2011年3月24日木曜日

特許:【訂正の可否】【サポート要件】【実施可能要件】【進歩性】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10214号審決取消請求事件))






特許:【訂正の可否】【サポート要件】【実施可能要件】【進歩性】「事実認定」:(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10214号審決取消請求事件))






知的財産高等裁判所第4部「滝澤孝臣コート」


平成22(行ケ)10214 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成23年03月24日 知的財産高等裁判所

(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10214号審決取消請求事件))


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【訂正の可否】【サポート要件】【実施可能要件】【進歩性】「事実認定」


(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10214号審決取消請求事件))
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第2 事案の概要

本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,被告の下記2の本件発明に係る特許に対する原告の特許無効審判の請求について,特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4のとおりの取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。



第4 当裁判所の判断




1 取消事由1(本件訂正を認めた判断の誤り)について

(1) 本件訂正事項の内容
本件訂正事項は,請求項2に係る本件訂正前の「前記ベールが,少なくとも約1
0N/15mmの裂破強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定)を有
する,ことを特徴とする請求項1記載のベール」との記載を,本件訂正後の「前記
ベールが,少なくとも10N/15mmの引裂き強度(DIN EN ISO 52


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7-3に従って測定)のフィルムを有する,ことを特徴とする請求項1記載のベー
ル」との記載に訂正するものである。
本件訂正事項は,訂正前には「裂破強度(DIN EN ISO 527-3に
従って測定)」と記載されていたものを,訂正後には「引裂き強度(DIN EN
ISO 527-3に従って測定)」との記載に訂正するものであって,その訂
正前後を通じて,いずれも,その測定方法は,「DIN EN ISO 527-
3に従って測定」されるものである。
(2) 本件明細書及び本件訂正明細書の記載
本件明細書【0031】には,「機械強度に関連して,DIN EN ISO
527-3に従って測定した場合に,パッケージ包装材またはフィルムが,少なく
とも約10N/15mm,好ましくは約100N/15mm以上,さらに好ましくは2
00N/15mm以上の裂破強度を有することが推奨される。引用した値の各々は,
フィルムの縦方向および横方向における最少裂破強度値に関係する。フィルムで包
装したベールが移動のために再度梱包されるか否かの関数として,裂破強度に関連
した特定の選択が行われる。これに関連して,使用可能な材料には,100μmの
厚さで,15から30N/15mmの裂破強度を有するPE,100μmの厚さで,
150~300N/15mmの裂破強度を有するPA6が含まれる。」とあって,
「DIN EN ISO 527-3」の定めるところに従って,パッケージ包装
材又はフィルムの強度を測定したものであることが説明されている。
そして,本件訂正明細書には,本件明細書の「裂破強度」が「引裂き強度」と変
更されて,以上と同旨の説明がされている。
(3) 「裂破強度」と「引裂き強度」との異同
以上によると,本件訂正前の請求項2には「裂破強度」と記載され,本件訂正後
の請求項2には「引裂き強度」と記載され,その表現は異なり,また,本件訂正後
の請求項2には,そのような強度を有する「フィルム」であることが構成として追
加されているが,いずれも,フィルム及びシートについての強度を試験する方法に


