされている。これにより,隣接する皮革パネルの接合部に縫いボールと同じ形状の溝ができることで,空気抵抗を減じ,グリップ性を向上させるとともに,厚さ調整部材の存在により,皮革パネル裏面は平坦面となり,折り込みにより生じる段差が皮革パネル表面に現れず滑らかなものとなる(段落【0010】)。また,折り曲げ部に設けられる接合部において,隣接する皮革パネルと接着されてなる構成とすることで,皮革パネルの接合部からの水分の浸入を防止し,かつ,皮革パネルの剥離を防止することで,耐久性を向上させることができる(段落【0013】)。さらに,基本的に貼りボールであるから,真球性等において貼りボールと同等の品質が維持され,機械的な生産が可能である等の利点を有するものである(段落【0046】)。

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2 引用発明1について



甲3の1(訳文として被告作成の甲3の2と,原告ら作成の甲20が提出されており,ここでは,基本的に甲3の2に沿って認定した。)によれば,引用発明1は,次のような発明であると認められる。引用発明1は,サッカー等に用いるボールに関するものである(甲3の2の訳文2頁2行~3行)。

このようなボール(縫いボール)は,一般に,縫合された外側の皮革片と,その中に収容された膨張可能な空気袋からなるが,手工業的に手作業で製造されるため,高価である。そこで,縫い目に似せた隆起部分(ただし,甲20の訳文では「縫いボールのものに近い浮き出し部」となっている。)を付与しようとして,縁端が装飾された皮革片を空気袋の上に直接接着することで,工業的にボールを製造することが考案された。しかし,そのようなボールは,皮革片がはがれる危険性を回避するために,膨張不可能な空気袋を製造する必要があり,また,その外面には,縫合されたボールと比べて低い隆起しか有しないという問題があった(甲3の2の訳文2頁4行~13行)。

そこで,引用発明1のボールは,手工業的に実現されたボール(縫いボール)の外観を有することを目的の一つとするものであって,膨張可能な空気袋と,空気袋の表面に固着された皮革片からなる外被材を備えるタイプのものであり,皮革片は,空気袋の側を向くように定められた面において椀部を形成するように構成され,この椀部に,柔軟で弾性を有する材料が詰め込まれることを特徴としている(甲3の2の訳文2頁14行~19行)。

皮革片8は,柔軟で弾性を有する材料11で充填される一種の椀部9を形成するように構成され,各皮革片8は,空気袋1の被覆材10の全表面を覆い尽くすように,互いに突き当てられるように置かれ,成形型12から抜き出されたボールは,手工業的に実現されたボール(縫いボール)に極めて類似した表面を呈する(甲3の2の訳文3頁10行~11行,14行~15行,25行~27行)。

そして,甲3の1のFig.4には,皮革片8の椀部9がカップの形状をしており,皮革片8の中心部では比較的緩やかな曲線であり,周辺端面に近い領域ではより急カーブの曲線で,この急カーブの曲線となっている領域から周辺端面に至る領域では緩やかな曲線あるいは直線であって,空気袋1側が凹になるように曲がっている断面形状となっている様子が描かれている。また,Fig.6には,カップ形状の皮革片8が互いに隣り合って並べられ,周辺端面(裾の部分)のみが接している様子が描かれている。

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3 取消事由1について



(1) 原告らは,引用発明1には「急な曲面領域」は存在せず,これを境界とする中央部や周辺部も存在しないので,審決の引用発明1の認定は誤りであり,これに伴い,「急な曲面領域から周辺端面に至る領域」が本件発明1の「曲げ部」に相当するとの一致点認定も誤りである旨主張する。

しかし,上記2で認定したとおり,引用発明1の皮革片は,周辺端面に近い部分において急カーブの曲線となっており,その部分を挟んで,中心部では比較的緩やかな曲線に,周辺端面に至る領域では緩やかな曲線あるいは直線となっているのであるから,審決が引用発明1について「急な曲面領域」を認定したことに誤りはなく,「急な曲面領域から周辺端面に至る領域」が本件発明1の「曲げ部」に相当するとした一致点認定にも誤りはなく,この点に関する相違点の看過もない。

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(2) 原告らは,引用発明1の皮革片はカップ状の裾の部分しか接合しておらず,本件発明1の接合部とは異なっているので,「接合部」が設けられる点を一致点とした審決の認定に誤りがあると主張する。

上記1で認定したとおり,本件発明1は,皮革片の周縁部を折り曲げ,折り曲げ部に設けられる接合部において,隣接する皮革パネルと接着するという構成をとるものである。このように,本件発明1における「接合部」は,接着するための部位であるから,一定の領域を有する「面接触」を要するものと解される。これに対し,上記2のとおり,引用発明1は,カップ状の皮革パネルの裾部分(周辺端面)のみを接触させたものであり,接触している部分は線接触であると認めるのが自然である。

そうすると,引用発明1における皮革片の接触部は,接着するための接合部とはいえず,本件発明1における接合部に相当するということはできないから,この点を一致点とした審決の認定は誤りである。そして,「接合部」の有無は,皮革パネルの接着に関する相違点2の前提となるものであって,この点の相違も含めて相違点2についての本件発明1の構成の容易想到性を判断すべきなのに,審決はこれを怠っている。したがって,取消事由1は,理由がある。

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4 取消事由2について



(1) 上記1で認定したとおり,本件発明1の「折り曲げ部」は,縫いボールと同様の飛距離,グリップ性等を得るために,皮革パネル間に,縫いボールと同様の深くて狭い溝を形成するために採用された構成である。

これに対し,上記2で認定した内容によれば,引用発明1は,手工業的に実現さあれたボール,すなわち縫いボールに近い外観を有することを目的とするものであり,そのために,とりわけ隆起に着目し,隆起部分を有するボールとするために,皮革片を椀型(カップ状)に成形するという構成を採用したものと認められる。

