2011年1月25日火曜日

商標:不使用取消し,外国語(ハングル文字)の日本国における理解「事実認定」,取消し認めず:(知財高裁平成23年1月25日判決言渡同日判決(平成22年(行ケ)第10336号審決取消請求事件))






商標:不使用取消し,外国語(ハングル文字)の日本国における理解「事実認定」:(知財高裁平成23年1月25日判決言渡同日判決(平成22年(行ケ)第10336号審決取消請求事件))




知的財産高等裁判所第2部「塩月秀平コート」



縮小版「事実認定」



【ハングル文字の日本における理解,文字or図形?】


ここで,我が国に居住する韓国・朝鮮系の者が少なくないことや,近年韓国等から朝鮮半島に由来する商品が多数輸入されて消費されたり,韓国で製作されたテレビ番組や映画が多数放映・上映されたりして,韓国等の文化や食品等の我が国における知名度が向上しているとはいえ,我が国の「茶」の消費者一般にとっては,未だ韓国語ないしハングル文字の理解力が一般人にまで十分であるとはいい難いのであって,需要者において,本件商標のハングル文字部分「􀨬􀩗􀛿」につき,併記されている「ユジャロン」の文字から,おそらくこのハングル文字も同じく称呼すると認識する可能性もあり得るものの,すべての者がこれを読んで正しく称呼したり,その意味内容を理解したりするには至らないものと理解される。なお,仮に本件商標が朝鮮半島に由来する飲料である「柚子茶」の容器等に付されて使用され,また我が国の消費者において「柚子茶」が朝鮮半島に由来する飲料であると知って被告らが販売する「柚子茶」を購入する消費者(需要者)があるとしても,そのような消費者であっても韓国語ないしハングル文字を全く解しない者も少なくないものと容易に推認できる(例えば,甲第4号証の商品の包装箱ではハングル文字が全く使用されていない。)。


他方,「􀨬􀩗􀛿」がハングル文字であること自体は我が国の需要者の間でも一般的認識となっていると推測され,この部分を独立の図形として商標の構成を評価するのは相当でなく,この部分も,称呼は判然としないものの何らかの文字を表すものとして,本件商標からは,「YUJARON」と「ユジャロン」の部分を合わせて一体として「ユジャロン」との称呼が生じると解される一方,これは被告株式会社ビュウの代表者が創作した造語であるから(弁論の全趣旨),そこからは特段の観念は生じない。




H230126現在のコメント


意外と奥深いです。

外国語の浸透力→併記されているから,そうじゃないか?とはおもうが→正しく称呼,意味内容を理解したりするには至らない

表音文字ですので余計ですね。

図形ではなく,「ハングル文字」であるとは分かる
→独立図形として評価すべきではない

という流れです。





判決原文(引用)




判決原文(全文)




平成22(行ケ)10336 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟平成23年01月25日 知的財産高等裁判所 



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平成23年1月25日判決言渡同日判決原本領収裁判所書記官平成22年(行ケ)第10336号審決取消請求事件



口頭弁論終結日平成22年12月15日



判決




主文



原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。



事実及び理由



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第1 原告が求めた判決



特許庁が取消2009-301395号事件について平成22年9月24日にした審決を取り消す。


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第2 事案の概要



被告らは本件商標権者であるところ,本件は,不使用による商標登録取消しを求めた原告の審判請求を成り立たないとした特許庁の審決の取消訴訟である。




1 特許庁における手続の経緯



被告らは,本件商標(登録第4906932号,平成17年11月11日登録,指定商品第30類「茶」)の商標権者であるが,原告は,平成21年12月22日,特許庁に対し,本件商標がその指定商品につき,継続して3年以上,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないと主張して,商標法50条1項に基づいてその登録の取消しの審判の請求をし,平成22年1月19日,本件商標につきその旨の(予告)登録がされた。


特許庁は,原告の請求につき取消2009-301395号事件として審理した上で,平成22年9月24日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は平成22年10月2日,原告に送達された。