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関する規格である「DIN EN ISO 527-3」(乙1,2)の定めると
ころに従って,強度を測定することにおいて変わりはない。
そして,「裂破」とは,「引き裂くこと」との意味であり(講談社新大字典・平
成5年3月発行),「裂破」から「引裂き」へと訂正することは,用語をより平易
で一般的なものに変更したものということができる。
(4) 原告の主張に対する判断
原告は,本件訂正明細書に記載された「DIN EN ISO 527」はいわ
ゆる「引張強度」に関する規定であり,「DIN EN ISO 527-3」は
フィルムとシートのための「引張強度」の測定条件を定めたものであって,引裂き
強度は測定できないとし,上記訂正では,「引張強度」の測定条件によって「引裂
強度」を測定することになり,実質的に特許請求の範囲を変更することになると主
張する。しかしながら,本件訂正事項については,本件訂正の前後を通じて,ベー
ルの強度を「DIN EN ISO 527-3」によって測定するものであるこ
との記載に変わりはなく,本件訂正事項に係る訂正は,上記のとおり,用語をより
平易で一般的なものに変更したものであって,明瞭でない記載の釈明を目的とする
ものにすぎないものということができ,原告の主張は,訂正の許否をいうものとし
ては失当であって,理由がない。
(6) 小括
したがって,本件訂正前の請求項2に規定する「裂破強度」を,本件訂正後の請
求項2の「引裂き強度」とする訂正について,明瞭でない記載の釈明を目的とする
ものであるとともに,本件明細書に記載した事項の範囲内でするものとした本件審
決に誤りはない。

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2 取消事由2(サポート要件に係る判断の誤り)について

原告は,膨張による弾性復元力(膨張力)の減衰を考慮するとしても,気候の変
化による大気圧の変動にも満たない0.01bar程度の僅かな値の負圧によっ
て,大きなフィルタートウの弾性復元力をコントロールでき,かつ,ベールを平坦


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にするという課題を解決できることは,本件訂正明細書の発明の詳細な説明に記載
されたものでなく,当業者の常識からは全く理解できないものであるなどと主張す
るので,以下,検討する。

(1) 本件訂正明細書の記載
ア 本件訂正明細書の発明の詳細な説明には,次の記載がある。
(ア) 「本発明の課題は,ベールの移動を妨害するような膨張部分,ならびにト
ウベールの頂部と底部におけるフィルタートウの繰り出しを妨害するくびれ部分の
無い,理想的なブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールを提供すること
であり,この場合,梱包したフィルタートウにかかる負荷が低減されることで,特
に,内圧の影響下におけるパッケージの破裂開封をほぼ完全に回避することができ
る。本発明のさらなる課題は,これに関連した梱包プロセスを提供することであ
る。」(【0006】)
(イ) 「梱包工程中に梱包を気密シールすることより,移動を妨害する妨害部分
も,目的としたフィルタートウの使用を妨害するくびれ部分も無いブロック形態の
ベールを製造できるという驚くべき発見が得られた。したがって,実用的な考慮に
基づき,請求項1によるベールは,機械的に自己支持する弾性梱包材料で完全に包
装され,この材料は,1つまたはそれ以上の対流に対して気密性を有する結合部を
備えている。」(【0010】)
(ウ) 「気密梱包の課題は,製造工程中にベールの頂部と底部に生じる圧力勾配
を吸収および等化することである。」(【0011】)
(エ) 「本発明にかかるフィルタートウベールを梱包するプロセスは,(a) フ
ィルタートウを圧縮形態にするステップと;(b) 圧縮されたフィルタートウをパ
ッケージ包装材で包装するステップと;(c) パッケージ包装材を気密にシールす
るステップと;(d) 包装されたベールにかかる負荷を解放するステップとを備え
ている。気密シールされたベールに対する負荷が解放されると,パッケージ包装材
内に負圧が発生する。この負圧は少なくとも0.01barであることが好まし


