2011年3月24日木曜日

商標:【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」:(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))






商標:【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」:(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))





知的財産高等裁判所第4部「滝澤孝臣コート」


平成22(行ケ)10356 審決取消請求事件 商標権 行政訴訟
平成23年03月24日 知的財産高等裁判所

(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))


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【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」


(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))

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判示【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」




第2 事案の概要

本件は,原告が,被告の下記1の本件商標に係る商標登録を無効とすることを求める原告の下記2の本件審判請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,原告が本件審決の取消しを求める事案である。
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第4 当裁判所の判断



1 本件商標の商標法3条1項3号の該当性について

(1) 本件商標の構成は,前記第2の1に記載のとおり,右側やや上に「黒糖」,
左側に「ドーナツ棒」の各文字を2列に縦書きしてなるものであって,右側の「黒
糖」の文字はやや細く,左側の「ドーナツ棒」の文字はやや太く,かつ,片仮名を
やや崩したように表し,いずれの文字も手書き風に標記されているものである。ま
た,本件商品の指定商品は,前記第2の1に記載のとおり,第30類「黒糖を使用
した棒状形のドーナツ菓子」である。

(2) 「黒糖」とは,黒砂糖と同義であり,「まだ精製していない茶褐色の砂糖。
甘蔗汁をしぼって鍋で煮詰めたままのもの。」(広辞苑第5版・平成10年11月
11日発行)とされており,「ドーナツ」とは,「小麦粉に砂糖・バター・卵・ベ
ーキング-パウダーまたはイーストなどをまぜてこね,輪形・円形などに作って油
で揚げた洋菓子。」(同上)とされているから,本件商標のうち「黒糖」と「ドー
ナツ」との部分は,洋菓子であるドーナツの品質及び原材料を普通に用いられる方
法で表示している。そして,「棒」は,「ドーナツ」の文字の直後に置かれること
によって,ドーナツの形状を普通に用いられる方法で表示しているといえる。した
がって,本件商標は,その指定商品に用いられた場合,まさに「黒糖を使用した棒
状形のドーナツ菓子」の品質,原材料及び形状を普通に用いられる方法で表示する
標章であるといえる(商標法3条1項3号)。

(3) なお,原告は,本件商標が指定商品の普通名称を普通に用いられる方法で
表示している(商標法3条1項1号参照)にすぎないから,そもそも商標法3条2
項が適用される場合ではない旨を主張する。

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しかしながら,本件で提出された全証拠及び弁論の全趣旨によっても,「黒糖を
使用した棒状形のドーナツ菓子」について,「黒糖ドーナツ棒」との普通名称が存
在し,あるいは普通に用いられる方法として表示されているとは認められない。
したがって,原告の上記主張は,その前提を欠くものとして採用できない。

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2 本件商標の商標法3条2項の該当性について

(1) 認定事実
証拠及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。

ア 本件商標の使用開始時期等
被告は,主たる営業所を熊本市に置き,菓子類を製造・販売する会社であるが,
かねてより原材料に黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子(以下「本件商品」とい
う。)を製造・販売していたところ(甲60,78,乙2の1),平成6年秋ころ,
日本生活協同組合連合会・学校生活協同組合の通信販売を通じた本件商品の販売を
開始した。被告は,その際,上記通信販売カタログに本件商品の包装箱の写真を掲
載したが,当該包装箱は,縦長直方体であり,黒色である包装箱表面には本件商標
と形状において同一と見られ,「黒糖」部分が赤色で「ドーナツ棒」部分が金色の
標章が掲示されており,併せて,当該包装箱側面の黒色部分には,当該標章の各文
字を「黒糖」と「ドーナツ棒」とで2段に横書きした標章が掲示されていた(甲2
9,59,67)。

