ラベル 商標 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 商標 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2020年9月8日火曜日

最高裁判決:商標類否基準「基準」:(最二小平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件,集民第228号561頁))





目 次


最高裁判決:商標類否基準「基準」:(最二小平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件,集民第228号561頁))




縮小版



top



【商標法4条1項11号に係る商標類否】(non結合商標)



「法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),」,最高裁が繰り返し判示するところである(最二小平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件,集民第228号561頁))。

top



【商標法4条1項11号に係る商標類否】(結合商標含む)



「法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。」(最二小平成20年9月8日判決(平成19年(行ヒ)第223号審決取消請求事件,集民第228号561頁))



top



【あてはめ】(原文段落分け)



(2) これを本件についてみるに,本件商標の構成中には,称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが,本件商標は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。

文字部分含まれているが・・・

top

【称呼】


→標準文字,横書き,各文字の大きさ及び書体は同一,ぞの全体が等間隔に1行でまとまりよく



→独立して見る者の注意をひくように構成されていない


また,前記事実関係によれば,引用各商標は平成3年に商標登録されたものであるが,上告人の祖父は遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになったというのであるから,本件指定商品の販売業者等の取引者には本件審決当時,堤人形は仙台市堤町で製造される堤焼の人形としてよく知られており,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分から地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記「つつみ」の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者である被上告人が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,他にこのようにいえるだけの原審認定事実は存しない。

top

【観念】



→指定商品の出所である識別標章として強く支配的な印象



さらに,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分については,これに接した全国の本件指定商品の取引者,需要者は,ひな人形ないしそれに関係する物品の製造,販売等を営む者を表す言葉と受け取るとしても,「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから,新たに造られた言葉として理解するのが通常であると考えられる。そうすると,上記部分は,土人形等に密接に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえず,自他商品を識別する機能がないということはできない。



→密接に関連する一般的,普遍的な文字とはいえない



→自他商品を識別する機能がないということはできない


top

このほか,本件商標について,その構成中の「つつみ」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分だけを引用各商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許されないというべきである。

【結合商標】



→文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情なし



→構成部分全体を対比するのが正当



top



【結論】




(3) そして,前記事実関係によれば,本件商標と引用各商標は,本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見いだし得るにすぎず,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,いずれの商標からも堤人形に関係するものという観念が生じ得るとしても,全体として類似する商標であるということはできない。

【外観】


→本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見出し得るにすぎない





H230120現在のコメント


繰り返し知財高裁で述べられている論理ですので,最高裁判決として,しっかりと挙げておきます。

事実認定についても,大いに参考にすべき重要判決です。




判決原文(引用)【】は,サイト管理人追記




【商標法4条1項11号に係る商標類否】



(1) 法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。

top



【あてはめ】



(2) これを本件についてみるに,本件商標の構成中には,称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが,本件商標は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。また,前記事実関係によれば,引用各商標は平成3年に商標登録されたものであるが,上告人の祖父は遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになったというのであるから,本件指定商品の販売業者等の取引者には本件審決当時,堤人形は仙台市堤町で製造される堤焼の人形としてよく知られており,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分から地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記「つつみ」の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者である被上告人が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,他にこのようにいえるだけの原審認定事実は存しない。さらに,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分については,これに接した全国の本件指定商品の取引者,需要者は,ひな人形ないしそれに関係する物品の製造,販売等を営む者を表す言葉と受け取るとしても,「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから,新たに造られた言葉として理解するのが通常であると考えられる。そうすると,上記部分は,土人形等に密接に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえず,自他商品を識別する機能がないということはできない。

top

このほか,本件商標について,その構成中の「つつみ」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分だけを引用各商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許されないというべきである。

top



【結論】



(3) そして,前記事実関係によれば,本件商標と引用各商標は,本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見いだし得るにすぎず,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,いずれの商標からも堤人形に関係するものという観念が生じ得るとしても,全体として類似する商標であるということはできない。



判決原文(全文)




平成19(行ヒ)223 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟平成20年09月08日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄差戻し 知的財産高等裁判所



  • 1 -


top



主文



原判決を破棄する。
本件を知的財産高等裁判所に差し戻す。



理由



上告代理人須田篤の上告受理申立て理由について

1 本件は,被上告人が,上告人を商標権者とする後記商標登録を無効とすることについての審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求める訴訟である。



2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。



top

(1) 上告人は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成り,指定商品を商標法施行令(平成15年政令第398号による改正前のもの)別表第1の第28類の区分に属する「土人形および陶器製の人形」(以下「本件指定商品」という。)とする登録第4798358号の登録商標(平成16年2月18日商標登録出願,同年8月27日商標権の設定の登録。以下,この商標を「本件商標」といい,その商標登録を「本件商標登録」という。)の商標権者である。

top

(2) 仙台市堤町(現仙台市青葉区堤町)で製造される土人形は,江戸時代の堤焼に始まり,「おひなっこ」,「つつみのおひなっこ」とも呼ばれていたが,昭和初期に入ってからは「堤人形」と呼ばれるようになった。上記土人形(以下,仙台市堤町で製造される堤焼の人形を「堤人形」という。)を製造する人形屋は,かつては13軒を数えるほどの全盛期を迎えて明治に至ったが,次第に廃業が目立つようになり,大正期にはA家及びB家の2軒だけとなった。そして,昭和期には被上告人の父Cだけが堤人形を製造するようになり,その技術は被上告人に承継された。


上告人の祖父Dは,遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになり,その技術は,上告人の父Eを経て上告人に承継された。

top

(3) 被上告人は,いずれも指定商品を上記別表第28類の区分に属する「土人形」として,「つゝみ」の太文字を横書きして成る商標(登録第2354191号。以下「引用商標1」という。)及び「堤」の太文字1字から成る商標(登録第2365147号。以下「引用商標2」といい,引用商標1と併せて「引用各商標」という。)の商標権者である。なお,引用各商標に係る商標登録出願については,当初,ありふれた氏である「堤」あるいはこれを認識させる「つゝみ」の文字を普通に用いられる方法で表して成るものにすぎず,商標法(以下「法」という。)3条1項4号に該当するなどとして拒絶査定がされたが,平成3年4月4日,これに対する不服審判において,明治以来継続して商品「土人形」に使用された結果,需要者が被上告人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったから同条2項に該当するとして,引用各商標のそれぞれにつき商標登録を認めるべきものであるとの審決がされ,引用各商標は同年12月までに商標登録をされるに至ったものである。

top



(4) 被上告人は,平成18年3月8日,本件商標登録が法4条1項8号,10号,11号,15号,16号,19号及び8条の規定に違反してされたものであるとして,法46条1項に基づき,本件商標登録を無効とすることについて審判を請求した。



上記審判請求につき,特許庁において無効2006-89030号事件として審理された結果,同年10月31日,本件商標は引用各商標のいずれにも類似しないから法4条1項11号に該当せず,被上告人の主張するその余の無効理由も認められないとして,審判請求を不成立とする審決がされた(以下,この審決を「本件審決」という。)。

top



3 原審は,次のとおり判断して,本件商標について法4条1項11号該当性を否定した本件審決の判断部分は誤りであるとして,本件審決の取消しを求める被上告人の請求を認容した。



本件審決の当時,堤人形は,仙台市堤町で製造される堤焼の人形として,本件指定商品である「土人形および陶器製の人形」の販売業者等の取引者にはよく知られていた。そして,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分は,これに接する者に「ひな人形」である「おひな」,東北地方の方言などにみられる接尾語である「こ」及び特定の職業やそれを営む者を表す語である「や」から成る語であると認識されるものと認められる。そうすると,本件商標の構成中,「つつみ」の文字部分からは,地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が,「おひなっこや」の文字部分からは,「ひな人形屋」の観念が,それぞれ生じ,全体としては,「堤」という土地,人物の「ひな人形屋」あるいは堤人形の「ひな人形屋」との観念が生じるものと認められる。したがって,本件商標は,「つつみ」と「おひなっこや」とが組み合わされた結合商標として認識されるものであるが,その構成において「つつみ」の文字部分を分離することができないほど一体性があるものと認めることはできないから,冒頭の「つつみ」の文字部分のみが分離して認識され,そこから,地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念を生じるとともに,「ツツミ」のみの称呼をも生じるものと認められる。

他方,引用各商標からは,いずれも地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念を生じるとともに,「ツツミ」の称呼を生じる。

そうすると,本件商標と引用商標1がその外観の一部において類似するにすぎないこと,本件商標と引用商標2がその外観において類似するものとはいえないことを考慮しても,本件商標と引用各商標は全体として類似する商標であると認められるから,本件商標は引用各商標との間で法4条1項11号に該当するものというべきである。

top



4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。



(1) 法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。

top

(2) これを本件についてみるに,本件商標の構成中には,称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが,本件商標は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。また,前記事実関係によれば,引用各商標は平成3年に商標登録されたものであるが,上告人の祖父は遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになったというのであるから,本件指定商品の販売業者等の取引者には本件審決当時,堤人形は仙台市堤町で製造される堤焼の人形としてよく知られており,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分から地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記「つつみ」の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者である被上告人が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,他にこのようにいえるだけの原審認定事実は存しない。さらに,本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分については,これに接した全国の本件指定商品の取引者,需要者は,ひな人形ないしそれに関係する物品の製造,販売等を営む者を表す言葉と受け取るとしても,「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから,新たに造られた言葉として理解するのが通常であると考えられる。そうすると,上記部分は,土人形等に密接に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえず,自他商品を識別する機能がないということはできない。

top

このほか,本件商標について,その構成中の「つつみ」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分だけを引用各商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許されないというべきである。

top

(3) そして,前記事実関係によれば,本件商標と引用各商標は,本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見いだし得るにすぎず,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,いずれの商標からも堤人形に関係するものという観念が生じ得るとしても,全体として類似する商標であるということはできない。

top

5 以上によれば,本件商標と引用各商標が類似するとした原審の判断には,商標の類否に関する法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人が主張するその余の本件商標登録の無効理由につき更に審理を尽くさせるため,本件を知的財産高等裁判所に差し戻すこととする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官古田佑紀裁判官津野修裁判官今井功裁判官中川了滋)

top


top



裁判所Webサイトからコピペ



事件番号 平成19(行ヒ)223

事件名 審決取消請求事件

裁判年月日 平成20年09月08日

法廷名 最高裁判所第二小法廷

裁判種別 判決

結果 破棄差戻し

判例集等巻・号・頁 集民 第228号561頁

原審裁判所名 知的財産高等裁判所

原審事件番号 平成18(行ケ)10532

原審裁判年月日 平成19年04月10日

判示事項 「つつみのおひなっこや」の文字を横書きして成り,土人形等を指定商品とする登録商標と,いずれも土人形を指定商品とする「つゝみ」又は「堤」の文字から成る引用商標が類似しないとされた事例

裁判要旨 「つつみのおひなっこや」の文字を横書きして成り,土人形等を指定商品とする登録商標と,いずれも土人形を指定商品とする「つゝみ」又は「堤」の文字から成る引用商標について,(1)上記登録商標は,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているとはいえないこと,(2)「つつみ」の文字部分が,土人形等の取引者や需要者に対し,引用商標の商標権者がその出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったとはいえないこと,(3)「おひなっこや」の文字部分は,全国の土人形等の取引者,需要者には新たに造られた言葉として理解されるのが通常であり,自他商品を識別する機能がないとはいえないことなど判示の事情の下においては,「つつみ」の文字部分だけを引用商標と比較し,その類否を判断することは許されず,商標の構成部分全体を対比すると,上記登録商標と引用商標は類似しない。