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く,特に有利な方法では0.15~0.7barの範囲内である。」(【001
6】)
(オ) 「したがって,包装材で取り囲まれた領域内で発生した負圧は,パッケー
ジ包装材の気密シールによって維持することができる。この負圧により,可撓性材
料の弾性復元力によって内部から梱包へ加わる圧力が減衰される。この理由のため
に,最新技術によれば通常はフィルタートウベールに発生する膨張を防止すること
ができる。これにより,積層ベールの製造が遥かに容易になる。梱包内部から作用
する機械圧が(負圧によって)減衰されるために,梱包が失敗する危険性または梱
包が裂開する傾向が低減される。さらに,より高い梱包密度も得られ,これによ
り,より小型なパッケージの利点が得られ,保管容量および移動容量を縮小するこ
とが可能になる。」(【0017】)
イ 上記の記載によると,本件訂正発明1においては,包装材で取り囲まれた領
域内で発生した負圧が,パッケージ包装材の気密シールによって維持され,この負
圧によって,可撓性材料の弾性復元力により内部から梱包へ加わる圧力が減衰され
るとともに,製造工程中にベールの頂部と底部に生じる圧力勾配を吸収及び等化さ
れることにあり,これらによって,少なくともベールが梱包された後に外圧に対し
て負圧がベールに掛かるものであると理解することができる。また,「負圧は少な
くとも0.01barであることが好まし」いとも記載されており,その意味自体
も明瞭である。
(2) 本件訂正発明1の技術思想
以上によると,本件訂正発明1に係る特許請求の範囲の「外圧に対して少なくと
も0.01barの負圧がベールにかかっている」との規定は,ベールの形状を負
圧によって制御するとの技術思想を表現したものということができる。
しかるところ,気候による大気圧の変動が想定されること,高圧縮したベールの
復元膨張力はかなり大きなものであり,しかも,ベールの圧縮率は様々なものが想
定され,ベールの材料によっても変化するものであることから,ベールの形状を制


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御するために利用する負圧について一義的に数値を決められないという状況の下
で,本件訂正発明1は,実質的に負圧として取り扱える有意な値を選択して発明の
技術思想を表現するために,「少なくとも0.01bar」という値の範囲を規定
したものとみることができるものである。そして,本件訂正発明1においては,ベ
ールが梱包された後に,外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールに
掛かっているものであるところ,梱包した材料に付加されている外圧が解放される
ことによって,発生していた少なくとも0.01barとの負圧の値が更に大きく
なるものであること,他方,本件訂正発明1においては,トウが膨脹し続ける時間
はせいぜい数時間であるところ(甲23),天候にも左右されるが,通常の気圧の
日変化は0.01barには至らないものであることに照らすと,ベールには,フ
ィルタートウ材料が膨脹し,ベールに膨脹部分やくびれ部分が出現しないようにし
なければならない間,外圧に対しての負圧が掛かり続けるものであるということが
できる。
また,本件訂正明細書には,0.01bar又はその近辺ではないが,「少なく
とも0.01bar」との負圧の数値の範囲内の複数の実施例が開示されている。

(3) 原告の主張に対する判断
ア 原告は,本件訂正発明1は,負担と平坦度に係る数値限定により公知技術と
の差違を導いたいわゆるパラメータ発明であるところ,本件訂正明細書の発明の詳
細な説明によっては,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものでは
ないなどと主張する。しかしながら,上記のとおり,本件訂正発明1は,ベールの
形状を負圧によって制御するとの技術思想を表すものであり,また,その表現とし
て「少なくとも0.01bar」との数値の範囲を併せて記載したものであって,
本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載によって,当業者が当該発明の課題を解
決できると認識することができる範囲のものであるということができ,これに反す
る原告の主張は理由がない。
イ また,原告は,被告が本件訂正発明1における「0.01bar」との数値


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について,その値自体に特段の意味がないと主張することは,本件審査段階におけ
る主張に照らして禁反言の原則から許されないと主張する。しかしながら,上記
(2)のとおり,本件訂正発明1は,実質的に負圧として取り扱える有意な値を選択
して発明の技術思想を表現するために,「少なくとも0.01bar」という値の
範囲を規定したものとみることができるものであり,本件訂正発明1における
「0.01bar」という数値そのものに意味がないものではなく,被告もその旨
を主張しているにすぎないものであって,原告の主張は理由がない。
(4) 小括
したがって,本件訂正発明1に係る特許請求の範囲の記載がサポート要件を満た
すとした本件審決の判断に誤りはない。