このように,本件発明1と引用発明1は,貼りボールに縫いボールの特徴を取り入れようとする点では共通するものの,技術的着眼点は,本件発明1が飛距離等であるのに対し,引用発明1では外観であって,異なっている。また,貼りボールの外観を縫いボールに近付けるための手法としては,甲3の1に従来技術として記載された「縁端を装飾した皮革片を,空気袋に直接貼り付ける」手法,本件発明1のように「折り曲げ部」を設ける手法等,種々の構成が考えられるところ,引用発明1においては,上記のとおり「隆起部分」に着目した構成を採用したものであり,甲3の1の記載によっても,本件発明1のような,縫いボールと同様の深く狭い溝を形成するという思想は窺われないのであって,そのことに伴い当然のことながら,引用発明1と本件発明1とでは,採用された構成も異なっている。

(2) 本件発明1の「折り曲げ部」の構成については,曲げる角度が90度よりも小さな角度になる場合も含まれると解されるが,縫いボールと同様の溝を形成するという発明の目的や,「折り曲げ」の語意を考慮すると,単に曲げられているだけでなく,相当程度大きな角度で曲げられるべきものと解される。そうすると,仮に,引用発明1の皮革片の周縁部分に「折り曲げ部」の構成を採用した場合,「折り曲げ部」において相当程度大きな角度で曲げられることになり,それよりも内側の部分は平坦に近い状態になってしまうから,大きな隆起を形成することができなくなり,引用発明1の「隆起部分」の形成という目的に反することになる。

(3) さらに,縫いボールにおいて,「折り曲げ」は,縫うことによって必然的に生じるものであり,両者は一体不可分の構成ということができる。したがって,折り曲げ部を有する縫いボールが周知であるとしても,このうち折り曲げる構成のみに着目し,これを縫いボールから分離することが従来から知られていたとは認められず,これが容易であったということもできない。

(4) 小括

以上の点を総合すると,引用発明1において,「曲げ部」を「折り曲げ部」とすることが,当業者にとって容易に想到し得たことであるということはできない。したがって,引用発明1について,本件発明1の相違点1に係る構成とすることが容易であるとした審決は誤りであり,取消事由2には理由がある。


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5 取消事由5~11について



上記4で説示したとおり,本件発明1に関する取消事由2には理由があるところ,本件発明2~4,6~9は,いずれも本件発明1の構成をすべて含むものであるから,取消事由2と同様の理由により,本件発明2~4,6~9に係る取消事由5~11はいずれも理由がある。

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第6 結論



以上のとおりであって,取消事由3,4について判断するまでもなく,本件発明1~4,6~9を無効とした審決は誤りであって,取り消されるべきものである。

よって,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官塩月秀平- 32 -裁判官清水節裁判官古谷健二郎
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Last Update: 2011-03-01 09:05:36 JST

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……………………………………………………判決末尾top
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特許:【補正適否】【一致点・相違点】【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年2月24日判決(平成22年(行ケ)第10193号審決取消請求事件))





目 次


特許:【補正適否】【一致点・相違点】【容易想到性】「事実認定」:(知財高裁平成23年2月24日判決(平成22年(行ケ)第10193号審決取消請求事件))




知的財産高等裁判所第2部「塩月秀平コート」



H230228現在のコメント


(知財高裁平成23年2月24日判決(平成22年(行ケ)第10193号審決取消請求事件))

事実認定に関する判決です。結論的には短くて読みやすいのですが,主張書面としては使いにくいでしょうか。

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縮小版なし・判決原文(引用)


(知財高裁平成23年2月24日判決(平成22年(行ケ)第10193号審決取消請求事件))

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1 取消事由1(補正の適否の判断の誤り)について



(1) 審決は,本件補正によって請求項1に加えられた「それにより,」の「そ
れ」を,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアッ
プ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコー
ド手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させ,」を指すと解した
ものである。指示語である「それ」は,通常,当該指示語より先行して現れる
語句を指すものであるところ,審決は「それにより」の直前に位置する「前記
簡素化された第2のブートコード手順は,・・・実行させ,」を指すと解した
ものであり,補正された請求項1の特許請求の範囲の記載の体裁上,不合理又
は不自然な解釈をしたものでもない。そして,本件補正後の明細書の記載及び
図面からも,「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及び
アップグレードされる」ことの原因となるべき事項を見出すことは困難である
から,上記「それにより,」が指す事項につき上記と異なる解釈をすべきもの
であるともいえない。したがって,審決の前記文理解釈に誤りがあるというこ
とはできない。

top (2) この点,原告は,本件補正により請求項1に加えられた事項のうち
「それにより,」は,「補正後の請求項1の構成全体により,」,特に「修正
ブートコードは,ハードドライブに格納されるという構成により,」という意
味に解すべきであり,新規に原因・結果の関係又は構成・効果の関係を追加す
るものではない等と主張する。

しかしながら,本件補正後の明細書の発明の詳細な説明欄や図面には,コン
ピュータのハードドライブの特定の記憶領域であるマスターブートレコード
(master boot record,MBR)に修正されたブートコード
(コンピュータを起動するために実行されるプログラムの一種)である「修正
ブートコード」を格納し,これがコンピュータの起動時にロードされて実行さ
れること(段落【0020】,【0021】,図4~6等)や,コンピュータ
のROM(読み出し専用メモリ)等に格納され,特別の目的に沿うように修正
又は特化されたBIOS(Basic Input Output System。
コンピュータシステム内の各種ハードウェアにアクセスするための実行手続の
プログラムを体系化した特別のソフトウェアの一種。乙1の4頁参照)を実行
(執行)すること(段落【0038】,【0039】,図12,13)は記載
されているものの,補正発明(本件補正後の請求項1の発明)の構成全体や
「修正ブートコード」自体ないし「第2のブートコード」自体の作用によっ
て,「修正ブートコード」ないし「第2のブートコード」が修正ないしアップ
グレードされることは記載されていない。また,「修正ブートコード」や「第
2のブートコード」が修正ないしアップグレードされるかどうかは,「修正ブー
トコード」等のプログラムの作用如何に係るもの,すなわち,「修正ブートコー
ド」等のプログラムが実行されるときに,「修正ブートコード」等自体を修正
ないしアップグレードするようプログラムされているかどうかに係るものであっ
て,「修正ブートコード」自体をコンピュータのハードドライブに格納したこ
とに基づくものでないことは明らかである。したがって,原告の上記主張は採
用することができない。