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イ 本件商標の使用期間,使用地域,使用態様等
(ア) 被告は,平成7年ころ,自社の通信販売カタログ(3000部)の刊行を
開始して以来,平成19年6月までにこれを合計29回刊行し,遅くとも平成13
年10月以降は,そこに前記包装箱や,本件商標と形状において同一と見られる前
記標章を「黒糖」と「ドーナツ棒」とで2段に横書きした紙片をその側面に貼付し
た金属製の包装箱又は本件商品の個別の透明ビニール製包装袋であって,当該標章
を1段に横書きしたものが白色で印刷されたもの(以下,これらの包装箱及び包装
袋を併せて「本件包装」という。)の写真を毎号掲載した。そして,上記カタログ

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の発行部数は,例えば平成18年6月刊行のものが6万5000部になるなど,お
おむね増加傾向にある(甲30~42,60,78,乙2の1,11)。
また,被告は,遅くとも平成13年ころには,自社のホームページを開設して,
本件商品を含む自社商品の広告等を開始した(甲30)ほか,自社の店舗に加えて,
平成18年4月,那覇市に那覇本店を,同年5月,東京都赤坂に東京赤坂店を,そ
れぞれ出店して本件商品の販売を開始し,更に本件登録審決時点までに,熊本市内
の鶴屋百貨店,熊本空港,九州自動車道宮原サービスエリア,宮崎空港,大分空港,
福岡空港等で本件商品の販売を開始していた(甲60,78,乙2の1)。
(イ) 被告は,平成16年,神奈川県の情報誌である「ぱど」の同年5月14日
号(配布場所及び部数は,横須賀・三浦版2エリア11万1100部,首都圏版1
11エリア659万8200部,全国210エリア1196万9200部。甲1
8)並びに東京及び横浜周辺で配付された無料情報誌である「ラーラぱど」の同月
18日号(配布場所及び部数は,東京都内19万5000部,横浜・川崎市内6万
8000部。甲19)に,自社名及び本件包装の写真とともに本件商品の広告を掲
載したほか,熊本日日新聞刊行の情報誌「まいらいふ」同年6月号(甲12),熊
本日日新聞の同年9月16日号(甲10),「くまにちすぱいす」同年11月20
日号(甲17)その他の印刷媒体にその広告を掲載し,同年9月,そのテレビ広告
を鹿児島読売テレビ及び熊本県民テレビにて複数回放映した(乙10)。さらに,
被告は,岡山県所在の山陽新聞社が刊行する情報誌である「レディア」152号
(平成17年1月27日刊行。甲24,乙4の2),琉球新報社刊行の情報誌「う
ない」平成17年5月・6月合併号(甲26)及び熊本日日新聞刊行の情報誌「デ
リすぱ」同年7月1日号(甲25)その他の印刷媒体に,いずれも自社名及び本件
包装の写真とともに本件商品の広告を掲載した(甲60,78,乙2の1)。
なお,被告及び本件商品を含む被告製造商品に関する広告宣伝費は,平成17年
8月ないし平成18年7月が4405万4024円,同年8月ないし平成19年7
月が8923万6193円であった(乙2の1)。

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(ウ) 被告は,平成7年ころ,郵便局のふるさと小包全国版に本件商品の広告を
掲載し(甲14,60,78,乙2の1),同年4月,日本生活協同組合連合会を
通じて全国150の単位生活協同組合に本件商品の供給を開始し(甲7~9,13,
27,60,78,乙2の1),大丸百貨店(甲16,61,62,68),三越
百貨店(甲2)及び高島屋百貨店(甲15,23)といった大手百貨店による通信
販売にも本件商品の供給を開始したほか,遅くとも平成16年夏ころまでには,京
都府所在の株式会社千趣会(甲22)による通信販売にも本件商品の供給を開始し
たが(甲60,78,乙2の1),これらの通信販売カタログには,本件包装の写
真が掲載されており,自社名が掲載されているものもあった。
なお,学校生活協同組合による本件商品の売上高は,平成12年4月ないし平成
18年5月に9602万4000円(甲1),キッスビー健全食株式会社(三越百
貨店)による本件商品の売上高は,平成13年3月ないし平成18年5月に707
万6000円(甲2),そして株式会社大丸ホームショッピングによる本件商品の
売上高は,平成10年2月ないし平成18年5月に7223万0000円(甲6
1)であった。
(エ) 被告は,平成8年ころ,日本直販による全国テレビショッピングを通じて
本件商品の販売を開始し(平成11年ころまで),平成13年,QVCテレビショ
ッピング及びTBSテレビショッピング(関東エリア)にて本件商品の販売を開始
した(甲60,78,乙の2の1)。
(オ) インターネット上のショッピングモールであるQVC(甲47,50)は,
平成16年8月10日までには,楽天市場(甲50)及びYAHOOショッピング
(甲49,甲51)は,平成17年12月18日までには,シャディ Online(甲
48)は,平成18年6月26日までには,いずれも,本件包装の写真を掲示して
本件商品をインターネット上で販売していた。
(カ) テレビ局であるTKU熊本は,平成15年9月4日,被告及び本件商品に
ついて紹介する番組を放映し,その要旨は,その後,本件包装の写真とともに,そ