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3 取消事由3(実施可能要件に係る判断の誤り)について

(1) 原告の主張
原告は,当業者の常識からすると,高圧縮したフィルタートウベールの弾性復元
力(膨張力)は相応に大きなものであるにもかかわらず,これを0.01barの
負圧によって制御し,これをバランスさせることなどは,膨張による弾性復元力の
減衰を考慮するとしても不可能であって,本件訂正発明1は,0.01bar付近
の負圧で実施するために必要な条件が本件訂正明細書の発明の詳細な説明には記載
されていないなどと主張する。
(2) 本件訂正発明1の技術思想との関係
しかしながら,前記2(2)のとおり,本件訂正発明1に係る特許請求の範囲の
「外圧に対して少なくとも0.01barの負圧がベールにかかっている」との規
定は,ベールの形状を負圧によって制御するとの技術思想を表現したものというこ
とができる。そして,気候による大気圧の変動が想定されること,ベールの圧縮率
は様々なものが想定され,ベールの材料によっても変化するものであることから,
ベールの形状を制御するために利用する負圧について一義的に数値を決められない
という状況の下で,本件訂正発明1は,実質的に負圧として取り扱える有意な値を


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選択して発明の技術思想を表現するために,「少なくとも0.01bar」という
値の範囲を規定したものである。そして,本件訂正明細書には,0.01bar又
はその近辺ではないが,「少なくとも0.01bar」との負圧の数値の範囲内の
複数の実施例が開示されている。
(3) 実験結果
ドイツの第三者機関による実験結果(乙6)において,本件訂正発明1の条件の
下で,プレス時間を長くしてフィルタートウを圧縮したところ,圧縮を解放した直
後の負圧は,外圧に対して10mbar(0.01bar),30分経過後の負圧
は外圧に対して31mbar(0.031bar)であったことが認められる。
また,原告従業員が,本件訂正発明1と実質的に同じであるとして,引用発明2
の条件の下で,トウベールを圧縮し,気密性を確保した上で圧縮を解放した10分
後の負圧は,外圧に対して0.091barであり(甲23),また,引用発明2
の条件の下で,晒しメリヤスウエスを圧縮し,気密性を確保した上で圧縮を解放し
た5分後の負圧は,外圧に対して0.082barであった(甲24)。
(4) 本件訂正発明1と上記実験結果との関係
上記(3)の実験結果は,それぞれの実施条件の相違等もあって,その結果である
負圧の数値を直接比較できるものではないが,上記(2)のとおり,ベールの形状を
制御するために利用する負圧について一義的に数値を決められないという状況の下
で,実質的に負圧として取り扱える有意な値を選択して発明の技術思想を表現する
ために,「少なくとも0.01bar」という値の範囲を規定したものであるとの
本件訂正発明1との関係でみると,上記実験結果の0.01bar,0.082b
ar及び0.091barという数値は,いずれも,「少なくとも0.01ba
r」という負圧の下限値に近いものということができる。
(5) 小括
以上によると,当業者において,本件訂正発明1の「少なくとも0.01ba
r」との条件と同視し得る程度の負圧を実現することが可能ということができ,本


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件訂正発明1の「0.01barの負圧」近辺の極めて低い負圧によっても,当業
者が上記のような大きな膨張力を制御できるとして,本件発明1の効果を奏するも
のであるとした本件審決の判断に誤りはない。

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4 取消事由4(引用例1を主引例とする関係で進歩性を有するとした判断の誤

