2011年3月8日火曜日

商標(取消審決):特許庁商標取消2010-300561審決「商品」についての「使用」

取消2010-300561審決
http://shohyo.shinketsu.jp/originaltext/tm/1236563.html


(2)本件商標の「風水力機械器具」の範疇に属する「商品」についての「使用」の実績
乙第1号証の1は、型番がFC-2030Gの「燃料昇圧ブロワ」についての商品カタログ(以下「本件カタログ」という。)と思しき書類であるが、該カタログ上では「HIBLOW」の文字の他に使用商標の表示も確認できるから、「FLOWMAX」製品は、どうやら「HIBLOW」シリーズで展開される空気送風機又は空気圧縮機に類する製品の一つのようである。
そして、被請求人の全主張及び乙第1号証の1ないし同号証の3を総合すると、被請求人の答弁内容は結局、本件商標が、「風水力機械器具」の範疇に属する製品のカタログ上に表示されている、と要約することができる。そうすると、形式的には商標法第2条第3項第8号にいう「商品若しくは役務に関する広告…に標章を付して…配布」する行為に該当することになる。
しかしながら、本件における被請求人の主張は、「商標『FLOWMAX』が『家庭用燃料電池システム専用ブロワ』について使用されている」、「したがって、本件商標がその指定商品について…使用されたことが明らかである」、「以上述べたとおり、本件商標は…使用されたものであるから…」において、単に「登録商標が(その指定商品について)使用された」という抽象的事実を述べるに留まり、その具体的事実について何ら主張するところがない。
使用商標が確認できる単なるカタログ・パンフレット類のみでは、「商標」の「使用」という具体的事実、つまり現実に取引が行われた事実が裏付けられることはない。被請求人は、「風水力機械器具」の範疇に属する製品が現実に取引された具体的事実、つまり、市場において被請求人製品が独立して商取引の対象として流通に供されている事実を主張すべきであり、その具体的事実を客観的に裏付ける資料、例えば取引書類(商品の注文書、納品書、請求書、領収書等)を提出しなければならない。
また、本件カタログは、通常の用紙に両面印刷されたものであり、しかも表面の中央部に大きく表示された燃料昇圧ブロワ製品は、現物の製品写真ではなく製品の「絵」であること、裏面の仕様表において、項目欄の横が「目標仕様」となっていること、製品の「絵」と寸法図からは「燃料昇圧ブロワ」の構造・機構が全く把握できないこと、本件カタログには全体として極めて大ざっぱな情報しか記載されていないこと、等の点において極めて不自然な商品カタログである。また、被請求人のwebサイト上では製品一覧が可能だが、燃料昇圧ブロワ(使用商品)である「FLOWMAX」の掲載はなく、型番がFC-2030Gの製品も存在しない。そのため、被請求人の主張及び提出書類を検討するも、本件カタログに掲載された製品名「FLOWMAX」なる製品は現実には未完成であり、未だ商取引の対象として流通に供されていないのではないか、という疑問を持たざるを得ない。上記述べたとおり、商取引の対象として流通に供されていない製品は、商標法上の「商品」と認めることができないから、使用商標をそのような製品のカタログに表示しても、商標法第2条第3項各号に列挙された、標章の「使用」の行為には該当しない。