また,原告は,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスター
トアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブー
トコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させること」と,
「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレー
ドされる」こととの間には原因・結果の関係にはなく,審決のとおりに解する
と補正発明を正確に理解することができない等と主張する。

確かに,本件補正後の明細書及び図面には,「第2のブートコード手順」によっ
て,「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグ
レードされる」ことを明示する記載は存しないが,だからといって「それによ
り,」が指示する語句が原告主張のとおりであると解しなければならないこと
になるものではない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

(3) 前記(1)のように解すると,本件補正により,請求項1には,「前記簡素化
された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブー
ト手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコー
ドセグメントをロードまたは実行させ,それにより,前記修正ブートコード及
び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」という構成(審
決にいう事項(ア))が加えられたことになるが,「前記修正ブートコード及
び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」という構成は当
初明細書及び図面中に記載されていない事項である。また,当初明細書の記載
及び図面をすべて参照しても,上記の構成が開示されているとも示唆されてい
るともいえず,補正発明(本願発明)の優先日当時の当業者にとって,当初明
細書の記載及び図面から自明な事項であるともいい難い。したがって,本件補
正は請求項1につき当初明細書及び図面中に記載された範囲内で補正するもの
ではないから,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例
によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反する
ものというべきである。

なお,原告自身が,平成21年11月16日付け回答書(甲12)で,「出願
人もまた,補正後の請求項1における『それにより,前記修正ブートコード及
び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる』という補正は,
出願当初の明細書にも図面にも記載されていないことを認めます。そして,そ
の記載を撤回するため,特許法第17条の2に規定する補正の機会を付与して
くださいますよう希望いたします。」(1頁)としていることは,上記結論を
裏付けるものである一方,本件補正の内容にかんがみれば,上記「それによ
り,・・・」が単なる誤記であるともいい難い。

(4) 結局,本件補正が当初明細書及び図面中に記載された範囲内で補正するも
のではなく許されないとした審決の判断に誤りがあるとはいえず,原告が主張
する取消事由1は理由がない。

top



2 取消事由2(本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り)について



審決がした本願発明(本件補正前の請求項1の発明)と引用発明の一致点及び
相違点の認定の内容は前記第2の3のとおりであるところ,原告は,引用発明
の「オペレーティングシステムブートルーチン」はROMに格納されており,
その修正は不可能で,本願発明の従来技術に相当し,引用発明では,コンピュー
タシステムへ新たに加えられたコンポーネントに適用するという技術的課題を
有していないから,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」
は,本願発明の「修正ブートコード」と相違する等と主張する。

しかしながら,審決は,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチ
ン」が「BIOS-ROM内に格納され」ていることを相違点として正しく認
定しているから,原告の上記主張は失当である。

加えて,確かに,引用発明の「オペーレティングシステムブートルーチン」は
コンピュータのBIOS-ROMに格納されるものであるが(引用文献の段落
【0018】等),コンピュータの特定のプログラムであるBIOSを格納す
る「BIOS-ROM」は,一般に,書込みが一回だけ可能で,書込み後は読
み出すことしかできない,いわゆる文字どおりのROM(読み出し専用メモ
リ)ではなく,書換えが可能なフラッシュメモリによって構成され(乙
1~3),「オペレーティングシステムブートルーチン」を
「BIOS-ROM」に格納したことの一事をもって直ちに「オペレーティン
グシステムブートルーチン」が修正不可能なものになるわけではない。また,
引用発明は,複数のオペレーティングシステムを起動させ得るコンピュータに
おいて,第1のオペレーティングシステムを起動させることなく,第2のオペー
レティングシステムを起動することを可能にし,第2のオペレーティングシス
テムの構成次第で,DVDドライブ等の装置のうち必要な装置のみを選択的に
動作可能にできるようにする構成を有しているから(引用文献の段落
【0004】~【0008】,【0021】,【0022】,【0038】
),引用発明が本願明細書(本件補正前の明細書)にいう従来技術に相当する
ものではないし,引用発明が,コンピュータシステムへ新たに加えられたコン
ポーネントに適用するという技術的課題を有していないものでもない。また,
前記1のとおり,本願発明の特許請求の範囲には,「修正ブートコード」が
「修正ブートコード」自体を修正する構成は開示されていないから,本願発明
がかかる構成を有することを前提とする原告の主張は失当である(なお,本願
明細書(本件補正前の明細書)の発明の詳細な説明欄にも,かかる構成は開示
されていない。)。

そして,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」が果たす機
能にかんがみると,これは本願発明の「修正ブートコード」に相当するという
ことができる。

結局,本願発明と引用発明の一致点及び相違点に係る審決の認定に誤りがある
とはいえず,原告が主張する取消事由2は理由がない。


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3 取消事由3(本願発明の容易想到性の判断の誤り)について