参照法条 商標法4条1項11号

top

Last Update: 2011-01-20 16:41:04 JST

top
……………………………………………………判決末尾top
メインサイト(Sphinx利用)GAE利用サイト知財高裁のまとめjimdoサイト携帯サイト

2011年3月28日月曜日

商標:【商標の使用…否定】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))






商標:【商標の使用…否定】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))





知的財産高等裁判所第3部「飯村敏明コート」


平成22(ネ)10084 販売差止等請求控訴事件 商標権 民事訴訟
平成23年03月28日 知的財産高等裁判所



(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))

top




【商標の使用…否定】「事実認定」


(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))

top


判示




第2 事案の概要

1 原審の経緯等

以下,略語については,当裁判所も原判決と同一のものを用いる。

本件は,別紙「原告登録商標目録」記載の本件商標権を有する原告が,別紙「被告標章目録」記載1の被告標章1を包装に付した別紙「商品目録」記載の被告商品(クッション)を販売し,又は販売のために展示し,別紙「被告標章目録」記載2の被告標章2を被告商品に関する広告(被告カタログ,被告ウエブサイト)に使用している被告に対し,被告使用の上記被告各標章は,別紙「原告登録商標目録」記載の本件登録商標及び原告の商品等表示として周知又は著名な「ドーナツ枕」の表示とそれぞれ類似する標章(表示)であるから,被告の上記各行為は,原告の本件商標権の侵害行為に当たるとともに,不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号の不正競争行為に当たる旨主張して,商標法36条又は不競法3条に基づいて,被告各標章を包装に付した被告商品の販売等の差止め等を求めるとともに,商標法36条,民法709条又は不競法4条に基づいて,損害金2310万円及びその遅延損害金の支払を求めた事案である。

原判決は,①被告商品の包装箱に付した被告標章1の使用,被告カタログ及び被告ウエブサイトにおける被告標章2の各使用は,いずれも,被告商品が中央部分を取り外すと,中央部分に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識させるものであって,商品の出所を想起させるものではないと認められ,商標としての使用(商標的使用)には当たらないから,「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)に該当することを前提とする商標法36条に基づく差止請求及び民法709条に基づく不法行為損害賠償請求は理由がない,②被告商品の包装箱,被告ウエブサイト及び被告カタログに表示された被告各標章は,同様の理由により,被告の商品であることを示す商品等表示(不競法2条1項1号,2号)には当たらないから,不競法3条に基づく差止請求及び同法4条に基づく損害賠償請求も理由がない旨判断して,原告の請求をいずれも棄却した。

これに対し,原告は,原判決を不服として本件控訴を提起した。



第3 当裁判所の判断


当裁判所も,被告各標章は,被告商品の出所識別表示として使用されているものではないから,その使用が「登録商標に類似する商標の使用」(商標法37条1号)には該当せず,被告の商品であることを示す「商品等表示」(不競法2条1項1号,2号)にも当たらないとした原判決の判断は,正当であると判断する。

その理由は,以下のとおり当審における原告の主張に対する判断を付加訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」(原判決30頁12行~46頁21行)に記載のとおりであるから,これを引用する。

原判決30頁13行目を「1 商標的使用か否か―――事実認定」に改める。

原判決30頁23行目から31頁4行目「そこで,」までを削除する。

原判決31頁18行目から20行目に掛けての「上段の文字部分と下段の文字部分とが一体的に認識され,被告標章1全体から自然に『ドーナツクッション』の称呼が生じるものと認められる」を「上段の文字部分及び下段の文字部分は,一体的なまとまりのある『ドーナツクッション』と認識される。」と改める。

原判決31頁25行目の「被告標章2の各文字」から32頁1行目の「認められる。」までを「被告標章2の各文字は,一体的なまとまりのある『ドーナツクッション』と認識される。」と改める。

原判決32頁4行目から5行目に掛けての「両者が外観上不可分であるとまでは認められないので,」を「判断の便宜上」と改める。

原判決33頁5行目から6行目に掛けての「『ドーナツ椅子』,『ドーナツウォッチ』などの『ドーナツ』の語を商品名に冠した商品が販売されていた」を「『ドーナツ椅子』,『ドーナツチェアー』『ドーナツウォッチ』などの『ドーナツ』の語を先頭に付した商品が,第三者によって販売されていた」に改める。

原判決33頁8行目の「『ドーナツチェア』」を「『ドーナツチェアー』」に改める。

原判決34頁12行目冒頭から23行目末尾までを削除する。

原判決35頁1行目冒頭から35頁17行目末尾までを,以下のとおり改める。

「上記の点と前記アの認定を総合すれば,『ドーナツクッション』の語から,一般的には,中央部分に穴のあいた円形,輪形のクッション,あるいは,このような円形,輪形に似たクッションの観念が生じると認められる。

(イ) これに対し, 原告は,ドーナツの語を冠した複合語から,一般的に『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状の物』等が想起されることはない旨主張する。しかし,原告の主張は,失当である。

すなわち,前記のとおり,『ドーナツ』には,穴のあいた円形,輪形の形から,そのような形状と結びついた物との観念を生じると解するのが自然である。そして,『ドーナツ盤』,『ドーナツ椅子』等の『ドーナツ』を冠した複合語の用例があることをも勘案すれば,『ドーナツ』を冠した複合語からは,『ドーナツ』とそれに続く語との間の『型』又は『形』の語が省略されていたとしても,『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状の物』の観念が想起されるものと認められる。なお,原告は,中央部分に穴があるのはLPレコードもEPレコードも同じであるとも主張する。しかし,LPレコードの中心部の穴はEPレコードの中心部の穴に比べて極めて小さく,美観上は,その小さな穴を捨象しても差し支えない程度のものであるのに対して,EPレコードは,中心部に大きな穴があるとの印象を強く与える。そのような点を考慮するならば,EPレコードのみが『ドーナツ盤』と呼ばれることも,上記の結論に反するものではなく,ごく自然な用例といえる。

また,原告は,『ドーナツ椅子』,『ドーナツウォッチ』,『ドーナツスピン』などの用例は,特殊なものであり,このような用例があったとしても,『ドーナツ』から『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』との観念が生じると解することはできないと主張する。しかし,原告の上記主張も採用の限りでない。すなわち,ウエブサイト上のインターネット通販『Yahoo!ショッピング』の『ウッディストア・アクア』においては,『ドーナツ椅子』及び『ドーナツイス』が,中心部分に穴のある円形椅子に関して,中央部分に穴のない『丸形椅子』とは区別されて,表示されている(乙15)。また,株式会社ニーズのホームページにおいても,中央部分に穴のある,医療機関用の丸形椅子が『ドーナツチェアー』と表記されている(乙16)。さらに,『ドーナツスピン』についても,フィギアスケートのスピン技の名称として広く知られている(乙40,41)。その他,『ドーナツウォッチ』(乙33),『ドーナツ星雲M57』(乙37,38),『ドーナツターン』(乙42。自動車の運転方法)のような用例は,いずれも,中空部分を有する形状の物を指す語として使用されている。これらの『ドーナツ』を冠した複合語の用例は,『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』との観念を有する点において共通する。したがって,原告の上記主張は,理由がない。」

原判決35頁18行目冒頭から37頁16行目の末尾までを,以下のとおり改める。

「ウ 『ドーナツクッション』の語を含んだ宣伝広告,販売等の状況

(ア) 株式会社岸タンス店作成の平成21年9月29日付け証明書(乙43),有限会社シーワン作成の同日付け証明書(乙44),株式会社ユニークポイント作成の同年10月7日付け証明書(乙45),N作成の同日付け証明書(乙46),株式会社インフィストデザイン作成の同日付け証明書(乙47),株式会社幕傳作成の同月9日付け証明書(乙48)及びダブリュー・エンド・ジー・パブリックリレーションズ株式会社作成の同日付け証明書(乙49)中には,上記各事業者が,それぞれ取り扱っているクッションに『ドーナツクッション』という表示を継続的に使用している旨,クッションの取引業界においても,『ドーナツクッション』という表示のうち『ドーナツ』の部分を西洋菓子のドーナツの形状のように中央に切欠き部や窪みを設けた形状を意味するものとして使用している旨の記載部分がある。また,スキャン・グローバル・ロジスティックス株式会社作成の平成21年12月15日付け報告書(乙214)中にも,同社は,『ドーナツクッション』という表示のうち『ドーナツ』の部分を西洋菓子のドーナツの形状のように中央に切欠き部や窪みを設けた形状を意味するものと認識している旨の記載部分がある。

(イ) 乙50ないし90,92ないし111によれば,『ドーナツクッション』の語を付した多数のクッション商品が,中央部分に穴のあいた円形,輪形及び矩形(乙64)の形状のクッションの写真などとともに,宣伝広告され,販売される例が,数多く存在する。これらの商品は特定の製造者,販売者による商品に限られるものではないから,一般需要者において,『ドーナツクッション』の語について,特定の出所を表す記載であると認識することはないと解するのが自然である。

このうち,レハティームジャパン株式会社作成の『reha team 2005福祉用具カタログ』には,中央部に切欠きを設けた形状ではなく,窪みのある形状の『床ずれ予防』商品が,その写真とともに,『ナーシングラッグドーナツパッド』と表記されて,販売に付されている(乙20)。


(ウ) ウエブサイトにおける商品紹介では,例えば,中央部に切欠きを設けた矩形のクッションの写真とともに,姿勢矯正用のクッションの宣伝広告の説明がされているが,その説明文中には,『ドーナツクッションにもなっているので,産後・・お尻の痛いあなたにも』との説明がある(乙64)。同説明中の『ドーナツクッション』の部分は,尻部に負担を与えない中央部に切欠きないし窪みを設けた形状の商品であることを端的に示していると理解される。また,ウエブサイトにおける通信販売の商品紹介では,『セシールおすすめのドーナツクッションです。』との記載があるが,同記載も,特定の『ドーナツクッション』の語を,特有の形状を有することを示すために使用していると理解される(乙85)。さらに,ウエブサイトにおける需要者の意見として,『2日くらいでドーナツクッション無しでも座れる感じでした。』,『退院後もドーナツクッションが手放せなかったそうです。』,『ドーナツクッションなしでも楽勝でした』等の記載があり,同記載例も,前後の文脈から,『ドーナツクッション』の語を,尻部に負担を与えない中央部に切欠きないし窪みを設けた特有の形状を示す意味で使用していると理解される(乙82,83)。

(エ) また,前記のとおり,一般的に,『商品の形状を指す語』と『商品の用途を指す語』とを前後に組み合わせることによって,商品の性質等をわかりやすく表記する工夫は,例えば,『風船の形状をした椅子』を『バルーンチェア』と表記したり,『三日月の形状をした枕』を『クレセントボディピロー』と表記したりするようにしばしば行われることであり,特に,商品の宣伝広告,販売において,通常みられる(乙51)。