り)について
原告は,相違点B及びEについて,引用例1には,本件訂正発明1の解決手段に
相当する構成の開示があり,その平坦度の作用効果も必然的に得られるので,これ
らの相違点について,容易に想到することができないとした本件審決には誤りがあ
ると主張するので,まず,引用例1について検討した上で,これらの相違点につい
て検討することとする。
(1) 引用発明1について
ア 引用例1(甲1)には,次の記載がある。
(ア) 本発明は,繊維状の材料からなるプレスベールを包装する方法及び装置等
に関する。
(イ) 繊維状の材料,特に切断された,又はストランド状の繊維からなる高圧縮
されたプレスベールは,ベールプレスにおいて単数又は複数の形弾性的な包装材切
片で包装され,次いで,金属又はプラスチックバンドからなるたがで装備され,こ
のたがが,包装材とプレスベールとを保持することになる。
ところが,たがは,プレスベールの後続加工を困難にするとの欠点を有してい
る。また,たがを切断する際,プレスベールが損傷を受けるおそれがあり,さら
に,作業員が,たがバンドを開く場合に負傷する危険がある。
(ウ) そこで,本発明は,プレスベールをたがで結合することを不要とし,その
代わりに,包装材切片が互いにオーバーラップしてベールの上に当てられ,接着及
び(又は)溶着で互いに結合される。種々異なる包装材切片を相互に接着及び(又
は)溶着で結合することで包装が固定される。
(エ) 包装材切片は,プラスチック,特にポリエチレンから製造することが好ま


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しい。
(オ) 包装装置は,包装材切片を供給し,当て付け,かつ,折り畳むための装置
構成部分に関しては公知の形式のものであることができる。接着及び(又は)溶着
結合を行うためには,包装装置は接近可能なヒートシール装置を有している。この
ヒートシール装置は,種々異なって構成でき,加熱装置及び(又は)圧着装置を有
している。点状又はストライプ状の結合を行うためには,ヒートシール装置に適当
に成形された複数の点状又はストライプ状の単個ポンチを設け,これらの単個ポン
チによって,包装材切片を結合箇所において点状又はストライプ状に互いに圧着
し,場合によっては,この限られた接触面において加熱させることができる。
(カ) 本発明では,包装材切片は,溶着及び(又は)接着で互いに結合される。
これによって,プレスベールのために全面的に閉じた包体又は包装が形成される。
この包体又は包装は,プレスベールに掛けられていたプレス圧を除いた後でも,膨
らむベールの力に耐える。本発明は,包装をバンド,たが又はそれに類似した物で
付加的に補強することを不要にするが,別の実施例においては,このような補強は
同様にまだ存在していることもできる。
(キ) 第5図においては,包装材切片が多層に,有利には2層に構成されている
ことが示されている。包装材切片は,堅固な保持構造,有利には膨張したプレスベ
ールにより発生した力を受け止め,包装を安定化する織布の形をした保持構造を有
している。保持構造は補強バンドを有しているか,又は他の適当な形式で構成され
ていることもできる。
(ク) 有利な実施例においては,包装材切片はプラスチックからなっている。こ
の包装材切片は,大きな引っ張り強度を有しているが,折り畳み,かつ,曲げるこ
とを許す。この包装材切片は,プレスベールの周囲に所望の形式で当て付ける限り
においては十分な形弾性を有するが,プレスポンチによる負荷をプレスベールから
除いた後で,プレスベールの形を維持するためには,十分な内部引っ張り強度及び
伸張強度を有している。必要な強度はベール材料に合わせられ,かつ,変化させる


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ことができる。
イ 以上の記載によると,引用発明1は,プラスチック,特にポリエチレンから
製造された包装材切片を,互いにオーバーラップさせて溶着及び(又は)接着して
結合することとし,これによって,プレスベールのために全面的に閉じた包体又は
包装を形成し,この包体又は包装は,プレスベールに掛けられていたプレス圧を除
いた後でも十分な内部引っ張り強度及び伸張強度を有し,膨らむベールの力に耐え
るものであること,しかしながら,包装をバンド,たが又はそれに類似した物で付
加的に補強することを不要にするものであるものの,別の実施例においては,この
ような補強は同様にまだ存在していることもできるというものである。
したがって,引用発明1においては,包装材切片を結合して形成されたベールの
包装は,プレスベールに掛けられていたプレス圧を除いた後でも,膨らむベールの
力に耐えるものであるが,その膨らむベールの力に耐える手段としては,包装がプ
レスベールの形を維持するために十分な引っ張り強度及び伸張強度を有するように
するというものであって,それゆえ,これらの強度が不足する場合には,別の実施
例においては,包装を,バンド,たが又はそれに類似した物で付加的に補強するこ
ともできるとするものである。しかしながら,引用例1においては,包装の引っ張
り強度や伸張強度によらず,負圧を制御する手段について何ら記載又は示唆すると
ころはない。
ウ なお,原告は,引用例1における「ベールプレスの構成,プレスベールの材
料の選択及び包装及び折り畳み技術についての記述したヴアリエーションに加え
て,ヒートシール装置13にも変更を加えることができる。押圧ビームは全面的に
オーバーラップ若しくは結合箇所10に作用し,ストライプ状又は点状の単個ポン
チを有していないこともできる。」との記載や図2等から,引用例1においては,
全面をシールしてパッケージ包装内を一定の負圧にするという技術が開示されてい
ると主張する。しかしながら,これは,結合箇所が全面的に結合されることを示す
ものということができるが,その結合箇所においてどの程度の密封性が確保される