林周志著「改訂版プロフェッショナルBSDフォローアップ 第1回 ブートマ
ネージャ」(BSD Magazine 2002,No.11,2002年3
月14日株式会社アスキー発行)168,169頁(甲2)に照らせば,複数
のオペレーティングシステムの中から一つのオペレーティングシステム又はそ
のローダを起動させる機能(引用文献の段落【0025】等)を有する引用発
明の「オペレーティングシステムブートルーチン」をハードドライブ(磁気ディ
スク装置)の特定の記憶領域である先頭セクタに,また各オペレーティングシ
ステムのローダ(本願発明にいう「第1のブートコード」及び「第2のブート
コード」)を,それぞれハードドライブ上の異なるパーティション(区画され
た記憶領域)に格納するように構成することは,当業者であれば,適宜なし得
たことであって,そのように構成したことによる作用効果も,引用発明及び甲
第2号証に記載された周知技術に照らして当業者が予測できる範囲のものであ
るということができる。他方,本件全証拠を考慮しても,引用発明の「オペレー
ティングシステムブートルーチン」をハードドライブに格納することを阻害す
るような事情は存せず,引用発明に甲第2号証に記載された周知技術を適用し
て,「オペレーティングシステムブートルーチン」をハードドライブに格納す
る構成を採用する動機付けに欠けるところはないというべきである。したがっ
て,本願発明と引用発明の相違点に係る構成は,引用発明及び本願発明の優先
日当時の周知技術に基づいて,上記優先日当時,当業者において容易に想到し
得たものであるということができる。

なお,前記2と同様に,本願発明の「修正ブートコード」が「修正ブートコー
ド」自体を修正する構成を有することを前提とする原告の主張は失当である。

結局,審決の本願発明の容易想到性に係る判断に誤りがあるとはいえず,原告
が主張する取消事由3は理由がない。

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判決原文(全文)




平成22(行ケ)10193 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟平成23年02月24日 知的財産高等裁判所




平成23年2月24日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官平成22年(行ケ)第10193号 審決取消請求事件


口頭弁論終結日 平成23年2月15日

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判決





主文



原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
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事実及び理由



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第1 原告が求めた判決



特許庁が不服2007-26737号事件について平成22年2月2日にした審決を取り消す。


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第2 事案の概要



本件訴訟は,特許出願拒絶査定を不服とする審判請求を成り立たないとした審決の取消訴訟である。争点は,補正の適否及び本願発明の進歩性(容易想到性)の有無である。

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1 特許庁における手続の経緯



原告は,平成17年3月31日,優先日を平成16年9月22日,優先権主張国を米国として,名称を「コンピュータの簡素化スタートアップシステム,その簡素化操作システム,その簡素化操作方法およびその効率的スタートアップシステム」とする発明の特許出願をしたが(特願2005-103899号),平成19年6月25日,特許庁から本件出願につき拒絶査定を受けたので,平成19年10月1日,不服審判請求をするとともに,特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載の一部を改める旨の本件補正をした。

上記不服審判請求は,不服2007-26737号事件として係属したが,特許庁は,平成22年2月2日,「平成19年10月1日付けの手続補正を却下する。」との決定とともに「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,この謄本は平成22年2月16日に原告にオンライン送達された。

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2 本願発明の要旨



本願の発明は,コンピュータの起動時間を短縮するための簡素化スタートアップシステムに関する発明で,本件補正後の請求項の数は9であるが,そのうち本件補正の前及び後の請求項1の特許請求の範囲は以下のとおりである。

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【本件補正前の請求項1(平成19年5月28日付け手続補正書に記載のもの,本願発明)】

「コンピュータと,第1のボタンと,第2のボタンと,ロジック手段と,修正ブートコードと,第1のブートコードと,第2のブートコードとを備える,コンピュータの簡素化されたスタートアップ手順を行うシステムであって,

前記ロジック手段は,前記第1のボタンまたは前記第2のボタンのどちらかに反応して起動して,BIOSルーチンの実行を開始し,

前記修正ブートコードは,前記ロジック手段が前記第1のボタンまたは前記第2のボタンのどちらに反応して起動されたのかを前記コンピュータに判断させて,前記コンピュータに前記第1のブートコードまたは前記第2のブートコードを実行させ,ここにおいて,それらブートコードは,それぞれハードドライブ上の異なるパーティションに格納され,オペレーティングシステム用のスタートアップ手順又はブート手順の実行内容を定義し,

前記第1のブートコードは,前記第1のボタンに反応した前記ロジック手段の起動に反応して,第1のブートコード手順を前記コンピュータに実行させ,ここにおいて,第1のブートコード手順は,第1のスタートアップ手順又は第1のブート手順であり,

前記第2のブートコードは,前記第2のボタンに反応した前記ロジック手段の起動に反応して前記第1のブートコード手順より簡素化された第2のブートコード手順を前記コンピュータに実行させ,

前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させる

ことを特徴とするコンピュータの簡素化スタートアップシステム。」

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【本件補正後の請求項1(平成19年10月1日手続補正書に記載のもので,下線を付した部分が補正された部分である。補正発明)】

「コンピュータと,第1のボタンと,第2のボタンと,ロジックと,修正ブートコードと,第1のブートコードと,第2のブートコードとを備える,コンピュータの簡素化されたスタートアップ手順を行うシステムであって,

前記ロジックは,前記第1のボタンまたは前記第2のボタンのどちらかに反応して起動して,BIOSルーチンの実行を開始し,ここにおいて,前記BIOSは,少なくとも1つのカスタム化された実行されるブートコードを備え,ROMに格納され,

前記修正ブートコードは,ハードドライブに格納され,前記ロジック手段が前記第1のボタンまたは前記第2のボタンのどちらに反応して起動されたのかを前記コンピュータに判断させて,前記コンピュータに前記第1のブートコードまたは前記第2のブートコードを実行させ,ここにおいて,それらブートコードは,それぞれハードドライブ上の異なるパーティションに格納され,オペレーティングシステム用のスタートアップ手順又はブート手順の実行内容を定義し,

前記第1のブートコードは,ハードドライブに格納され,前記第1のボタンに反応した前記ロジック手段の起動に反応して,第1のブートコード手順を前記コンピュータに実行させ,ここにおいて,第1のブートコード手順は,第1のスタートアップ手順又は第1のブート手順であり,