(オ) 上記認定した諸事実を総合すれば,『ドーナツクッション』の語は,これに接した需要者等において,中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似たドーナツ様の形状をしたクッションを指すものと認識し,特定の出所を表示するものとして認識することはないと解するのが相当である。この場合に,需要者等において,『ドーナツクッション』から,円形,輪形又はこれに似た形状のみを認識するのか,中央部に切欠きないし窪みを有する形状を認識するかについては,個別具体的な宣伝広告の態様や商品そのものの形態等を総合して,個別具体的に判断される筋合いであるといえる。」

原判決37頁18行目から19行目の「『ドーナツクッション』の称呼が生じる被告標章1全体から」を「被告標章1から」に改める。

原判決37頁23行目の冒頭から24行目の「生じることからすると」までを,「前記(1)イと同様の理由により,」に改める。

原判決38頁18行目の後に,行を改め,以下のとおり加える。

「ウ 原告は,各テンピュール商標は,被告のハウスマークとしての商標にすぎないから,被告各標章についてその出所表示機能を否定する根拠とはならないと主張する。しかし,原告の上記主張は採用の限りでない。すなわち,被告商品の包装箱に接した一般消費者は,被告標章1について,被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び包装箱の説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すことによって,その中央部分に穴のあいた輪形に似た形状となるクッションであるとの特徴を説明する目的で用いられたものであると認識するものと解される。また,被告ウエブサイト及び被告カタログにおける被告標章2についても,一般消費者は,同様の目的で用いられたものであると認識すると解される。よって,原告の上記主張は採用の限りでない。

また,原告は,テンピュール商標 1 及び3は,テンピュール商標2のように著名な商標であるとまではいえない以上,テンピュール商標 1 及び3の表示をもって,被告各標章の出所表示機能を否定する根拠とすることはできないとも主張する。しかし,原告の上記主張も,採用の限りでない。すなわち,たとえテンピュール商標1 及び3がテンピュール商標2のように著名な商標であるとまではいえないとしても,その図形と文字の組合せには特徴があり,その使用態様からみて需要者の注意を惹くものであることなどからすれば,需要者は,テンピュール商標 1 及び3が,当該商品の出所表示機能を有する部分であると認識すると認められる。したがって,原告の上記主張は採用の限りでない。

また,原告は,ウエブサイトのホームページ左上欄の表示は,当該サイトの通信販売業者が誰であるのかを示すものであるから,被告ウエブサイトのホームページ左上欄にあるテンピュール商標3が出所識別表示に当たるとはいえないと主張する。

しかし,原告の上記主張も採用の限りでない。すなわち,被告ウエブサイトのホームページ(甲6)には,その下段に『テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です。』との説明文があること,当該ホームページの最上部には『テンピュール・ジャパン|製品』とのホームページを特定する記載があり,さらに最下部にも『http://www.tempur-japan.co.jp/goods/goods/other/cushion/doughnut.html 』とのホームページを特定する記載があることに照らせば,需要者において当該サイトの通信販売業者が『テンピュール・ジャパン』であって,テンピュール商標3が商品の出所識別表示であると理解するものといえる。したがって,原告の上記主張は採用の限りでない。

さらに,原告は,被告はテンピュール商標2の使用を許諾された者にすぎず,商標権者ではないから(乙298),自らを商標権者であるとするかのような不正確なテンピュール商標2に係る説明文(「テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です」)をもって同商標に出所表示機能を認めることはできないと主張する。しかし,原告の上記主張も,採用の限りでない。すなわち,被告は,テンピュール商標2の専用使用権の設定登録を適法に受けた者であって(乙298),『テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です』との説明文は,必ずしも被告の専用使用権と矛盾するとはいえないから,原告の上記主張は採用の限りでない。」

原判決38頁21行目の「低反発素材を用いた本体とカバー等からなり,」を「テンピュール社製造に係る低反発素材を用いた,椅子の座部などに載置して使用するもので,腰を下ろしたときに,その弾力性によって衝撃や振動等を和らげるクッションであり,」に改める。

原判決39頁4行目の「(ア)a」を「(ア)」に,22行目の「b」を「(イ)」に,40頁20頁目の「c」を「(ウ)」に,41頁1行目の「d」を「(エ)」に,それぞれ改める。

原判決41頁8行目冒頭から43頁14行目末尾までを削除する。

原判決43頁21行目の②を③に,22行目の③を④に改める。

原判決43頁24行目冒頭から44頁14行目末尾までを削除する。

原判決44頁26行目冒頭から45頁18行目末尾までを削除する。

原判決45頁18行目の次に,行を改め,次のとおりの記載を加える。

「2 商標的使用か否か―――判断

上記の認定事実に基づいて,被告各標章の各表記態様が商標的使用であるか否かについて,判断する。

top
(1) 被告商品の包装箱における被告標章1の表記について

ア 被告商品の包装箱の表記態様について

前記のとおり,①被告商品の包装箱には,被告標章1が合計5個(表面,裏面,右側面,上面及び下面(底面)に各1個)表示されているところ,表面,裏面及び右側面の被告標章1は,被告商品の本体について,取り外された楕円筒形の中央部分とその取り外し後に楕円形の穴があいた本体のイメージ図と一緒に表示されていること,②被告商品の包装箱の表面には,テンピュール商標1及び『中央にスーパーソフトな素材を用いてデリケートな部分を優しくサポート お産の後の妊婦さんや痔でお悩みの方などにお薦めのシートクッション。中央部分にはスーパーソフトなテンピュールRを用いて安らげる座りごこちを提供します。』との説明文が,裏面には,テンピュール商標1及び『・・・スーパーソフト部分は着脱が可能となっています。』との説明文が表示されていること,③右側面,上面及び下面(底面)の被告標章1は,テンピュール商標1と一緒に表示されていること,④被告標章1から中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッションあるいはこのような円形,輪形に似た形状のクッションの観念が生じること,⑤各テンピュール商標(テンピュール商標1ないし3)は,被告が販売する商品とともに全国放送のテレビ番組,新聞,雑誌等でたびたび紹介され,『テンピュール』の標準文字からなるテンピュール商標2は,平成20年7月当時までに,被告が販売する商品の商標として著名となっていたことを総合すると,被告商品の包装箱に接した取引者,需要者は,被告商品の包装箱に付されたテンピュール商標1,及び説明文中の『テンピュールR』の表示をもって,被告の出所表示であると認識すると解するのが相当である。

イ 『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する認識

前記のとおり,①『ドーナツクッション』の語を付した多数のクッション商品が,中央部分に穴のあいた円形,輪形及び矩形の形状のクッションの写真や図などとともに,宣伝広告され,販売される例が,存在し,これらの商品は特定の製造者,販売者による商品に限られるものではないことから,一般需要者において,『ドーナツクッション』の語について,特定の出所を表す表記であるとは認識されていないこと,②一般消費者においても,ウエブサイト等の書き込みにおいて,『ドーナツクッション』の語を,特有の形状を有するクッションとの意味で使用しており,特定の出所を示すものとして使用していない例が少なくないこと,③『商品の形状等を指す語』と『商品の種類を指す語』とを前後に組み合わせることによって商品をわかりやすく表記することは,一般に行われていることからすれば,被告標章1の出所識別力は極めて弱いといえる。

ウ 以上の経緯を総合するならば,被告商品の包装箱に接した一般消費者は,被告標章1について,被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び上記②の説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起するものではないものと認められる。

そうすると,被告標章1が被告商品の包装箱において商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告商品の包装箱における被告標章1の使用は,商標としての使用(商標的使用)に当たらないというべきである。

エ これに対し,原告は,以下のとおり主張するが,いずれも理由がない。

(ア) 被告商品の包装箱には,被告標章1以外には,被告商品の商品名に該当する表示は一切ないこと,表面及び裏面の商品の説明文に商品の種類を示す表示として『シートクッション』という語が用いられていることから,被告標章1は,被告商品の出所を表示するものとして使用されていると主張する。

しかし,原告の主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,被告商品の包装箱の表面には,『お産の後の妊婦さんや痔でお悩みの方などにお薦めのシートクッション。中央部分にはスーパーソフトなテンピュールRを用いて安らげる座りごこちを提供します。』との説明文,同裏面には,『抜群のコンビネーションが自然な座りごこちを実現 テンピュールRのドーナツクッションは,一見すると通常のシートクッションと変わりませんが,デリケートな部分が触れるところをスーパーソフトのテンピュールRで構成することにより,自然な座りごこちを実現しています。・・・』との説明がされ,『シートクッション』の語は,被告商品が着座して使用するクッションであることを意味するものとして用いられていることが認められる。『シートクッション』の語が,このような文脈で説明的に用いられたからといって,『ドーナツクッション』からなる被告標章1が商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられていることの根拠となるものではない。

(イ) 原告は,被告商品は,四角形に近い形状であるから,『ドーナツクッション』より生じる観念とは一致しないと主張する。

しかし,原告の上記主張も採用の限りでない。すなわち,被告商品は,その外縁がやや四角形に近いとはいえ,その中央部分を取り外した場合には楕円形の穴が中央部分にできるものであって,取り外した状態では全体として,『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』であるといえるから(甲5の1,甲5の3),原告の上記主張は採用の限りでない。

(ウ) 原告は,被告商品は,その中央部分を取り外さないで使用することが推奨されている上,たとえ取り外したとしても,その中身は,肌色のデザイン性のない中綿であるので(甲242の3~6),一般消費者としては,被告商品に付属している四角形の穴のないカバーを取り付けて利用するはずであるといえるから(甲242の1~8),被告商品が『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』であると理解されるとはいえないと主張する。

しかし,原告の上記主張は採用の限りでない。すなわち,被告商品の包装箱には被告商品の中央部分を取り除いてカバーを取り付ける前の,楕円形の穴が内側にあいている状態が明確に図示されており,その状態はクッションとしては特徴的なものであって,『スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。』(甲6),『お産の後の妊婦さんや痔でお 悩みの方などにお薦めのシートクッション』(甲44の1,2,甲45の1)との説明文等があることからみても,需要者がそれらの商品特性を理解して,被告商品に付された『ドーナツ』の語句が『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状』を表現したものであると理解するといえる。

したがって,中央部分を取り外す前の状態又はカバー取付後の状態を強調して上記の理解が生じ得ないとする原告の前記主張は採用の限りでない。

(エ) 原告は,商標が商品の形状を説明する機能を有すると同時に出所表示機能をも果たすことはあり得るから,被告各標章が形状表示機能を有するとしても,そのことが,出所表示機能を否定する根拠とはならないと主張する。

しかし,原告の上記主張は採用の限りでない。すなわち,被告各標章の表記態様,各テンピュール商標の存在や,説明文等をも総合考慮すれば,被告各標章は,出所の表示として使用されているものとはいえない。

したがって,原告の上記主張は,採用することができない。

(2) 被告ウエブサイトにおける被告標章2の表記について

前記のとおり,被告ウエブサイトの表記態様については,別紙6の写真に示すとおりであり,①中央部に,被告標章2が表示され,その下にカバーが取り付けられた被告商品の写真が掲載されていること,②写真右側に,『スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。』との説明文が記載されていること,③左側上部に,テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が掲載されていること,④下部に,『テンピュールはテンピュール・ジャパンの登録商標です』との文章が掲載されていること,⑤被告標章2から中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッションあるいはこのような円形,輪形に似た形状のクッションの観念が生じること,⑥『テンピュール』の標準文字からなるテンピュール商標2は,平成20年7月当時までに,被告が販売する商品の商標として著名となっていたことが認められる。