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のホームページに掲載され(甲46),平成16年12月にも,本件商品等を紹介
する番組を放映したほか,同じくテレビ局であるRKK熊本放送も,同年9月,本
件商品等を紹介する番組を放映した(甲60,78,乙2の1)。
スカイネットアジア航空は,平成15年12月,その機内誌である「スカイネッ
ト」に,本件包装の写真とともに,被告及び本件商品を紹介する記事を掲載し(甲
6),熊本県内を対象とする情報誌である月刊くまもと「家族時間」も,同月刊行
の第5号で,本件包装の写真とともに被告及び本件商品を紹介する記事を掲載した
(甲11)。また,日本経済新聞は,平成16年4月3日付け(甲43)及び平成
18年9月9日付け(甲65,乙5)の九州版において,朝日新聞は,平成16年
4月9日付けの熊本版において(甲44),主として東京圏及び大阪圏で販売され
ている夕刊フジも,同年8月8日付けのもので(甲21,乙4の1),それぞれ本
件包装の写真とともに,被告及び本件商品を紹介する記事を掲載し,朝日新聞は,
その後,当該記事を同紙のインターネット版にも掲載した(甲45)。
さらに,熊本市で刊行されている情報誌「モコス」は,同年12月16日刊行の
平成17年1月号で(甲20),コープ出版株式会社による「CO-OP NAV
I」は,平成18年8月号で(甲63,64),いずれも本件包装の写真とともに
被告及び本件商品を紹介する記事を掲載した。
(キ) 被告は,平成14年11月,熊本市で開催された第24回全国菓子大博覧
会において,本件商品に関して「リッチモントクラブ賞」と称するものを受賞した
(甲5,60,69~72,74,78,81,乙2の1)。

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ウ 本件商品の販売数量又は売上高
(ア) 被告は,平成6年ころ,生活協同組合による通信販売で本件商品2万50
00箱を売り上げ,2325万円の売上げを得た(甲60)。
被告のその後の売上総額は,平成16年8月ないし平成17年7月が5億667
2万7717円,同年8月ないし平成18年7月が7億5122万0682円,同
年8月ないし平成19年7月(本件商品のこの期間の生産数は,合計3414万1

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976本である。)が10億8919万9297円であるが(以上合計24億07
14万7696円),本件商品がその売上総額の約7割を占めているから,本件商
品の売上高は,平成18年8月ないし平成19年7月の1年間で約7億6244万
円となる(乙2の1・4)。
なお,本件商品1本の販売単価は,概ね約23円ないし50円程度である(甲6
~9,13~16,20,22,23,25~27,29~42,47~50,6
2,67,68)。