前記第2のブートコードは,ハードドライブに格納され,前記第2のボタンに反応した前記ロジック手段の起動に反応して前記第1のブートコード手順より簡素化された第2のブートコード手順を前記コンピュータに実行させ,

前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させ,それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされることを特徴とするコンピュータの簡素化スタートアップシステム。」

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3 審決の理由の要点



補正後の請求項1は,少なくとも,(ア)「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させ,それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」との事項を含んでいるところ,願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の記載からすると,「簡素化された第2のブートコード手順は,・・・前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させ,それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」ものではない。よって,(ア)に記載された事項は,当初明細書又は図面に記載されておらず,かつ,その記載から自明なものでもない。

したがって,本件補正は,当初明細書又は図面に記載された範囲内でされたものではないから,平成18年法律第55号附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項に反し,改正前の特許法159条1項において読み替えて準用される同法53条1項により却下すべきである。

また,本願発明(本件補正前の請求項1の発明)は,特開2000-20285号公報(甲1)に記載された引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたもので進歩性を欠く。

なお,審決が認定した引用発明,本願発明と引用発明の一致点及び相違点はそれぞれ下記のとおりであり,審決は,相違点に関する本願発明の構成は,当業者であれば適宜なし得たことであり,相違点は格別なものではないと判断した。

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【引用発明】

「CPUと,『PC1』の選択スイッチと,『CD』の選択スイッチと,電源コントローラと,オペレーティングシステムブートルーチンと,パーソナルコンピュータとして動作させるためのオペレーティングシステムをロードして起動するためのローダ(以下,簡単のため,『第1のローダ』と言う)と,CDプレーヤとして動作させるのに必要な最小限の機能をもつオペレーティングシステムをロードして起動するためのローダ(以下,簡単のため,『第2のローダ』と言う)とを備える,コンピュータの簡素化されたオペレーティングシステムの立ち上げを行うシステムであって,

前記電源コントローラは,前記『PC1』の選択スイッチ又は前記『CD』の選択スイッチのどちらかに反応して電源投入動作して,BIOS初期化ルーチンの実行を開始し,

前記オペレーティングシステムブートルーチンは,前記電源コントローラが前記『PC1』の選択スイッチまたは前記『CD』の選択スイッチのどちらに反応して電源投入動作されたのかを前記CPUに判断させて,前記CPUに前記第1のローダまたは前記第2のローダを実行させるカスタム化されたブートコードであって,ここにおいて,オペレーティングシステムブートルーチン,並びに第1のローダ及び第2のローダは,それぞれBIOS-ROMの記憶領域,並びに磁気ディスク装置上の異なる記憶領域に格納され,オペレーティングシステム用のスタートアップ手順又はブート手順の実行内容を定義し,

前記第1のローダは,前記『PC1』の選択スイッチに反応した前記電源コントローラの電源投入動作に反応して,第1のローダに基づくロード処理を前記CPUに実行させ,ここにおいて,第1のローダに基づくロード処理は,パーソナルコンピュータとして動作させるためのオペレーティングシステム用のスタートアップ手順又はブート手順であり,

前記第2のローダは,前記『CD』の選択スイッチに反応した前記電源コントローラの電源投入動作に反応して前記第1のローダに基づくロード処理より簡素化された第2のローダに基づくロード処理を前記CPUに実行させ,

前記簡素化された第2のローダに基づくロード処理は,CDプレーヤとして動作させるのに必要な最小限の機能をもつオペレーティングシステム用のスタートアップ手順又はブート手順であり,前記CPUに前記第1のローダに基づくロード処理と異なるコードをロードまたは実行させる

ことを特徴とするコンピュータの簡素化スタートアップシステム。」

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【本願発明と引用発明の一致点】

「コンピュータと,第1のボタンと,第2のボタンと,ロジック手段と,修正ブートコードと,第1のブートコードと,第2のブートコードとを備える,コンピュータの簡素化されたスタートアップ手順を行うシステムであって, - 6 -

前記ロジック手段は,前記第1のボタンまたは前記第2のボタンのどちらかに反応して起動して,BIOSルーチンの実行を開始し,

前記修正ブートコードは,前記ロジック手段が前記第1のボタンまたは前記第2のボタンのどちらに反応して起動されたのかを前記コンピュータに判断させて,前記コンピュータに前記第1のブートコードまたは前記第2のブートコードを実行させ,ここにおいて,それらブートコードは,それぞれ異なる記憶領域に格納され,オペレーティングシステム用のスタートアップ手順又はブート手順の実行内容を定義し,

前記第1のブートコードは,前記第1のボタンに反応した前記ロジック手段の起動に反応して,第1のブートコード手順を前記コンピュータに実行させ,ここにおいて,第1のブートコード手順は,第1のスタートアップ手順又は第1のブート手順であり,

前記第2のブートコードは,前記第2のボタンに反応した前記ロジック手段の起動に反応して前記第1のブートコード手順より簡素化された第2のブートコード手順を前記コンピュータに実行させ,

前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させる

ことを特徴とするコンピュータの簡素化スタートアップシステム。」

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【本願発明と引用発明の相違点】

「本願発明の修正ブートコード,第1のブートコード,及び第2のブートコードは,それぞれハードドライブ上の異なるパーティションに格納されているのに対し,引用発明のオペレーティングシステムブートルーチンは,BIOS-ROM内に格納され,第1のローダ及び第2のローダは,それぞれ磁気ディスク装置の異なる記憶領域に格納されている点」