上記の事実のほかに,前記(1)のイ記載のとおり,『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する一般取引者及び需要者の認識に照らすならば,被告標章2の出所識別力は極めて弱いといえることを総合すると,被告ウエブサイトの上記部分に接した一般消費者においては,被告標章2について,上記説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起するものではないものと認められる。

そうすると,被告標章2が被告商品のウエブサイトにおいて商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告商品のウエブサイトにおける被告標章2の使用は,本来の商標としての使用に当たらないというべきである。

(3) 被告カタログにおける被告標章2の表記について

前記認定のとおり,被告カタログにおける被告標章2の表記は,①表表紙の中央上部に,『テンピュールR総合カタログ』,『2009Autumn-2009Winter』との文字,『TEMPUR』の文字,テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が記載されていること,②被告商品を紹介している部分において,上から順に,被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章,被告商品の写真,『スーパーソフトの素材を使用した中央部分は取り外し可能。着座にデリケートになっている方におすすめです。』との説明文が記載されていること,③裏表紙の中央部に,テンピュール商標3と構成が同一で色彩が異なる標章が記載されていること,④また,被告ウエブサイトには,被告販売に係る他の商品も表記されているが,例えば,『座布団』,『トランジットピロー』,『New トラベルピロー』など,他の商品についても,およそ出所識別を有しない一般名詞が用いられていること,⑤被告標章2から中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッションあるいはこのような円形,輪形に似た形状のクッションの観念が生じること,⑥『テンピュール』の標準文字からなるテンピュール商標2は,平成20年7月当時までに,被告が販売する商品の商標として著名となっていたことが認められる。

上記の事実に前記(1)のイ記載のとおり,『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する一般取引者及び需要者の認識に照らすならば,被告標章2の出所識別力は極めて弱いといえることを総合すると,被告カタログの上記部分に接した一般消費者においては,上記説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起するものではないものと認められる。

そうすると,被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章が被告カタログにおいて商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告カタログにおける被告標章2と構成が同一で,文字色が黒色の文字標章の使用は,本来の商標としての使用に当たらないというべきである。」

原判決45頁19行目の「(6)」を「(4)」に改める。

原判決45頁1行目の「2 争点2-1」を「3 争点2-1」に改める。

原判決46頁22行目の冒頭から,24行目末尾までを,以下のとおり改める。

「4 小括

以上のとおり,①『ドーナツ』の語には,穴のあいた円形,輪形の形をした物の観念が含まれており,『ドーナツ盤』,『ドーナツ椅子』,『ドーナツスピン』,『ドーナツ星雲』等の『ドーナツ』を冠した複合語の用例が存在していることを総合すると,『ドーナツ』を冠した複合語からは,『ドーナツ』とそれに続く語との間の『型』又は『形』の文字が付加されていない場合であったとしても,『中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状の物あるいはこのような円形,輪形に似た形状の物』の観念が想 起されること,②被告商品の包装箱,被告ウエブサイト又は被告カタログには,その出所識別表示としては,各テンピュール商標が別に存在しており,被告標章1(ドーナツ/クッション)又は2(ドーナツクッション)については,被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び包装箱の説明文等と相俟って,被告商品がその中央部分を取り外すと,中央部分に穴のあいた輪形に似た形状となるクッションであることを説明するために用いられたものであると需要者において認識し,商品の出所を想起するものではないといえることなどに鑑みれば,被告各標章は,被告商品の出所識別表示として使用されているものではないと認められるから,その使用が『登録商標に類似する商標の使用』 (商標法37条1号)には該当せず,被告の商品であることを示す『商品等表示』(不競法2条1項1号,2号)にも当たらないというべきである。

その他,原告は,縷々主張するが,いずれも採用の限りでない。

5 結論

以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原判決は相当であって,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。」

知的財産高等裁判所第3部



裁判長裁判官
飯 村 敏 明



裁判官
齊 木 教 朗



裁判官
武 宮 英 子



「被告標章目録」









「商品目録」


商品名:ドーナツクッション
販売元:被告




「原告登録商標目録」(甲3,4)


登録商標

登録番号 第822951号
出願年月日 昭和42年11月10日
登録年月日 昭和44年6月24日
更新登録日 平成21年1月13日
商品の区分及び指定商品

第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」

第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」

第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,
布団側,まくらカバー,毛布」

24



「被告商標目録」



1 登録番号 第4355267号(乙298,302,303)
出願日 平成11年5月14日
設定登録日 平成12年1月28日
更新登録日 平成21年12月22日
商標権者 ダン-フォーム・アンパルトセルスカプ
専用使用権の設定登録日 平成20年10月31日
専用使用権の範囲 地域 日本
期間 本商標権の存続期間中(平成22年1月28
日まで)
内容 「指定商品 第10類 医療用まくら 医療
用クッション,医療用マットレス,医療用
の補助器具及び矯正器具,その他の医療用
機械器具 第20類 クッション,座布
団,まくら,マットレス」
登録商標


25




2 登録番号 第4566278号(乙299,304)
出願日 平成12年5月1日
設定登録日 平成14年5月10日
商標権者 ダン-フォーム・アンパルトセルスカプ
専用使用権の設定登録日 平成20年10月31日
専用使用権の範囲 地域 日本
期間 本商標権の存続期間中(平成24年5月10
日まで)
内容 「指定商品 第10類・・・,第20類 ・・・
クッション,座布団,まくら,マットレ
ス・・・」
登録商標 テンピュール(標準文字)


3 国際登録番号 第961000号(乙301)
国際登録日 平成20年3月12日(2008年3月12日)
登録日 平成21年12月25日(2009年12月25日)

商標権者 Dan-Foam ApS
登録商標

top



縮小版




【商標の使用…否定】「事実認定」

あてはめ例

イ 『ドーナツクッション』の語を付したクッション商品に対する認識

前記のとおり,①『ドーナツクッション』の語を付した多数のクッション商品が,中央部分に穴のあいた円形,輪形及び矩形の形状のクッションの写真や図などとともに,宣伝広告され,販売される例が,存在し,これらの商品は特定の製造者,販売者による商品に限られるものではないことから,一般需要者において,『ドーナツクッション』の語について,特定の出所を表す表記であるとは認識されていないこと,②一般消費者においても,ウエブサイト等の書き込みにおいて,『ドーナツクッション』の語を,特有の形状を有するクッションとの意味で使用しており,特定の出所を示すものとして使用していない例が少なくないこと,③『商品の形状等を指す語』と『商品の種類を指す語』とを前後に組み合わせることによって商品をわかりやすく表記することは,一般に行われていることからすれば,被告標章1の出所識別力は極めて弱いといえる。

ウ 以上の経緯を総合するならば,被告商品の包装箱に接した一般消費者は,被告標章1について,被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び上記②の説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起するものではないものと認められる。

そうすると,被告標章1が被告商品の包装箱において商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告商品の包装箱における被告標章1の使用は,商標としての使用(商標的使用)に当たらないというべきである。

top



H230331現在のコメント


(知財高裁平成23年3月28日判決(平成22年(ネ)第10084号販売差止等請求控訴事件))

【商標の使用…否定】「事実認定」の判決です。

top

Last Update: 2011-03-31 15:13:00 JST

top
……………………………………………………判決末尾top
メインサイト(Sphinx利用)知財高裁のまとめMY facebook弁護士・弁理士 岩原義則知的財産法研究会ITと法律研究会弁護士・弁理士サービスのフェイスブック活用研究会

2011年3月24日木曜日

商標:【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」:(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))






商標:【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」:(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))





知的財産高等裁判所第4部「滝澤孝臣コート」


平成22(行ケ)10356 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
平成23年03月24日 知的財産高等裁判所

(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))


top




【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」


(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))

top


判示【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」




第2 事案の概要

本件は,原告が,被告の下記1の本件商標に係る商標登録を無効とすることを求める原告の下記2の本件審判請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,原告が本件審決の取消しを求める事案である。
top



第4 当裁判所の判断



1 本件商標の商標法3条1項3号の該当性について

(1) 本件商標の構成は,前記第2の1に記載のとおり,右側やや上に「黒糖」,
左側に「ドーナツ棒」の各文字を2列に縦書きしてなるものであって,右側の「黒
糖」の文字はやや細く,左側の「ドーナツ棒」の文字はやや太く,かつ,片仮名を
やや崩したように表し,いずれの文字も手書き風に標記されているものである。ま
た,本件商品の指定商品は,前記第2の1に記載のとおり,第30類「黒糖を使用
した棒状形のドーナツ菓子」である。

(2) 「黒糖」とは,黒砂糖と同義であり,「まだ精製していない茶褐色の砂糖。
甘蔗汁をしぼって鍋で煮詰めたままのもの。」(広辞苑第5版・平成10年11月
11日発行)とされており,「ドーナツ」とは,「小麦粉に砂糖・バター・卵・ベ
ーキング-パウダーまたはイーストなどをまぜてこね,輪形・円形などに作って油
で揚げた洋菓子。」(同上)とされているから,本件商標のうち「黒糖」と「ドー
ナツ」との部分は,洋菓子であるドーナツの品質及び原材料を普通に用いられる方
法で表示している。そして,「棒」は,「ドーナツ」の文字の直後に置かれること
によって,ドーナツの形状を普通に用いられる方法で表示しているといえる。した
がって,本件商標は,その指定商品に用いられた場合,まさに「黒糖を使用した棒
状形のドーナツ菓子」の品質,原材料及び形状を普通に用いられる方法で表示する
標章であるといえる(商標法3条1項3号)。

(3) なお,原告は,本件商標が指定商品の普通名称を普通に用いられる方法で
表示している(商標法3条1項1号参照)にすぎないから,そもそも商標法3条2
項が適用される場合ではない旨を主張する。

6
しかしながら,本件で提出された全証拠及び弁論の全趣旨によっても,「黒糖を
使用した棒状形のドーナツ菓子」について,「黒糖ドーナツ棒」との普通名称が存
在し,あるいは普通に用いられる方法として表示されているとは認められない。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものとして採用できない。

top



2 本件商標の商標法3条2項の該当性について

(1) 認定事実
証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。

ア 本件商標の使用開始時期等
被告は,主たる営業所を熊本市に置き,菓子類を製造・販売する会社であるが,
かねてより原材料に黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子(以下「本件商品」とい
う。)を製造・販売していたところ(甲60,78,乙2の1),平成6年秋ころ,
日本生活協同組合連合会・学校生活協同組合の通信販売を通じた本件商品の販売を
開始した。被告は,その際,上記通信販売カタログに本件商品の包装箱の写真を掲
載したが,当該包装箱は,縦長直方体であり,黒色である包装箱表面には本件商標
と形状において同一と見られ,「黒糖」部分が赤色で「ドーナツ棒」部分が金色の
標章が掲示されており,併せて,当該包装箱側面の黒色部分には,当該標章の各文
字を「黒糖」と「ドーナツ棒」とで2段に横書きした標章が掲示されていた(甲2
9,59,67)。

top
イ 本件商標の使用期間,使用地域,使用態様等
(ア) 被告は,平成7年ころ,自社の通信販売カタログ(3000部)の刊行を
開始して以来,平成19年6月までにこれを合計29回刊行し,遅くとも平成13
年10月以降は,そこに前記包装箱や,本件商標と形状において同一と見られる前
記標章を「黒糖」と「ドーナツ棒」とで2段に横書きした紙片をその側面に貼付し
た金属製の包装箱又は本件商品の個別の透明ビニール製包装袋であって,当該標章
を1段に横書きしたものが白色で印刷されたもの(以下,これらの包装箱及び包装
袋を併せて「本件包装」という。)の写真を毎号掲載した。そして,上記カタログ