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のか否か,接合箇所以外の部分における包装材料が気密性を有するものであるか否
かについては,何ら記載も示唆もするものではなく,引用例1において,気密性を
確保して負圧を制御する手段も記載又は示唆されているということはできず,原告
の主張は理由がない。
(2) 相違点Bについて
ア 上記(1)のとおり,引用例1には,膨らむベールの力に耐える手段として,
包装がプレスベールの形を維持するために十分な引っ張り強度及び伸張強度を有す
る包装としたことの記載があるが,気密性を確保して負圧を制御する手段の記載も
示唆もないものである。
イ したがって,引用例1には,前記2(1)及び(2)のとおりの本件訂正発明1の
ように,ベールの移動を妨害するような膨張部分及びトウベールの頂部と底部にお
けるフィルタートウの繰り出しを妨害するくびれ部分のない,理想的なブロック形
態に高圧縮したフィルタートウのベールを提供することまでは想定されておらず,
かつ,具体的に平坦さに着目しているとする記載も示唆もないから,引用発明1か
ら,相違点Bに係る本件訂正発明1の構成について容易に想到し得るものではな
い。
ウ なお,原告は,引用例1には,本件訂正発明1の機能・特性等による解決手
段に相当する構成が全て開示されているから,本件訂正発明1の平坦度の作用効果
も必然的に得られると主張する。しかしながら,上記(1)のとおり,引用発明1
は,膨らむベールの力に耐える手段として,包装がプレスベールの形を維持するた
めに十分な引っ張り強度及び伸張強度を有する包装を採用することにとどまるので
あるから,原告の主張は採用することはできない。
(3) 相違点Eについて
ア 上記(1)のとおり,引用発明1は,膨らむベールの力に耐える手段として,
包装がプレスベールの形を維持するために十分な引っ張り強度及び伸張強度を有す
る包装としたものであって,引用例1には,気密性を確保して負圧を制御する手段


  • 31 -



の記載も示唆もないものである。
イ したがって,引用例1には,本件訂正発明1のように負圧を制御する技術思
想を認めることができないから,引用発明1から,相違点Eに係る本件訂正発明1
の構成について容易に想到し得るものではない。
(4) 小括
したがって,引用発明1に基づいて,相違点B及びEに係る本件訂正発明1の構
成について容易に想到し得るものではないとした本件審決の判断に誤りはない。

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5 取消事由5(引用例2を主引例とする関係で進歩性を有するとした判断の誤り)について