【本件商標】

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2 審決の理由の要点



前記審判請求の登録の日から3年以内に,日本国内において,被告ら及び本件商標の通常使用権者と認められる原告によって,前記審判請求に係る指定商品に含まれる「柚子茶」につき本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことが証明されたから,原告の前記審判請求は理由がない。



第3 原告主張の審決取消事由(被告らが使用する商標と本件商標の同一性判断の誤り)



本件商標は,欧文字からなる「YUJARON」,片仮名からなる「ユジャロン」,ハングル文字からなる「􀨬􀩗􀛿」を同じ大きさ,同一書体で,横三段書きしてなる商標であり,上記欧文字部分及び片仮名部分から「ユジャロン」との称呼が生じる。

しかし,我が国の需要者及び取引者においては,上記ハングル文字部分を称呼することはできず,上記ハングル文字部分からは特定の称呼は生じない。

また,本件商標からは特定の観念は生じない。

他方,審決が使用の事実を認めた商品に係る甲第4ないし9,11ないし16の商標は,片仮名からなる「ユジャロン」を横一段書きしてなるもの,欧文字からなる「YUJARON」を横一段書きしてなるもの,欧文字からなる「YUJARON」と片仮名からなる「ユジャロン」を横二段書きしてなるもののいずれかであって,いずれもハングル文字部分が表記されておらず,本件商標と外観が著しく異なる。また,我が国の需要者及び取引者にとってハングル文字がなじみが薄く,特定の称呼及び観念を生じさせるものではないものであって,図形として認識されるべきものであることにかんがみると,被告らが使用する上記商標と本件商標とは称呼及び観念を異にするものというべきである。なお,本件商標のうちハングル文字の部分は商標全体の3分の1程度の面積を占め,他の欧文字部分及び片仮名部分とまとまりよく一体的に表記されていることにかんがみると,本件商標をハングル文字部分とその余の部分とに分けて観察することは相当でないというべきである。

したがって,使用商標と本件商標とは社会通念上同一の商標ではないから,両者が社会通念上同一であるとした審決の判断は誤りである。



第4 取消事由に関する被告の反論



使用商標が付されていた商品は朝鮮半島由来の柚子茶であり,また,我が国には朝鮮半島にルーツのある韓国・朝鮮系の者が多数居住していること,朝鮮半島由来の柚子茶の需要者及び取引者には韓国語に詳しい者が少なくない。そうすると,柚子茶に接した需要者及び取引者は,ハングル文字部分「􀨬􀩗􀛿」を「ユジャロン」と称呼することができる。


我が国の韓国語を解さない需要者及び取引者においても,本件商標のように固有の称呼しか生じない名称については三段表記中のハングル文字部分から「ユジャロン」との称呼が生じ,これをあくまで文字と理解するはずであって,図形として認識することはない。

そうすると,被告らが使用していた商標と本件商標とは,ハングル文字部分を含めて同一の称呼を生じるから,両者が社会通念上同一であることは明らかである。



第5 当裁判所の判断



1 本件商標は,アルファベット(欧文字)の大文字のみからなる「YUJARON」,片仮名からなる「ユジャロン」,ハングル文字からなる「􀨬􀩗􀛿」を概ね同じ大きさ,明朝体ないしこれと同等の書体で,横三段書きしてなる外観を有するものであり,上記アルファベット文字部分,片仮名部分,ハングル文字部分との間で格別の体裁の差は存しない。