7
の発行部数は,例えば平成18年6月刊行のものが6万5000部になるなど,お
おむね増加傾向にある(甲30~42,60,78,乙2の1,11)。
また,被告は,遅くとも平成13年ころには,自社のホームページを開設して,
本件商品を含む自社商品の広告等を開始した(甲30)ほか,自社の店舗に加えて,
平成18年4月,那覇市に那覇本店を,同年5月,東京都赤坂に東京赤坂店を,そ
れぞれ出店して本件商品の販売を開始し,更に本件登録審決時点までに,熊本市内
の鶴屋百貨店,熊本空港,九州自動車道宮原サービスエリア,宮崎空港,大分空港,
福岡空港等で本件商品の販売を開始していた(甲60,78,乙2の1)。
(イ) 被告は,平成16年,神奈川県の情報誌である「ぱど」の同年5月14日
号(配布場所及び部数は,横須賀・三浦版2エリア11万1100部,首都圏版1
11エリア659万8200部,全国210エリア1196万9200部。甲1
8)並びに東京及び横浜周辺で配付された無料情報誌である「ラーラぱど」の同月
18日号(配布場所及び部数は,東京都内19万5000部,横浜・川崎市内6万
8000部。甲19)に,自社名及び本件包装の写真とともに本件商品の広告を掲
載したほか,熊本日日新聞刊行の情報誌「まいらいふ」同年6月号(甲12),熊
本日日新聞の同年9月16日号(甲10),「くまにちすぱいす」同年11月20
日号(甲17)その他の印刷媒体にその広告を掲載し,同年9月,そのテレビ広告
を鹿児島読売テレビ及び熊本県民テレビにて複数回放映した(乙10)。さらに,
被告は,岡山県所在の山陽新聞社が刊行する情報誌である「レディア」152号
(平成17年1月27日刊行。甲24,乙4の2),琉球新報社刊行の情報誌「う
ない」平成17年5月・6月合併号(甲26)及び熊本日日新聞刊行の情報誌「デ
リすぱ」同年7月1日号(甲25)その他の印刷媒体に,いずれも自社名及び本件
包装の写真とともに本件商品の広告を掲載した(甲60,78,乙2の1)。
なお,被告及び本件商品を含む被告製造商品に関する広告宣伝費は,平成17年
8月ないし平成18年7月が4405万4024円,同年8月ないし平成19年7
月が8923万6193円であった(乙2の1)。

8
(ウ) 被告は,平成7年ころ,郵便局のふるさと小包全国版に本件商品の広告を
掲載し(甲14,60,78,乙2の1),同年4月,日本生活協同組合連合会を
通じて全国150の単位生活協同組合に本件商品の供給を開始し(甲7~9,13,
27,60,78,乙2の1),大丸百貨店(甲16,61,62,68),三越
百貨店(甲2)及び高島屋百貨店(甲15,23)といった大手百貨店による通信
販売にも本件商品の供給を開始したほか,遅くとも平成16年夏ころまでには,京
都府所在の株式会社千趣会(甲22)による通信販売にも本件商品の供給を開始し
たが(甲60,78,乙2の1),これらの通信販売カタログには,本件包装の写
真が掲載されており,自社名が掲載されているものもあった。
なお,学校生活協同組合による本件商品の売上高は,平成12年4月ないし平成
18年5月に9602万4000円(甲1),キッスビー健全食株式会社(三越百
貨店)による本件商品の売上高は,平成13年3月ないし平成18年5月に707
万6000円(甲2),そして株式会社大丸ホームショッピングによる本件商品の
売上高は,平成10年2月ないし平成18年5月に7223万0000円(甲6
1)であった。
(エ) 被告は,平成8年ころ,日本直販による全国テレビショッピングを通じて
本件商品の販売を開始し(平成11年ころまで),平成13年,QVCテレビショ
ッピング及びTBSテレビショッピング(関東エリア)にて本件商品の販売を開始
した(甲60,78,乙の2の1)。
(オ) インターネット上のショッピングモールであるQVC(甲47,50)は,
平成16年8月10日までには,楽天市場(甲50)及びYAHOOショッピング
(甲49,甲51)は,平成17年12月18日までには,シャディ Online(甲
48)は,平成18年6月26日までには,いずれも,本件包装の写真を掲示して
本件商品をインターネット上で販売していた。
(カ) テレビ局であるTKU熊本は,平成15年9月4日,被告及び本件商品に
ついて紹介する番組を放映し,その要旨は,その後,本件包装の写真とともに,そ

9
のホームページに掲載され(甲46),平成16年12月にも,本件商品等を紹介
する番組を放映したほか,同じくテレビ局であるRKK熊本放送も,同年9月,本
件商品等を紹介する番組を放映した(甲60,78,乙2の1)。
スカイネットアジア航空は,平成15年12月,その機内誌である「スカイネッ
ト」に,本件包装の写真とともに,被告及び本件商品を紹介する記事を掲載し(甲
6),熊本県内を対象とする情報誌である月刊くまもと「家族時間」も,同月刊行
の第5号で,本件包装の写真とともに被告及び本件商品を紹介する記事を掲載した
(甲11)。また,日本経済新聞は,平成16年4月3日付け(甲43)及び平成
18年9月9日付け(甲65,乙5)の九州版において,朝日新聞は,平成16年
4月9日付けの熊本版において(甲44),主として東京圏及び大阪圏で販売され
ている夕刊フジも,同年8月8日付けのもので(甲21,乙4の1),それぞれ本
件包装の写真とともに,被告及び本件商品を紹介する記事を掲載し,朝日新聞は,
その後,当該記事を同紙のインターネット版にも掲載した(甲45)。
さらに,熊本市で刊行されている情報誌「モコス」は,同年12月16日刊行の
平成17年1月号で(甲20),コープ出版株式会社による「CO-OP NAV
I」は,平成18年8月号で(甲63,64),いずれも本件包装の写真とともに
被告及び本件商品を紹介する記事を掲載した。
(キ) 被告は,平成14年11月,熊本市で開催された第24回全国菓子大博覧
会において,本件商品に関して「リッチモントクラブ賞」と称するものを受賞した
(甲5,60,69~72,74,78,81,乙2の1)。

top
ウ 本件商品の販売数量又は売上高
(ア) 被告は,平成6年ころ,生活協同組合による通信販売で本件商品2万50
00箱を売り上げ,2325万円の売上げを得た(甲60)。
被告のその後の売上総額は,平成16年8月ないし平成17年7月が5億667
2万7717円,同年8月ないし平成18年7月が7億5122万0682円,同
年8月ないし平成19年7月(本件商品のこの期間の生産数は,合計3414万1

10
976本である。)が10億8919万9297円であるが(以上合計24億07
14万7696円),本件商品がその売上総額の約7割を占めているから,本件商
品の売上高は,平成18年8月ないし平成19年7月の1年間で約7億6244万
円となる(乙2の1・4)。
なお,本件商品1本の販売単価は,概ね約23円ないし50円程度である(甲6
~9,13~16,20,22,23,25~27,29~42,47~50,6
2,67,68)。

top
エ 本件商標に類似した他の標章の存否
原材料に黒糖を使用したと思われる棒状のドーナツ菓子は,我が国に少なからず
存在するが,これらに用いられてる標章には,「黒棒」(トリオ食品株式会社製造。
甲104の1),「黒棒名門」(クロボー製菓株式会社製造。甲104の9),
「黒糖ケーキドーナツ」,「ミニ黒糖ドーナツ」(いずれもエーケーエム株式会社
製造。甲104の10・12),「豆乳ドーナツ(黒糖)」,「黒糖豆乳ドーナ
ツ」(いずれも山田製菓株式会社製造。甲104の15・16),「黒糖豆乳ドー
ナツ」(株式会社木村製造。甲104の18),「可愛いくろぼう」(株式会社橋
本製菓製造。甲104の25),「黒糖みつ手づくりスティックドーナツ」(有限
会社優華堂製造。甲104の26)及び「かりんとうドーナツ黒糖味」(株式会社
アンデル製造。甲106の1)などがある。しかし,上記の菓子について,平成6
年秋ころから本件登録審決時点(平成19年7月11日)までの間に「黒糖ドーナ
ツ棒(コクトウドーナツボウ)」との外観又は称呼を有する標章を使用して販売し
ていることが確認できるのは,被告のみである。

top
(2) 本件商標の商標法3条2項の該当性について
ア ある標章が商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務
に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは,出願に
係る商標と外観において同一と見られる標章が指定商品とされる商品に使用された
ことを前提として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品
の数量又は売上高等及び当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似
した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである。

イ これを本件についてみると,前記認定のとおり,被告は,平成6年秋ころ以
来,本件登録審決時点(平成19年7月11日)に至るまでの約13年弱の間,本
件商標と形状において同一と見られ,「黒糖」部分が赤色で「ドーナツ棒」部分が
金色の標章や,本件商標と形状において同一と見られる各文字を1段又は「黒糖」
と「ドーナツ棒」とで2段に横書きした標章を,一貫して指定商品である黒糖を使
用した棒状形のドーナツ菓子(本件商品)の包装(本件包装)に付して使用してい
る。
そして,被告は,上記の期間中,本件包装が付された本件商品を,九州地方を中
心としつつもそれ以外の地の店舗や,テレビショッピング番組並びに自社及び複数
のインターネット上のショッピングモールを通じて販売していたほか,本件商品を
自社及び複数の大手百貨店等による通信販売により全国的に販売するに当たり,本
件包装の写真を通信販売カタログ,テレビ広告,複数地域の各種情報誌又は新聞に,
しばしば自社名とともに本件商品の広告として掲載しており,その宣伝広告費も,
本件登録審決当時に先立つ1年間で8923万6193円に及んでいる。また,地
方テレビ局の番組,各種情報誌及び新聞も,本件包装の写真とともに被告及び本件
商品を紹介しており,その結果がインターネット上のホームページに掲載されたも
のもあった。
さらに,被告による本件商品の生産数は,本件登録審決当時に先立つ1年間で3
414万1976本と相当大量であり,同時期の売上高である約7億6244万円
という金額も,1本概ね約23円ないし50円程度という本件商品の販売単価に比
較するとき,相当高額なものに及んでいるといえる。
他方で,本件商品と同種の商品は,我が国に少なからず存在し,これらに関する
標章には各種のものがあるが,当該商品について,平成6年秋ころから本件登録審
決時点(平成19年7月11日)までの間に「黒糖ドーナツ棒(コクトウドーナツ

12
ボウ)」との外観又は称呼を有する標章を使用して販売していることが確認できる
のは,被告のみである一方,他の商品に付された標章には「黒糖」,「ドーナツ」
及び「棒」を組み合わせたものは存在せず,むしろ,本件商標とは外観及び称呼を
異にするものしか証拠上は確認できない。
ウ 以上のとおり,本件商標と外観において同一と見られる標章を付した包装
(本件包装)が指定商品とされる本件商品に使用されており,その使用開始時期,
使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の数量又は売上高等及び本件商品又はこ
れに類似した商品に関する本件商標に類似した他の標章の存否などの事情を総合考
慮するとき,本件商標は,使用をされた結果,本件登録審決時点(平成19年7月
11日)において,需要者が被告の業務に係る商品であることを認識することがで
きるものになっていたものと認めることができる。