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エ 本件商標に類似した他の標章の存否
原材料に黒糖を使用したと思われる棒状のドーナツ菓子は,我が国に少なからず
存在するが,これらに用いられてる標章には,「黒棒」(トリオ食品株式会社製造。
甲104の1),「黒棒名門」(クロボー製菓株式会社製造。甲104の9),
「黒糖ケーキドーナツ」,「ミニ黒糖ドーナツ」(いずれもエーケーエム株式会社
製造。甲104の10・12),「豆乳ドーナツ(黒糖)」,「黒糖豆乳ドーナ
ツ」(いずれも山田製菓株式会社製造。甲104の15・16),「黒糖豆乳ドー
ナツ」(株式会社木村製造。甲104の18),「可愛いくろぼう」(株式会社橋
本製菓製造。甲104の25),「黒糖みつ手づくりスティックドーナツ」(有限
会社優華堂製造。甲104の26)及び「かりんとうドーナツ黒糖味」(株式会社
アンデル製造。甲106の1)などがある。しかし,上記の菓子について,平成6
年秋ころから本件登録審決時点(平成19年7月11日)までの間に「黒糖ドーナ
ツ棒(コクトウドーナツボウ)」との外観又は称呼を有する標章を使用して販売し
ていることが確認できるのは,被告のみである。

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(2) 本件商標の商標法3条2項の該当性について
ア ある標章が商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務
に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは,出願に
係る商標と外観において同一と見られる標章が指定商品とされる商品に使用された
ことを前提として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品
の数量又は売上高等及び当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似
した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである。

イ これを本件についてみると,前記認定のとおり,被告は,平成6年秋ころ以
来,本件登録審決時点(平成19年7月11日)に至るまでの約13年弱の間,本
件商標と形状において同一と見られ,「黒糖」部分が赤色で「ドーナツ棒」部分が
金色の標章や,本件商標と形状において同一と見られる各文字を1段又は「黒糖」
と「ドーナツ棒」とで2段に横書きした標章を,一貫して指定商品である黒糖を使
用した棒状形のドーナツ菓子(本件商品)の包装(本件包装)に付して使用してい
る。
そして,被告は,上記の期間中,本件包装が付された本件商品を,九州地方を中
心としつつもそれ以外の地の店舗や,テレビショッピング番組並びに自社及び複数
のインターネット上のショッピングモールを通じて販売していたほか,本件商品を
自社及び複数の大手百貨店等による通信販売により全国的に販売するに当たり,本
件包装の写真を通信販売カタログ,テレビ広告,複数地域の各種情報誌又は新聞に,
しばしば自社名とともに本件商品の広告として掲載しており,その宣伝広告費も,
本件登録審決当時に先立つ1年間で8923万6193円に及んでいる。また,地
方テレビ局の番組,各種情報誌及び新聞も,本件包装の写真とともに被告及び本件
商品を紹介しており,その結果がインターネット上のホームページに掲載されたも
のもあった。
さらに,被告による本件商品の生産数は,本件登録審決当時に先立つ1年間で3
414万1976本と相当大量であり,同時期の売上高である約7億6244万円
という金額も,1本概ね約23円ないし50円程度という本件商品の販売単価に比
較するとき,相当高額なものに及んでいるといえる。
他方で,本件商品と同種の商品は,我が国に少なからず存在し,これらに関する
標章には各種のものがあるが,当該商品について,平成6年秋ころから本件登録審
決時点(平成19年7月11日)までの間に「黒糖ドーナツ棒(コクトウドーナツ

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ボウ)」との外観又は称呼を有する標章を使用して販売していることが確認できる
のは,被告のみである一方,他の商品に付された標章には「黒糖」,「ドーナツ」
及び「棒」を組み合わせたものは存在せず,むしろ,本件商標とは外観及び称呼を
異にするものしか証拠上は確認できない。
ウ 以上のとおり,本件商標と外観において同一と見られる標章を付した包装
(本件包装)が指定商品とされる本件商品に使用されており,その使用開始時期,
使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の数量又は売上高等及び本件商品又はこ
れに類似した商品に関する本件商標に類似した他の標章の存否などの事情を総合考
慮するとき,本件商標は,使用をされた結果,本件登録審決時点(平成19年7月
11日)において,需要者が被告の業務に係る商品であることを認識することがで
きるものになっていたものと認めることができる。