原告は,相違点B’及びE’について,引用例2及び3から容易に想到すること
ができないとした本件審決には誤りがあると主張するので,引用例2及び3につい
て検討した上で,これらの相違点について検討することとする。
(1) 引用発明2について
ア 引用例2(甲2,17)によると,引用発明2は,前記第2の3(3)アのと
おりのものと認めることができる。
他方,引用例2には,圧縮下で可撓性のプラスチックで密閉され,梱包圧の解放
時に,ベールの容積が増すことに対応した分の圧力が低下すること,すなわち負圧
になることについて記載又は示唆するところはなく,また,ベールの移動を妨害す
るような膨脹部分及び頂部と底部における繰り出しを妨害するくびれ部分のないベ
ールを提供することについての記載又は示唆もない。
イ もっとも,本件審決は,引用発明2は,梱包圧の解放時に,第2の袋部が外
側に押されて膨張し,ベールの容積が増すことに対応した分の圧力が低下するもの
であると説示する。また,引用例2には,発明のプロセスによって成形されるプラ
スチックで覆われたベースは,外皮が可撓性であり(【0008】),繊維材料が
圧縮されており(【0025】),梱包されている材料の性質に応じて,また,用
いる包装材料の強さに応じて,包装されたベールは必ずしも結束される必要はな


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く,ある場合では,2つの袋部が単にそれらの縁で一緒に溶接されるだけのままで
十分であり,その場合には,溶接は全ての部分で連続的に行われるとされ(【00
09】【0027】),包装物は,雨又は湿気の影響を受けず,外皮は梱包材料の
膨張圧を十分に吸収するように対応するものであって(【0008】),本発明に
よるプロセスの好適な実施例は,最高品質の袋状べール(すなわち,ベール材料が
完全に包囲されている)を成形するためのものである(【0029】)と記載され
ている。
しかしながら,引用例2には,上記のとおり,「雨又は湿気に影響を受けず」に
梱包するとの記載はあるものの,これは,引用例2における従来技術の記載である
「包装物は衝撃に影響を受けやすい。車載中等の通常の取扱いの際によく起こるよ
うに,包装物が落下して隅が当たる場合,段ボールの壁は隅が破損し,内容物が膨
れ上がってはみ出す。最終的に,段ボールは雨によって分解するため,段ボール容
器に包装されたベールはカバーをして貯蔵及び搬送される必要がある」(【000
6】)との対比で記載されていると理解されるべきものであって,このような従来
技術との対比で,「包装物は,雨又は湿気に影響を受けず,外皮は梱包材料の膨張
圧を十分に吸収するように対応する」(【0008】)とされたにすぎないものと
いうことができ,同記載については,雨水や空気中の水分がベール内外の出入りを
妨げられることは読み取ることができるものの,それ以上に,気体までもが通り抜
け難いものとするとのガスの透過性に関することまで示されているものということ
はできない。
そして,このことは,本件訂正発明1においては,弾性梱包材料は「対流に対し
て気密性を有する1つまたはそれ以上の接続部分を備えており」,かつ,この材料
は「空気に関するガス透過率が10,000㎤/(㎡・d・bar)未満であるフ
ィルム」であるとされ,弾性梱包材料のガスの透過性についてまで規定されている
ことと対比すると,より明確ということができる。
(2) 引用発明3について


  • 33 -

    ア 引用例3(甲3,19)には,次の記載がある。
    (ア) 本発明は,保管又は運送の後に,例えば紡績糸に更に加工するための,ト



ウを連続的に,かつ,均一に引き出せる方法による箱又は他の適切なコンテナ内へ
のフィラメント状トウの梱包に関する。
(イ) 本発明の実施形態を説明すると,図1は,ウイングナットとボルトによっ
て所定の位置へクランプされた延長部を有する空コンテナと,所定の位置へ折り畳
まれた空気不透過性のライナを示す。図2は,フィラメント状のトウの横向き並置
機構を示す。これは,コンテナの実質的な全平面において各層にトウを均一に並置
するため,コンテナのよりゆっくりした前後の動作機構と同期が取られる。ライナ
がトウで満たされると,供給が中断され,トウは切断され,真空プローブがライナ
へ挿入され,内容物の配置を妨害せずに,トウの頂部に置かれる。図5に示される
ように,ナットとボルトのクランプが外されると,延長部がコンテナ上に伸長され
る。次に,ライナは,プローブの周囲で気密にされ,ライナからの空気の排出が,
トウの上層面上にプローブを静止させながら,それを埋めることがないようにし
て,開始される。図4に示されるように,ライナは,プローブの周囲で単に集めら
れ,プローブの筒の周囲で締められる。内容物を有するライナが収縮し,ライナ袋
がしわになって縮むと,延長部が漸進的に下降する。380mmHgの圧力に排気が完
了すると,延長部は引き取られてもよい。図6に示されるように,ヒンジ状の側部
ドアが開かれ,図7に示されるように,フィラメント状のトウの内容物を有するラ
イナはローラテーブルコンテナの傾斜へ転がり落ちた後,開放したボール紙の包装
ケースへ挿入される。図8に示されるように,装置の一形式において,包装ケース
は上方に傾斜できるピボット状のプラットホームに対して安定している。前後のフ
ラップ(図示せず)と同じように,蓋側のフラップが閉じられ,包装ケースがひも
でくくられ,プローブが引き取られ,カートンがシールされ,搬送準備が行われ
る。
イ 以上の記載によると,引用例3には,真空プローブによって380mmHgの圧