エ これに対して,原告は,本件商標が熊本を中心として九州地方だけで使用さ
れていた事実が立証されたとしても,それ以上の立証はないなどとして,本件商標
が商標法3条2項の要件を満たさないと主張する。しかしながら,被告による本件
商標の使用態様等は,前記認定のとおりであって,原告の上記主張は,この点にお
いても,その前提を欠くものとして採用することができない。
オ したがって,本件商標の商標法3条2項の該当性を認めた本件審決の判断に
誤りはないといわなければならない。
3 結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由は理由がなく,原告の請求は棄却さ
れるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣


top



縮小版【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」



top
「基準」

「ある標章が商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは,出願に係る商標と外観において同一と見られる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の数量又は売上高等及び当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである。 」(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))

top
「判断」「あてはめ例」

イ これを本件についてみると,前記認定のとおり,被告は,平成6年秋ころ以来,本件登録審決時点(平成19年7月11日)に至るまでの約13年弱の間,本件商標と形状において同一と見られ,「黒糖」部分が赤色で「ドーナツ棒」部分が金色の標章や,本件商標と形状において同一と見られる各文字を1段又は「黒糖」と「ドーナツ棒」とで2段に横書きした標章を,一貫して指定商品である黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子(本件商品)の包装(本件包装)に付して使用している。

そして,被告は,上記の期間中,本件包装が付された本件商品を,九州地方を中心としつつもそれ以外の地の店舗や,テレビショッピング番組並びに自社及び複数のインターネット上のショッピングモールを通じて販売していたほか,本件商品を自社及び複数の大手百貨店等による通信販売により全国的に販売するに当たり,本件包装の写真を通信販売カタログ,テレビ広告,複数地域の各種情報誌又は新聞に,しばしば自社名とともに本件商品の広告として掲載しており,その宣伝広告費も,本件登録審決当時に先立つ1年間で8923万6193円に及んでいる。また,地方テレビ局の番組,各種情報誌及び新聞も,本件包装の写真とともに被告及び本件商品を紹介しており,その結果がインターネット上のホームページに掲載されたものもあった。

さらに,被告による本件商品の生産数は,本件登録審決当時に先立つ1年間で3414万1976本と相当大量であり,同時期の売上高である約7億6244万円という金額も,1本概ね約23円ないし50円程度という本件商品の販売単価に比較するとき,相当高額なものに及んでいるといえる。

他方で,本件商品と同種の商品は,我が国に少なからず存在し,これらに関する標章には各種のものがあるが,当該商品について,平成6年秋ころから本件登録審決時点(平成19年7月11日)までの間に「黒糖ドーナツ棒(コクトウドーナツボウ)」との外観又は称呼を有する標章を使用して販売していることが確認できるのは,被告のみである一方,他の商品に付された標章には「黒糖」,「ドーナツ」及び「棒」を組み合わせたものは存在せず,むしろ,本件商標とは外観及び称呼を異にするものしか証拠上は確認できない。

ウ 以上のとおり,本件商標と外観において同一と見られる標章を付した包装(本件包装)が指定商品とされる本件商品に使用されており,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の数量又は売上高等及び本件商品又はこれに類似した商品に関する本件商標に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮するとき,本件商標は,使用をされた結果,本件登録審決時点(平成19年7月11日)において,需要者が被告の業務に係る商品であることを認識することができるものになっていたものと認めることができる。

エ これに対して,原告は,本件商標が熊本を中心として九州地方だけで使用されていた事実が立証されたとしても,それ以上の立証はないなどとして,本件商標が商標法3条2項の要件を満たさないと主張する。しかしながら,被告による本件商標の使用態様等は,前記認定のとおりであって,原告の上記主張は,この点においても,その前提を欠くものとして採用することができない。

オ したがって,本件商標の商標法3条2項の該当性を認めた本件審決の判断に誤りはないといわなければならない。



H230328現在のコメント


(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))

【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」について判断しました。


top

Last Update: 2011-03-28 20:59:30 JST

top
……………………………………………………判決末尾top
メインサイト(Sphinx利用)知財高裁のまとめMY facebook弁護士・弁理士 岩原義則知的財産法研究会ITと法律研究会弁護士・弁理士サービスのフェイスブック活用研究会

2011年3月17日木曜日

商標:【不使用取消,「使用」(商標法2条3項1号)】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10359号審決取消請求事件))






商標:【不使用取消,「使用」(商標法2条3項1号)】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10359号審決取消請求事件))





知的財産高等裁判所第4部「滝澤孝臣コート」


平成22(行ケ)10359 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
平成23年03月17日 知的財産高等裁判所

(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10359号審決取消請求事件))


top




【不使用取消,「使用」(商標法2条3項1号)】「事実認定」


(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10359号審決取消請求事件))

top


判示・縮小版なし


top



第2 事案の概要

本件は,原告が,原告の下記1の本件商標に係る商標登録に対する不使用を理由とする当該登録の取消しを求める被告の下記2の本件審判請求について,特許庁が同請求を認めた別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。

top



第4 当裁判所の判断


取消事由1(本件商標を使用していると認められないとした判断の誤り)に
ついて
(1)
本件使用商標について
証拠(以下の括弧内に掲記するもの)及び弁論の全趣旨によると,次の事実を認
めることができる。

原告は,昭和17年に創立され,昭和50年に法人設立認可を受けた照明器
具の製造・販売を行う我が国の主要な事業者及び団体を会員として構成する社団法
人であって,照明器具及びその支持・制御装置に関する調査及び研究,情報の収集
及び提供,普及及び啓発,規格等の立案及び推進等を行うことにより,照明器具工
業及び関連産業の健全な発展を図り,もって産業の振興に資するとともに,国民生
活における安全性の確保と生活文化の向上に寄与することを目的とし,エネルギー
の有効利用の促進等の活動を行うとともに,特別事業として,非常用照明器具自主
評定事業や埋込み形照明器具の自主認証等を行っている(甲1,2,20,2


  • 13 -


1)。

上記アのうち,非常用照明器具自主評定事業とは,建築基準法で規定されて
いる非常用照明器具の照明設備のうち,非常用照明器具につき,非常用照明器具自
主評定委員会を組織して,基準の制定,事業者登録,型式評定,事業者立入調査,
買上試験の実施等を行うものであって,原告は,非常用照明器具の自主評定を受け
ようとする製造事業者からの申請を受けると,自主評定委員会において,申請書類
の審査及び実地調査を経た上,登録可とされると事業者登録を行い,さらに,当該
照明器具が原告の非常用照明器具についての規格である「非常用照明器具技術基準
(JIL5501)」(以下「JIL5501」という。)に適合しているかどうかを審議し,評
定可となった場合には,当該製造事業者に対し,評定証を交付するとともに,当該
照明器具が JIL5501 に適合していることを証する標章である本件使用商標1を当該
器具に貼付することを許可し,登録事業者は,本件使用商標1を作成し,その使用
料を原告に支払った上で,当該器具に本件使用商標1を貼付して販売する(甲2,
3,4,50,52,55,56,60,62,63)。

上記アのうち,埋込み形照明器具の自主認証とは,S形ダウンライトを含む
埋込み形照明器具につき,埋込み形照明器具管理委員会を組織して,基準の制定,
事業者登録,型式評定,工場立入調査,製品登録,買上試験等の業務を行うもので
あって,原告は,埋込み形照明器具の製品登録を受けようとする製造事業者からの
申請を受けると,埋込み形照明器具管理委員会において,申請書類の審査及び実地
調査を経た上,登録可とされると事業者登録を行い,さらに,当該照明器具が原告
の埋込み形照明器具についての規格である「埋込み形照明器具(JIL5002)」(以
下「JIL5002」という。)に適合しているかどうかを審議し,登録可となった場合
には,当該製造事業者に対し,製品登録証を交付するとともに,当該照明器具が
JIL5002 に適合していることを証する標章である本件使用商標2ないし4(なお,
本件使用商標2ないし4の区別は,施工方法の違いによる。)を当該器具に貼付す
ることを許可し,登録事業者は,本件使用商標2ないし4を作成し,その使用料を


  • 14 -


原告に支払った上で,当該器具に本件使用商標2ないし4のいずれかを貼付して販
売する(甲2,5,6,51,53,57,61,64,65)。

我が国の主要な照明器具製造販売会社は,原告の会員となっており(甲2
0),原告の非常用照明器具自主評定又は埋込み形照明器具登録を受け,上記イ又
はウの手続によって,その製造販売するこれらの照明器具に本件使用商標1ないし
4のいずれかを貼付している。
例えば,原告の会員である東芝ライテック株式会社は,平成20年製造の非常用
照明器具に本件使用商標1を(甲14),同21年製造の埋込み形照明器具に本件
使用商標2(甲16)をそれぞれ貼付し,そのころ販売していた。原告の会員であ
る岩崎電気株式会社は,平成13年8月から同22年12月まで,製造販売する非
常用照明器具に本件商標1を貼付してきた(甲72)。原告の会員であるオーデリ
ック株式会社は,昭和62年から平成22年12月まで,製造販売する埋込み形照
明器具に本件使用商標2を貼付してきた(甲73)。原告の会員である三菱電機照
明株式会社は,昭和62年11月から平成22年12月まで製造販売する埋込み形
照明器具に本件使用商標3を,同13年8月から同22年12月まで製造販売する
非常用照明器具に本件使用商標1を貼付してきた(甲71)。
(2)
本件使用商標の構成中の「JIL」部分について

上記(1)のとおり,本件使用商標1は原告の規格である JIL5501 に適合して
いる旨の評定を受けた非常用照明器具等に,本件使用商標2ないし4は原告の規格
である JIL5002 に適合している製品登録を受けた埋込み形照明器具に,それぞれ貼
付されるものである。

そして,本件使用商標1についてみると,上部から順に,二重円間に
「(社)日本照明器具工業会」と,二重円の一番内側に「適合」と,二重円間に
「JIL5501」との記載をするものである。
そして,これらのうちの上段の「(社)日本照明器具工業会」は,照明器具の製
造・販売を行う我が国の主要な事業者及び団体を会員として構成する社団法人であ


  • 15 -


って,非常用照明器具自主評定事業や埋込み形照明器具の自主認証等を行っている
原告の名称を示すものと,また,中段の「適合」とは照明器具の何らかの規格等に
適合したことを示すものとみることができるところ,下段の「JIL5501」
は,原告の規格である JIL5501 に係る記載であるが,一般的には必ずしもその意味
が明らかなものとみることができない。また,これらの上,中,下段の各記載は明
瞭に分けられており,かつ,それぞれが関連性を有するものと解することもできな
いから,それぞれが独立したものとしてもみることができる。その上で,下段の
「JIL5501」について改めてみると,何らかの記号であると推測されるとし
ても,上記のとおりの原告の規格である JIL5501 に係る記載であると一見して認識
されるものではなく,必ずしも特定の観念を生ずるものではないところ,これは,
欧文字の「JIL」と算用数字である「5501」とからなるものであるから,こ
れを一体のものとしてみるほかに,「JIL」と「5501」とを区切ってみるこ
とが可能であって,「JIL」との独立した表示も抽出して認識されるものという
ことができる。