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第3 原告主張の審決取消事由


1 補正の適否の判断の誤り(取消事由1)
(1) 補正発明は,従来技術とは異なって,「BIOSはROMに格納され」ているが,「修正ブートコードは,ハードドライブに格納され」ており,「それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」点に特徴があるところ,補正発明によって解決すべき技術的課題及び補正発明の上記特徴(構成及び効果)は,当初明細書(段落【0020】,【0023】,【0038】,【0039】等)及び図5に記載されているか,又は当初明細書及び図面に記載されている事項から当業者にとって自明である。
(2) 本件補正により追加された事項は,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させ,それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」ことの一部である「それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」という事項のみである。
このうち「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」点については,前記(1)のとおり当初明細書及び図面に記載されているか,当業者に自明な事項にすぎない。
他方,上記の「それにより,」は,「補正後の請求項1の構成全体により,」,特に「修正ブートコードは,ハードドライブに格納されるという構成により,」という意味に解すべきであり,上記の「それにより,」を加えることによって,新規に原因・結果の関係又は構成・効果の関係を追加するものではない。
しかるに,審決は,上記補正事項を正しく理解せず,上記の「それにより,」が,原因・結果の関係又は構成・効果の関係を示すもの,すなわち,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であ


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り,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させ」ることと,「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」こととが原因・結果の関係又は構成・効果の関係にあるものと誤認し,上記の「それにより,」が新規に原因・結果の関係又は構成・効果の関係を追加するものと誤って評価した。
その結果,審決は本件補正を却下したものであって,審決の補正却下の判断には誤りがある。
なお,平成21年11月16日付け回答書(甲12)における「出願当初の明細書にも図面にも記載されていないことを認めます。」との原告の表明は,補正の機会を得たいと切望するあまり,発明の構成要件と効果との対応関係について判断を誤った結果にすぎず,原告において自己に不利益な「事実」を自白したものではない。
(3) なお,指示語である「それ」が直前の句ではなく,直前の句よりも前方にある句を指すこともあるし,請求項全体を指す場合もある。特に,請求項の末尾において「それにより,○○である,」というように発明の効果を記述する場合には,その効果は請求項に係る発明の構成全体により得られるものと理解されることが多く,それが通常の実務的慣行である。「それ」が請求項のうちのどこの箇所を指すかということは請求項の技術的内容に照らして決定すべきものであって,機械的に直前の句を指すものと決めつけて解釈することは誤りである。
また,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させること」の結果として,「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」ことになるものではない。前者は第2のブートコード手順のコードセグメントを実行させることを意味し,後者はハードドライブ中の修正ブートコード及び第2のブートコードを修正することを意味するにすぎず,両者は,原因・結果の関係にない。前記(2)のとおりに解することは,技術的に合理性を欠くもので,このように解すると


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補正発明を正確に理解することができない。
2 引用発明と本願発明との一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由2)
引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」はROMに格納されており(段落【0018】,図3),その修正は不可能で,本願発明の従来技術に相当する。また,引用発明には,コンピュータシステムへ新たに加えられたコンポーネントに適用するという技術的課題を有しておらず,「オペレーティングシステムブートルーチン」を修正する必要性がない。
一方,本願発明の「修正ブートコード」は,上記技術的課題を解決するために,ハードドライブに格納されており,文字どおりスタートアップ手順ないしブート手順を修正するものである。
したがって,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」は,本願発明の「修正ブートコード」と相違する。
しかるに,審決は,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」が本願発明の「修正ブートコード」に相当するとして,本願発明と引用発明の一致点及び相違点を認定しているが,上記相違点を看過したものであり,この認定は誤りである。
3 本願発明の容易想到性の判断の誤り(取消事由3)
引用発明は「オペレーティングシステムブートルーチン」を修正することを予定しておらず,「オペレーティングシステムブートルーチン」をハードドライブへ格納する必要がない。したがって,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」をハードドライブへ格納する構成については,引用文献においても甲第2号証においても,開示も示唆もされておらず,かかる構成を採用する動機付けを欠く。むしろ「オペレーティングシステムブートルーチン」は固定的にそのままROM内に格納しておくべきものである。
また,甲第2号証の「ブートマネージャ」が「オペレーティングシステムブートルーチン」に相当する理由も不明である。 - 10 -
しかるに,審決は,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」をハードドライブに格納するように構成することは,当業者であれば適宜なし得たことであると判断するが,この判断は誤りである。

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第4 取消事由に関する被告の反論


1 取消事由1に対し
(1) 本件補正で請求項1の特許請求の範囲に「,それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」との記載を加える点における「それ」は,直前の句を指すものと解するのが日本語として最も自然な解釈である。原告が主張するように,上記「それ」が隔たった句である「修正ブートコードは,ハードドライブに格納され」を指すと解することは,日本語として通常なされ得る解釈ではない。また,「修正ブートコード」が「ハードドライブに格納され」ることによって直ちに「前記修正ブートコード及び前記第2の修正ブートコードが修正及びアップグレードされる」という効果を奏するものではないから,かかる効果を奏することを根拠に,上記「それ」が「修正ブートコードは,ハードドライブに格納され」を指すと解することも相当でない。
(2) したがって,前記(1)の「それ」は,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させることにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」ことを指すというべきである。
ここで,当初明細書の段落【0023】の記載は,一般にハードディスクのマスターブートレコードに提供されるものとして周知の「マスタブートコード」を修正したものが本願発明(及び補正発明)にいう「修正ブートコード」であることを示すものであり,上記「修正ブートコード」自体が修正又はアップグレードされることは上記段落中に記載されていない。同様に,当初明細書の段落【0038】,【0


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039】,図5やその他の部分でも,上記「修正ブートコード」自体が修正又はアップグレードされることは記載されていない。
そうすると,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させることにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」ことは,当初明細書又は図面の記載を総合し,当業者の優先日当時の技術常識を参酌しても,当初明細書又は図面に記載された事項であるということはできないし,当初明細書又は図面に記載された事項から当業者において自明な事項であるということもできない。したがって,上記の「前記・・・により,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」ことは,本件補正において導入された新たな技術的事項であることが明らかである。
(3) 原告も,平成21年11月16日付け回答書(甲12)で,「出願人もまた,補正後の請求項1における『それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる』という補正は,出願当初の明細書にも図面にも記載されていないことを認めます。」(1頁下から8行~下から6行)としており,前記(2)の事項が新たな技術的事項に当たる点に異を唱えていない。
(4) だとすると,本件補正が当初明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものではないとした審決の判断に誤りはない。したがって,審決が平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反するので,上記改正前の特許法159条1項において読み替えて準用する53条1項の規定により却下した点に何ら誤りはない。
2 取消事由2に対し
前記1と同様に,本件補正前の明細書(本願明細書)にも図面にも,本願発明にいう「修正ブートコード」が修正及びアップグレードされることは記載されていな