ここで,我が国に居住する韓国・朝鮮系の者が少なくないことや,近年韓国等から朝鮮半島に由来する商品が多数輸入されて消費されたり,韓国で製作されたテレビ番組や映画が多数放映・上映されたりして,韓国等の文化や食品等の我が国における知名度が向上しているとはいえ,我が国の「茶」の消費者一般にとっては,未だ韓国語ないしハングル文字の理解力が一般人にまで十分であるとはいい難いのであって,需要者において,本件商標のハングル文字部分「􀨬􀩗􀛿」につき,併記されている「ユジャロン」の文字から,おそらくこのハングル文字も同じく称呼すると認識する可能性もあり得るものの,すべての者がこれを読んで正しく称呼したり,その意味内容を理解したりするには至らないものと理解される。なお,仮に本件商標が朝鮮半島に由来する飲料である「柚子茶」の容器等に付されて使用され,また我が国の消費者において「柚子茶」が朝鮮半島に由来する飲料であると知って被告らが販売する「柚子茶」を購入する消費者(需要者)があるとしても,そのような消費者であっても韓国語ないしハングル文字を全く解しない者も少なくないものと容易に推認できる(例えば,甲第4号証の商品の包装箱ではハングル文字が全く使用されていない。)。


他方,「􀨬􀩗􀛿」がハングル文字であること自体は我が国の需要者の間でも一般的認識となっていると推測され,この部分を独立の図形として商標の構成を評価するのは相当でなく,この部分も,称呼は判然としないものの何らかの文字を表すものとして,本件商標からは,「YUJARON」と「ユジャロン」の部分を合わせて一体として「ユジャロン」との称呼が生じると解される一方,これは被告株式会社ビュウの代表者が創作した造語であるから(弁論の全趣旨),そこからは特段の観念は生じない。


2 原告が遅くとも平成19年9月ころまで被告らから譲り受けて我が国で販売していた商品である「柚子茶」の包装箱の一側面には,「香味柚子茶/YUJARON/ユジャロン」と横三段書きされた標章が付され,別の側面には,「香味柚子茶/YUJARON」と横二段書きした標章と,その下に柑橘類の図柄と「citron syrup tea」とのアルファベット文字を組み合わせた標章が付されている(甲4)。なお,上記三段書きされた標章は,包装箱内のビン容器にも同様の体裁のものが付されている(甲5の3,4)。

また,原告が遅くとも平成21年11月ころまで使用していたホームページのトップには,いずれもアルファベットからなりロゴ化された「YUJARON」の文字標章が使用されている(甲5の1,2,4,甲8)。

そして,原告及び被告ビュウが遅くとも平成22年3月ころまで使用していたホームページには,「こうみゆずちゃ/香味柚子茶/YUJARON/ユジャロン」と横書きした標章が使用されている(甲6,7)

さらに,平成21年9月ころまでの間に,原告が被告らとの間の取引に使用した書類でも,片仮名からなる「ユジャロン」の標章が使用されている(甲9,13)。

3 原告の前身である有限会社ユジャロンは,被告らが製造販売する柚子茶等の我が国における総販売元として設立され,有限会社ユジャロン及びその後身である原告は,被告らが製造販売する柚子茶を我が国で販売してきたものであったから(甲11),前記2の柚子茶についての原告の標章の使用が本件商標の使用許諾に基づくものであることは明らかである。


そして,商標として使用されたと認められる前記各使用標章からは,「ユジャロン」の称呼が生じることが明らかであるし,本件商標のアルファベット部分又は片仮名部分の一方又は双方と同一の文字列をその構成部分としているものであるから,前記各使用標章と本件商標とは社会通念上同一の商標であると評価することができる。

なお,「􀨬􀩗􀛿」の部分については前記のとおり図形として評価するよりも文字として評価するのが相当であるから,前記各使用標章と本件商標の外観の相違は,上記評価を左右するものではない。

4 したがって,原告による審判請求の登録の日(平成22年1月19日)から3年以内に,日本国内において,本件商標の通常使用権者である原告によって,本件商標の指定商品「茶」の一つである「柚子茶」につき,本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていたものであって,この旨をいう審決の判断に誤りはない。



第6 結論



以上によれば,原告が主張する取消事由は理由がないから,主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官塩月 秀 平- 7 -裁判官真 辺 朋 子裁判官田 邉 実
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Last Update: 2011-01-26 20:35:14 JST

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