また,本件使用商標2ないし4についてみると,いずれも,上部から順に,
二重円間に「(社)日本照明器具工業会」と,二重円の一番内側に太く「S」と,
二重円間に「JIL5002」との記載をし,これらに加え,外側円の右横に太
く,本件使用商標2は「B」を,本件使用商標3は「GI」を,本件使用商標4は
「G」を記載するものである。
そして,これらのうちの上段の「(社)日本照明器具工業会」は,原告の名称を
示すものとみることができるが,中段の「S」との欧文字からは特段の意味を読み
取ることができない。下段の「JIL5002」は,原告の規格である JIL5002 に
係る記載であるが,一般的には必ずしもその意味が明らかなものとみることができ
ない。外側円の右横の「B」,「GI」又は「G」との欧文字からも特段の意味を
読み取ることができない。また,これらの上,中,下段及び外側円右横の各記載は
明瞭に分けられており,かつ,それぞれが関連性を有するものと解することもでき


  • 16 -


ないから,それぞれが独立したものとしてもみることができる。その上で,下段の
「JIL5002」について改めてみると,何らかの記号であると推測されるとし
ても,上記のとおりの原告の規格である JIL5002 に係る記載であると一見して認識
されるものではなく,必ずしも特定の観念を生ずるものではないところ,これは,
欧文字の「JIL」と算用数字である「5002」とからなるものであるから,こ
れを一体のものとしてみるほかに,「JIL」と「5002」とを区切ってみるこ
とが可能であって,「JIL」との独立した表示も抽出して認識されるものという
ことができる。

そして,以上のように本件使用商標の構成中から独立した表示として抽出さ
れる「JIL」の欧文字についてみると,それは,本件商標の指定商品である「電
気機械器具,電気通信機械器具,電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを
除く)電気材料」との関係で何らかの性状等を示すものと認めることもできないか
ら,同部分は,本件商標との関係において,自他商品識別標識としての機能を果た
し得るものということができ,当該部分のみが独立して自他商品識別標識としての
機能を果たし得るとはいい難いとした本件審決の判断は首肯することができない。
また,仮に,取引者・需要者において,「JIL5501」や「JIL500
2」が照明器具の認証に係る標章であることを知っていたとしても,「JIL」部
分が照明器具の認証の部類に係るものであることを,これに続く算用数字部分が具
体的な認証の種類を表すものと理解し得るものであって,「JIL」部分も,独立
して自他商品識別標識としての機能をも有しているものということができる。
(3)
本件商標の使用について

前記(1)によると,本件使用商標は,原告による評定又は認証がされた原告
の規格に適合する照明器具であることを証する標章であって,その上段に原告の名
称が記載されていることが示すように,本件使用商標によってその旨を証している
者は原告ということができる。
もっとも,前記(1)のとおり,実際に本件使用商標を作成し,当該器具に同商標


  • 17 -


を貼付するのは各登録事業者であるが,これは,原告の了承の下,原告に使用料を
支払った上で,原告の名称で行っているものであるから,原告が,各登録事業者を
介して,照明器具に本件使用商標を貼付して使用しているというべきものであっ
て,本件使用商標の構成中に存在する本件商標についても,原告が,各登録事業者
を介して,照明器具に本件商標を貼付して使用しているものであるということがで
きる。
そして,上記(1)エのとおり,少なくとも,原告は,平成20年及び同21年に
おいて原告の会員である東芝ライテック株式会社を介して,同13年8月から同2
2年12月において原告の会員である岩崎電気株式会社を介して,昭和62年から
平成22年12月まで原告の会員であるオーデリック株式会社を介して,昭和62
年11月から平成22年12月まで原告の会員である三菱電機照明株式会社を介し
て,照明器具に本件使用商標を貼付することにより,本件商標の構成である「JI
L」のみでそのまま使用されていないものであったものの,本件商標の指定商品に
本件商標を付していたということができるから,これらは本件商標の使用(商標法
2条3項1号)に該当するものであって,商標権者が,本件に係る審判の請求の登
録(平成22年3月5日)前3年以内に,本件商標を使用していたものと認めるこ
とができる。

また,前記(1)によると,原告は,製造事業者からの申請に基づき,原告の
規格である JIL5501 又は JIL5002 に基づいて審議し,評定可又は登録可となった場
合に,製造事業者から使用料の支払を受けた上で,本件使用商標を照明器具に貼付
して使用することを認めることにより,本件使用商標の構成中に存在する原告が商
標権を有する本件商標についても,照明器具に貼付して使用させているものであっ
て,このようにして使用許可を得た製造事業者は,本件商標の使用についての通常
使用権者ということができる。
そして,上記(1)エのとおり,少なくとも,原告の会員である東芝ライテック株
式会社は平成20年及び同21年において,原告の会員である岩崎電気株式会社は


  • 18 -


同13年8月から同22年12月まで,原告の会員であるオーデリック株式会社は
昭和62年から平成22年12月まで,原告の会員である三菱電機照明株式会社は
昭和62年11月から平成22年12月まで,照明器具に本件使用商標を貼付する
ことにより,本件商標の構成である「JIL」のみでそのまま使用されていないも
のであったものの,本件商標の指定商品に本件商標を付していたということができ
るから,これらは本件商標の使用(商標法2条3項1号)に該当するものであっ
て,通常使用権者が,本件に係る審判の請求の登録(平成22年3月5日)前3年
以内に,本件商標を使用していたものと認めることができる。

結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由1は理由があり,取消事由2につい
て検討するまでもなく,本件審決は取り消されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣




H230322現在のコメント


(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10359号審決取消請求事件))

不使用取消の事実認定判決です。審決取消しを認めています。「使用」(商標法2条3項1号)を認めた判決です。
いつもの基準です。基準自体は,固まっています。事実認定が重要です。

top

Last Update: 2011-03-22 13:39:30 JST

top
……………………………………………………判決末尾top
メインサイト(Sphinx利用)知財高裁のまとめMY facebook弁護士・弁理士 岩原義則知的財産法研究会ITと法律研究会弁護士・弁理士サービスのフェイスブック活用研究会

商標:【商標の類否判断の対象】「基準」「事実認定」(最高裁判決引用),【商標の類否判断】「基準」,「事実認定」(最高裁判決引用):(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10335号審決取消請求事件))






商標:【商標の類否判断の対象】「基準」「事実認定」(最高裁判決引用),【商標の類否判断】「基準」,「事実認定」(最高裁判決引用):(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10335号審決取消請求事件))





知的財産高等裁判所第4部「滝澤孝臣コート」


平成22(行ケ)10335 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
平成23年03月17日 知的財産高等裁判所

(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10335号審決取消請求事件))


top




【商標の類否判断の対象】「基準」「事実認定」(最高裁判決引用),【商標の類否判断】「基準」,「事実認定」(最高裁判決引用)


(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10335号審決取消請求事件))



判示


top


第2 事案の概要

本件は,原告が,原告の下記1の本件商標に係る商標登録を無効にすることを求める被告の下記2の本件審判請求について,特許庁が同請求を認めた別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。

top



第4 当裁判所の判断



1 取消事由1(本件商標の構成に係る判断の誤り)について

(1)
商標の類否判断の対象

本件商標は,「天使のチョコリング」の文字を標準文字で横書きにし,指定
商品を第30類「チョコレートを加味してなるリング状の菓子及びパン」とするも
のであって,漢字による「天使」と片仮名による「チョコリング」とが格助詞
「の」で結び付けられている結合商標である。

ところで,商標法4条1項11号に係る商標の類否判断に当たり,複数の構
成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観
察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認
められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標
と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが,他
方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識と
して強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所


  • 7 -


識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部
分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許さ
れるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法
廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年
9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行
ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参
照)。
(2)
本件商標に係る語句の意味
そこで,本件商標の構成についてみると,その構成のうち「天使」の語は,「天
使の使。勅使」,「神の使者として派遣され,神意を人間に伝え,人間を守護する
というもの。セラピム(熾天使)・ケルビム(智天使)など。エンゼル。エンジェ
ル」,「比喩的に,やさしく清らかな人」との意味(乙11。「広辞苑第6版」平
成20年1月株式会社岩波書店発行),「ユダヤ教・キリスト教・イスラム教など
で,神の使者として神と人との仲介をつとめるもの。ペルシャに由来する思想とさ
れる。エンジェル」,「やさしい心で,人をいたわる人。女性についていうことが
多い」,「天子の使者。勅使」との意味(「大辞林第3版」平成18年10月株式
会社三省堂発行)とされている。
また,本件商標の構成のうち「チョコ」の語は,「チョコレートの略」との意味
(上記「広辞苑第6版」及び「大辞林第3版」)とされている。
さらに,本件商標の構成のうち「リング」の語は,「輪。環」,「指輪」,「ボ
クシングやプロレスの試合を行う方形の台」との意味(上記「広辞苑第6版」),
「輪。輪状のもの」,「指輪」,「ボクシングやプロレスなどの試合場」の意味
(上記「大辞林第3版」)とされている。
さらにまた,上記によると,「チョコリング」の語は,「チョコレートの輪,
環」の意味となる。
(3)
本件商標から生ずる観念及び称呼


  • 8 -



本件商標の指定商品は「チョコレートを加味してなるリング状の菓子及びパ
ン」であるところ,上記(2)に照らすと,「チョコリング」については,チョコレ
ート成分含有又はチョコレート味という原材料や品質で,かつ,輪状という形状の
菓子又はパンであることを普通に用いられる方法で一般的に表示したものというこ
とができるのであって,このような菓子又はパンの品質,原材料及び形状を普通に
用いられる方法で一般的な文字で表示した本件商標中の「チョコリング」の部分か
らは,商品の出所識別標識としての称呼,観念は生じない。
他方,「天使」との語は,上記(2)のとおりの意味を有するものであって,本件
商標の指定商品である「チョコレートを加味してなるリング状の菓子及びパン」に
ついての性状等を表すものではなく,本件商標の指定商品との関係では商品の出所
識別標識としての機能を発揮し得るものである。また,本件商標の「天使」との部
分は,「チョコリング」との部分と何ら観念的な結び付きも有しないものである。
以上によると,本件商標については,「天使のチョコリング」全体のほかに,
「天使」の部分についての観念及び称呼が生じるものということができる。

したがって,本件商標からは,「天使のチョコレート製又はチョコレート味
の環状の菓子又はパン」,「天使のようなチョコレート製又はチョコレート味の環
状の菓子又はパン」のほかに「天使」という観念が生じ,また,「テンシノチョコ
リング」のほかに「テンシ」との称呼も生じる。
(4)
原告の主張の当否
原告は,「天使」という名称は一般名詞化しており,「天使」との文字が出所識
別標識として強く支配的な印象が与えられるものではないこと,原告は,「天使の
チョコリング」という名称を一体として使用していることから,「天使のチョコリ
ング」を一体のものとして判断すべきであることなどを主張する。
しかしながら,上記説示のとおり,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対
し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる
場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認めら