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いから,本願発明にいう「修正ブートコード」が修正されることを前提とする原告の主張は失当である。
また,「BIOS-ROM」は,一般に書換えが可能なフラッシュメモリによって構成されるものであって(乙1~3),「オペレーティングシステムブートルーチン」が「BIOS-ROM」に格納されたからといって,「オペレーティングシステムブートルーチン」が修正不可能なものになるわけではない。
したがって,本願発明にいう「修正ブートコード」が引用発明にいう「オペレーティングシステムブートルーチン」に相当するとした審決の評価に誤りはなく,本願発明と引用発明の一致点及び相違点に係る審決の認定に誤りはない。
3 取消事由3に対し
前記2と同様に,本願発明において「修正ブートコード」が修正及びアップグレードされることは記載されていないから,本願発明にいう「修正ブートコード」が修正されることを前提とする原告の主張は失当である。
引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」も,甲第2号証の「ブートマネージャ」も,1台の情報処理装置の磁気ディスク装置(ハードドライブ)に格納された複数のオペレーティングシステムを,起動時に必要に応じて切り替えることを実現するためのプログラムであるから,引用発明にいう「オペレーティングシステムブートルーチン」は甲第2号証にいう「ブートマネージャ」に相当する。
そして,甲第2号証の「ブートマネージャ」の例のように,1台の情報処理装置のハードディスク装置に格納された複数のオペレーティングシステムを,必要に応じて起動時に切り替えることを実現するプログラムを,磁気ディスク装置の先頭セクタすなわちマスターブートレコード(MBR)に格納することは,当業者にとって常識的・基礎的事項といえる事柄である。他方,引用発明において,「オペレーティングシステムブートルーチン」を磁気ディスク装置に格納することを阻害するような事情は存しない。
そうすると,引用発明における「オペレーティングシステムブートルーチン」を,


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BIOS-ROM内に格納することに替え,磁気ディスク装置の先頭セクタに格納するように構成することは,本願発明の優先日当時,当業者において容易に想到し得たものである。
したがって,この旨判断する審決の容易想到性の判断に誤りはない。

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第5 当裁判所の判断





1 取消事由1(補正の適否の判断の誤り)について



(1) 審決は,本件補正によって請求項1に加えられた「それにより,」の「それ」を,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させ,」を指すと解したものである。指示語である「それ」は,通常,当該指示語より先行して現れる語句を指すものであるところ,審決は「それにより」の直前に位置する「前記簡素化された第2のブートコード手順は,・・・実行させ,」を指すと解したものであり,補正された請求項1の特許請求の範囲の記載の体裁上,不合理又は不自然な解釈をしたものでもない。そして,本件補正後の明細書の記載及び図面からも,「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」ことの原因となるべき事項を見出すことは困難であるから,上記「それにより,」が指す事項につき上記と異なる解釈をすべきものであるともいえない。したがって,審決の前記文理解釈に誤りがあるということはできない。

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(2) この点,原告は,本件補正により請求項1に加えられた事項のうち「それにより,」は,「補正後の請求項1の構成全体により,」,特に「修正ブートコードは,ハードドライブに格納されるという構成により,」という意味に解すべきであり,新規に原因・結果の関係又は構成・効果の関係を追加するものではない等と主張する。

しかしながら,本件補正後の明細書の発明の詳細な説明欄や図面には,コンピュータのハードドライブの特定の記憶領域であるマスターブートレコード(master boot record,MBR)に修正されたブートコード(コンピュータを起動するために実行されるプログラムの一種)である「修正ブートコード」を格納し,これがコンピュータの起動時にロードされて実行されること(段落【0020】,【0021】,図4~6等)や,コンピュータのROM(読み出し専用メモリ)等に格納され,特別の目的に沿うように修正又は特化されたBIOS(Basic Input Output System。コンピュータシステム内の各種ハードウェアにアクセスするための実行手続のプログラムを体系化した特別のソフトウェアの一種。乙1の4頁参照)を実行(執行)すること(段落【0038】,【0039】,図12,13)は記載されているものの,補正発明(本件補正後の請求項1の発明)の構成全体や「修正ブートコード」自体ないし「第2のブートコード」自体の作用によって,「修正ブートコード」ないし「第2のブートコード」が修正ないしアップグレードされることは記載されていない。また,「修正ブートコード」や「第2のブートコード」が修正ないしアップグレードされるかどうかは,「修正ブートコード」等のプログラムの作用如何に係るもの,すなわち,「修正ブートコード」等のプログラムが実行されるときに,「修正ブートコード」等自体を修正ないしアップグレードするようプログラムされているかどうかに係るものであって,「修正ブートコード」自体をコンピュータのハードドライブに格納したことに基づくものでないことは明らかである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。

また,原告は,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させること」と,「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」こととの間には原因・結果の関係にはなく,審決のとおりに解すると補正発明を正確に理解することができない等と主張する。

確かに,本件補正後の明細書及び図面には,「第2のブートコード手順」によって,「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」ことを明示する記載は存しないが,だからといって「それにより,」が指示する語句が原告主張のとおりであると解しなければならないことになるものではない。したがって,原告の上記主張を採用することはできない。