エ これに対して,原告は,本件商標が熊本を中心として九州地方だけで使用さ
れていた事実が立証されたとしても,それ以上の立証はないなどとして,本件商標
が商標法3条2項の要件を満たさないと主張する。しかしながら,被告による本件
商標の使用態様等は,前記認定のとおりであって,原告の上記主張は,この点にお
いても,その前提を欠くものとして採用することができない。
オ したがって,本件商標の商標法3条2項の該当性を認めた本件審決の判断に
誤りはないといわなければならない。
3 結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由は理由がなく,原告の請求は棄却さ
れるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣


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縮小版【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」



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「基準」

「ある標章が商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは,出願に係る商標と外観において同一と見られる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の数量又は売上高等及び当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである。 」(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))

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「判断」「あてはめ例」

イ これを本件についてみると,前記認定のとおり,被告は,平成6年秋ころ以来,本件登録審決時点(平成19年7月11日)に至るまでの約13年弱の間,本件商標と形状において同一と見られ,「黒糖」部分が赤色で「ドーナツ棒」部分が金色の標章や,本件商標と形状において同一と見られる各文字を1段又は「黒糖」と「ドーナツ棒」とで2段に横書きした標章を,一貫して指定商品である黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子(本件商品)の包装(本件包装)に付して使用している。

そして,被告は,上記の期間中,本件包装が付された本件商品を,九州地方を中心としつつもそれ以外の地の店舗や,テレビショッピング番組並びに自社及び複数のインターネット上のショッピングモールを通じて販売していたほか,本件商品を自社及び複数の大手百貨店等による通信販売により全国的に販売するに当たり,本件包装の写真を通信販売カタログ,テレビ広告,複数地域の各種情報誌又は新聞に,しばしば自社名とともに本件商品の広告として掲載しており,その宣伝広告費も,本件登録審決当時に先立つ1年間で8923万6193円に及んでいる。また,地方テレビ局の番組,各種情報誌及び新聞も,本件包装の写真とともに被告及び本件商品を紹介しており,その結果がインターネット上のホームページに掲載されたものもあった。

さらに,被告による本件商品の生産数は,本件登録審決当時に先立つ1年間で3414万1976本と相当大量であり,同時期の売上高である約7億6244万円という金額も,1本概ね約23円ないし50円程度という本件商品の販売単価に比較するとき,相当高額なものに及んでいるといえる。

他方で,本件商品と同種の商品は,我が国に少なからず存在し,これらに関する標章には各種のものがあるが,当該商品について,平成6年秋ころから本件登録審決時点(平成19年7月11日)までの間に「黒糖ドーナツ棒(コクトウドーナツボウ)」との外観又は称呼を有する標章を使用して販売していることが確認できるのは,被告のみである一方,他の商品に付された標章には「黒糖」,「ドーナツ」及び「棒」を組み合わせたものは存在せず,むしろ,本件商標とは外観及び称呼を異にするものしか証拠上は確認できない。

ウ 以上のとおり,本件商標と外観において同一と見られる標章を付した包装(本件包装)が指定商品とされる本件商品に使用されており,その使用開始時期,使用期間,使用地域,使用態様,当該商品の数量又は売上高等及び本件商品又はこれに類似した商品に関する本件商標に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮するとき,本件商標は,使用をされた結果,本件登録審決時点(平成19年7月11日)において,需要者が被告の業務に係る商品であることを認識することができるものになっていたものと認めることができる。

エ これに対して,原告は,本件商標が熊本を中心として九州地方だけで使用されていた事実が立証されたとしても,それ以上の立証はないなどとして,本件商標が商標法3条2項の要件を満たさないと主張する。しかしながら,被告による本件商標の使用態様等は,前記認定のとおりであって,原告の上記主張は,この点においても,その前提を欠くものとして採用することができない。

オ したがって,本件商標の商標法3条2項の該当性を認めた本件審決の判断に誤りはないといわなければならない。



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(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10356号 審決取消請求事件))

【商標法3条1項3号の該当性】「事実認定」,【商標法3条2項の該当性】「基準」「判断」について判断しました。


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Last Update: 2011-03-28 20:59:30 JST

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……………………………………………………判決末尾top
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