  • 9 -


れる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのも
のの類否を判断することも,許されるところ,これを本件商標についてみると,
「天使」との語は,本件商標の指定商品である「チョコレートを加味してなるリン
グ状の菓子及びパン」についての性状等を表すものではなく,本件商標の指定商品
との関係では自他商品の識別標識としての機能を十分に発揮し得るものであるのに
対し,「チョコリング」との語は,本願商品の指定商品の品質,原材料及び形状を
普通に用いられる方法で一般的な文字で表示したものにすぎず,自他商品の識別力
を有しないものであるから,本件商標は,「天使のチョコリング」という一連の称
呼及び観念が生じるとしても,さらにまた,その構成中の「天使」の部分としての
称呼及び観念が生じることも否定することができない。そして,このことは,原告
が,製造販売する商品に「天使のチョコリング」との名称を使用しているというこ
とのみをもって影響されるものではない。
(5)
小括
以上によると,本件商標と本件引用商標との類否判断の前提として,本件商標の
うち「天使」の文字部分のみを抽出することができ,これと同旨の本件審決の判断
に誤りはない。
したがって,取消事由1は理由がない。

top



2 取消事由2(出所の混同を生ずるおそれがあるとした判断の誤り)について

(1)
商標の類否判断
商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商
品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,
それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取
引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商
品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断する
のが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小
法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。


  • 10 -


(2)
本件商標と本件引用商標との類否

前記1のとおり,本件商標のうち「天使」の文字部分を取り出すことがで
き,本件商標からは,「天使」との観念及び「テンシ」との称呼が生ずるものであ
る。

引用商標1は,別紙引用商標目録記載1の商標の構成のとおりのものであっ
て,漢字による「天使」の文字を横書きした構成からなるものであり,引用商標1
からは,「天使」との観念及び「テンシ」との称呼が生ずるものであって,本件商
標と引用商標1とは,同一の観念及び称呼を有するものである。

引用商標2は,同目録記載2の商標の構成のとおりのものであって,平仮名
による「てんし」の文字,漢字による「天使」の文字及び片仮名による「テンシ」
の文字を上下3段に横書きした構成からなるものである。そして,その中段の「天
使」の文字部分は,その上下の「てんし」及び「テンシ」の各文字部分と比較して
格段に大きく書かれていることからすると,上下の「てんし」及び「テンシ」の記
載は,中段の「天使」の記載の読みを記載したものであって,引用商標2の構成中
の「天使」の文字部分が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの
ということができ,引用商標2からは,「天使」との観念及び「テンシ」との称呼
が生ずるものであって,本件商標と引用商標2とは,同一の観念及び称呼を有する
ものである。

また,本件引用商標は,いずれも,その指定商品に第30類「菓子及びパ
ン」を含むものであって,その指定商品は,本件商標の「チョコレートを加味して
なるリング状の菓子及びパン」との指定商品を含むものである。
オ そして,本件引用商標の商標権者である被告は,日本有数の菓子・食品の製
造・販売等の会社であるところ,被告の商品には,「エンゼルパイ」との菓子があ
る(甲1,乙178∼180)ほか,これまでにも,「エンゼルスイーツ」(平成
13年ころ。乙199),「エンゼルレリーフ」(平成8年ころ。乙200),
「エンゼルパティシエ」(平成7年ころ。乙201)などの菓子類を販売してきた


  • 11 -


こと,被告は,明治38年以降,被告の商品に天使(エンゼル)の図柄を採用して
付記し始め,時代の変遷とともに態様を少しずつ変遷させながら,本件商標の登録
査定時に至るまで,同社のロゴマークに「エンゼルマーク」と呼ぶ天使(エンゼ
ル)を象形化した図柄を採用するとともに,多くの自社商品のパッケージに同図柄
を付記し続けてきたこと(甲1,乙62,63,65∼69),被告は,この「エ
ンゼルマーク」に係る多数の商標出願を行って,その保護に努めてきたこと(乙7
3∼153),以上の事実が認められるところ,前記1(2)のとおり,「天使」に
は「エンゼル」の意味があり,「エンゼル」が「天使」の意味を有することは,我
が国における一般的な外来語や英語の理解能力を前提にすると,指定商品の取引者
や需要者のみならず,一般人においても容易に認識し得る程度のものである。

そうすると,本件商標と本件引用商標とは,いずれも同一の称呼及び観念を
生じるものであって,さらに,日本有数の菓子・食品の製造・販売等の会社である
本件引用商標の商標権者である被告が,上記のとおり,本件商標の登録査定時に至
るまで,長年にわたり,自社のロゴマークに「天使(エンゼル)」を使用し,自社
の商品のパッケージに「エンゼルマーク」を付記してきたことなどの実情をも加
え,取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すると,本件商標
を,本件引用商標が指定商品として含む「チョコレートを加味してなるリング状の
菓子及びパン」に使用した場合に,商品の出所につき誤認混同されるおそれがある
ということができる。
(3)
小括
以上によると,本件商標は,商標法4条1項11号に該当するものということが
でき,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
したがって,取消事由2は理由がない。

結論
以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部


  • 12 -
    裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣



top



縮小版




【商標の類否判断の対象】「基準」「事実認定」(最高裁判決引用)


「商標法4条1項11号に係る商標の類否判断に当たり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが,他方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。」(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10335号審決取消請求事件))

top



【商標の類否判断】「基準」,「事実認定」(最高裁判決引用)


「商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。」(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10335号審決取消請求事件))

top



H230322現在のコメント


(知財高裁平成23年3月17日判決(平成22年(行ケ)第10335号審決取消請求事件))

いつもの基準です。基準自体は,固まっています。事実認定が重要です。

top

Last Update: 2011-03-22 12:46:38 JST

top
……………………………………………………判決末尾top
メインサイト(Sphinx利用)知財高裁のまとめMY facebook弁護士・弁理士 岩原義則知的財産法研究会ITと法律研究会弁護士・弁理士サービスのフェイスブック活用研究会

2011年2月28日月曜日

商標:【商標法53条1項の「登録商標・・・に類似する商標の使用であつて・・・役務の質の誤認・・・を生ずるもの」】「解釈」「事実認定」,【類否判断】「事実認定」:(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10157号審決取消請求事件))






商標:【商標法53条1項の「登録商標・・・に類似する商標の使用であつて・・・役務の質の誤認・・・を生ずるもの」】「解釈」「事実認定」,【類否判断】「事実認定」:(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10157号審決取消請求事件))




知的財産高等裁判所第3部「飯村敏明コート」


平成22(行ケ)10157 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
平成23年02月28日 知的財産高等裁判所

(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10157号審決取消請求事件))

top




【商標法53条1項の「登録商標・・・に類似する商標の使用であつて・・・役務の質の誤認・・・を生ずるもの」】「解釈」




判示



審決の理由

別紙審決書写しのとおりであり,その要旨は,次のとおりである。

top

(1)

補助参加人らは,本件商標に係る専用使用権者又は通常使用権者であるとはいえない。

top
(2)

補助参加人Bの使用標章は,本件商標と同一又はこれと類似する商標であるとはいえない。

top
(3)

使用標章,結合標章について,補助参加人Bによる商標としての使用があったとは認められない。

top
(4)

補助参加人Bが,本件商標の役務の質の誤認を生じさせたとは認められない。

top
(5)

そうすると,補助参加人Bによる使用標章,結合標章の使用は,商標法53条1項の要件を欠くので,本件商標の登録は取り消すことはできない。



商標法53条1項本文は,

「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは,何人も,当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定する。同規定には,その要件として,登録商標又はこれに類似する商標の使用がされること,及び役務の質の誤認を生ずるものをしたことが挙げられている。したがって,同項の要件に該当するというためには,一般的抽象的に,登録商標又はこれに類似する商標の使用がされた事実が存在するのみでは足りず,質の誤認を生じさせると主張されている具体的な役務との関連において,登録商標又はこれに類似する商標の使用がされた事実が存在することが必要といえる。

この観点から,本件における結合標章2の使用態様について検討すると,甲14の1,2,甲53の1ないし4によれば,補助参加人Bのウェブページには,パッケージソフトやインターネットを通じたソフトウェアの提供に 関する説明,紹介等が記載されていたこと,結合標章2は,同ウェブページの上端に表示されたことが認められるが,同ウェブページは,補助参加人B の製品,サービス等を公衆に向けて一般的に紹介したものであり,原告が補助参加人Bに委託した具体的なコンピュータシステムの開発,作成業務に関連するものではない。そうすると,補助参加人Bのウェブページにおいて結 合標章2が表示された態様は,補助参加人Bが原告に提供した具体的な役務(原告が質が低いと主張する役務)との関連において結合標章2が使用されたものということはできないから,商標法53条1項本文の要件に該当しない。その他,補助参加人Bが,原告に対して提供した役務と具体的な関連性を有する態様で結合標章2を商標として使用していたことを認めるに足りる証拠はない。

以上のとおりであり,結合標章2の使用は,仮に商標的使用に当たるといaう余地があるとしても,役務の質の誤認を生ずるものとはいえず,商標法53条1項の「登録商標・・・に類似する商標の使用であつて・・・役務の質の誤認・・・を生ずるもの」との要件を充たさないから,結合標章2に係る取消事由3は,審決の結論に影響を及ぼす取消事由とはいえない。

top

審決の結論の当否について

前記1のとおり,補助参加人Bの使用標章は,本件商標と同一又はこれと類似する商標とはいえないとした審決の判断に誤りはないから,使用標章については,商標法53条1項の「登録商標又はこれに類似する商標の使用」との要件を欠く。

また,前記2(1)のとおり,結合標章1について,補助参加人Bによる商標としての使用があったとは認められないから,商標法53条1項の「登録商標又はこれに類似する商標の使用」との要件を欠く。

さらに,前記2(2)のとおり,仮に,結合標章2について,ウェブページでの使用が商標としての使用に当たるとしても,その使用は,役務の質に誤認を生ずるようなものではないから,商標法53条1項の「登録商標・・・に類似する商標の使用であつて・・・役務の質の誤認・・・を生ずるもの」との要件を欠く。

したがって,

「補助参加人Bによる使用標章,結合標章の使用は,商標法53条1項の要件を欠くので,本件商標の登録は取り消すことはできない」との審決の判断に誤りはないというべきである。

top

結論

以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がない。原告は,その他縷々主張するが,審決にこれを取り消すべきその他の違法もない。

top



縮小版



「商標法53条1項本文は,「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは,何人も,当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定する。同規定には,その要件として,登録商標又はこれに類似する商標の使用がされること,及び役務の質の誤認を生ずるものをしたことが挙げられている。したがって,同項の要件に該当するというためには,一般的抽象的に,登録商標又はこれに類似する商標の使用がされた事実が存在するのみでは足りず,質の誤認を生じさせると主張されている具体的な役務との関連において,登録商標又はこれに類似する商標の使用がされた事実が存在することが必要といえる。」(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10157号審決取消請求事件))

top



最縮小版



商標法53条1項の「要件に該当するというためには,一般的抽象的に,登録商標又はこれに類似する商標の使用がされた事実が存在するのみでは足りず,質の誤認を生じさせると主張されている具体的な役務との関連において,登録商標又はこれに類似する商標の使用がされた事実が存在することが必要といえる。」(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10157号審決取消請求事件))



Last Update: 2011-03-03 15:20:52 JST

top
……………………………………………………判決末尾top
メインサイト(Sphinx利用)知財高裁のまとめMY facebook知的財産法研究会ITと法律研究会フェイスブック活用法研究会(実践編)