(3) 前記(1)のように解すると,本件補正により,請求項1には,「前記簡素化された第2のブートコード手順は,第2のスタートアップ手順又は第2のブート手順であり,前記コンピュータに前記第1のブートコード手順と異なるコードセグメントをロードまたは実行させ,それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」という構成(審決にいう事項(ア))が加えられたことになるが,「前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる」という構成は当初明細書及び図面中に記載されていない事項である。また,当初明細書の記載及び図面をすべて参照しても,上記の構成が開示されているとも示唆されているともいえず,補正発明(本願発明)の優先日当時の当業者にとって,当初明細書の記載及び図面から自明な事項であるともいい難い。したがって,本件補正は請求項1につき当初明細書及び図面中に記載された範囲内で補正するものではないから,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反するものというべきである。

なお,原告自身が,平成21年11月16日付け回答書(甲12)で,「出願 人もまた,補正後の請求項1における『それにより,前記修正ブートコード及び前記第2のブートコードが修正及びアップグレードされる』という補正は,出願当初の明細書にも図面にも記載されていないことを認めます。そして,その記載を撤回するため,特許法第17条の2に規定する補正の機会を付与してくださいますよう希望いたします。」(1頁)としていることは,上記結論を裏付けるものである一方,本件補正の内容にかんがみれば,上記「それにより,・・・」が単なる誤記であるともいい難い。

(4) 結局,本件補正が当初明細書及び図面中に記載された範囲内で補正するものではなく許されないとした審決の判断に誤りがあるとはいえず,原告が主張する取消事由1は理由がない。

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2 取消事由2(本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定の誤り)について



審決がした本願発明(本件補正前の請求項1の発明)と引用発明の一致点及び相違点の認定の内容は前記第2の3のとおりであるところ,原告は,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」はROMに格納されており,その修正は不可能で,本願発明の従来技術に相当し,引用発明では,コンピュータシステムへ新たに加えられたコンポーネントに適用するという技術的課題を有していないから,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」
は,本願発明の「修正ブートコード」と相違する等と主張する。

しかしながら,審決は,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」が「BIOS-ROM内に格納され」ていることを相違点として正しく認定しているから,原告の上記主張は失当である。

加えて,確かに,引用発明の「オペーレティングシステムブートルーチン」はコンピュータのBIOS-ROMに格納されるものであるが(引用文献の段落【0018】等),コンピュータの特定のプログラムであるBIOSを格納する「BIOS-ROM」は,一般に,書込みが一回だけ可能で,書込み後は読み出すことしかできない,いわゆる文字どおりのROM(読み出し専用メモリ)ではなく,書換えが可能なフラッシュメモリによって構成され(乙1~3),「オペレーティングシステムブートルーチン」を「BIOS-ROM」に格納したことの一事をもって直ちに「オペレーティングシステムブートルーチン」が修正不可能なものになるわけではない。また,引用発明は,複数のオペレーティングシステムを起動させ得るコンピュータにおいて,第1のオペレーティングシステムを起動させることなく,第2のオペーレティングシステムを起動することを可能にし,第2のオペレーティングシステムの構成次第で,DVDドライブ等の装置のうち必要な装置のみを選択的に動作可能にできるようにする構成を有しているから(引用文献の段落【0004】~【0008】,【0021】,【0022】,【0038】),引用発明が本願明細書(本件補正前の明細書)にいう従来技術に相当するものではないし,引用発明が,コンピュータシステムへ新たに加えられたコンポーネントに適用するという技術的課題を有していないものでもない。また,前記1のとおり,本願発明の特許請求の範囲には,「修正ブートコード」が「修正ブートコード」自体を修正する構成は開示されていないから,本願発明がかかる構成を有することを前提とする原告の主張は失当である(なお,本願 明細書(本件補正前の明細書)の発明の詳細な説明欄にも,かかる構成は開示
されていない。)。

そして,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」が果たす機能にかんがみると,これは本願発明の「修正ブートコード」に相当するということができる。結局,本願発明と引用発明の一致点及び相違点に係る審決の認定に誤りがあるとはいえず,原告が主張する取消事由2は理由がない。


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3 取消事由3(本願発明の容易想到性の判断の誤り)について



林周志著「改訂版プロフェッショナルBSDフォローアップ 第1回 ブートマネージャ」(BSD Magazine 2002,No.11,2002年3月14日株式会社アスキー発行)168,169頁(甲2)に照らせば,複数のオペレーティングシステムの中から一つのオペレーティングシステム又はそのローダを起動させる機能(引用文献の段落【0025】等)を有する引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」をハードドライブ(磁気ディスク装置)の特定の記憶領域である先頭セクタに,また各オペレーティングシステムのローダ(本願発明にいう「第1のブートコード」及び「第2のブートコード」)を,それぞれハードドライブ上の異なるパーティション(区画された記憶領域)に格納するように構成することは,当業者であれば,適宜なし得たことであって,そのように構成したことによる作用効果も,引用発明及び甲第2号証に記載された周知技術に照らして当業者が予測できる範囲のものであるということができる。他方,本件全証拠を考慮しても,引用発明の「オペレーティングシステムブートルーチン」をハードドライブに格納することを阻害するような事情は存せず,引用発明に甲第2号証に記載された周知技術を適用して,「オペレーティングシステムブートルーチン」をハードドライブに格納する構成を採用する動機付けに欠けるところはないというべきである。したがって,本願発明と引用発明の相違点に係る構成は,引用発明及び本願発明の優先日当時の周知技術に基づいて,上記優先日当時,当業者において容易に想到し得たものであるということができる。

なお,前記2と同様に,本願発明の「修正ブートコード」が「修正ブートコード」自体を修正する構成を有することを前提とする原告の主張は失当である。

結局,審決の本願発明の容易想到性に係る判断に誤りがあるとはいえず,原告が主張する取消事由3は理由がない。

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第6 結論



以上によれば,原告が主張する取消事由はいずれも理由がないから,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官塩 月 秀 平裁判官真 辺 朋 子 - 19 -- 20 -裁判官田 邉 実
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Last Update: 2011-02-28 17:59:25 JST

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