  • 34 -



力によって排気され,これによって,材料を圧縮することが記載されているが,他
方,本件訂正発明1のように,ベールの頂側部と底側部とに妨害となるような膨脹
部分又はくびれ部分のないようにするために,負圧を制御して平坦にしようとする
ことは記載も示唆もされておらず,むしろ,排気によって材料を圧縮するものであ
るから,本件訂正発明1のように負圧を制御しようとの技術思想は存在しないもの
ということができる。
(3) 相違点B’について
上記(1)のとおり,引用例2には,ベールの移動を妨害するような膨脹部分及び
頂部と底部における繰り出しを妨害するくびれ部分のないベールを提供することに
ついての記載又は示唆はなく,また,上記(2)のとおり,引用例3には,ベールの
頂側部と底側部とに妨害となるような膨脹部分又はくびれ部分のないようにするた
めに,負圧を制御して平坦にしようとすることの記載又は示唆がないものであるか
ら,引用発明2及び3から,相違点B’に係る本件訂正発明1の構成について容易
に想到し得るものではない。
(4) 相違点E’について
上記(1)のとおり,引用例2には,気密性を利用して負圧になることについての
記載又は示唆はなく,また,上記(2)のとおり,引用例3には,負圧を制御しよう
とすることの記載又は示唆もないものであるから,引用発明2及び3から,相違点
E’に係る本件訂正発明1の構成について容易に想到し得るものではない。
(5) 小括
したがって,引用発明2及び3に基づいて,相違点B’及びE’に係る本件訂正発
明1の構成について容易に想到し得るものではないとした本件審決の判断に誤りは
ない。
6 結論
以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告が具体
的な取消事由を主張しない本件訂正発明のうち他の請求項に係る発明を含めて,本


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件審決の取消しを求める原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部

裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣


裁判官 本 多 知 成


裁判官 荒 井 章 光


  • 36 -





(別紙) 本件訂正前発明

【請求項1】ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部
分が無い,梱包され,ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールであっ
て,
(a) 前記ベールが,少なくとも300kg/㎥の梱包密度を有し;
(b) 前記ベールが,機械的に自己支持する弾性梱包材料内に完全に包装され,
かつこの材料は,対流に対して気密性を有する1つまたはそれ以上の接続部分を備
えており;
(c) 非開封状態のベールを水平面上に配置した状態で,平坦な板をベールの頂
部に圧接させ,ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき,
圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で,ベールの頂面
における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が,平坦な板から約40mm
以下離間する程度に,前記ベールの頂面および底面が平坦であり;
(d) 前記ベールが,少なくとも約900mmの高さを有しており;
(e) 少なくともベールが梱包された後に,外圧に対して少なくとも0.01b
arの負圧がベールにかかっている,
ことを特徴とするフィルタートウのベール
【請求項2】前記ベールが,少なくとも約10N/15mmの裂破強度(DIN E
N ISO 527-3に従って測定)を有する,ことを特徴とする請求項1記載
のベール
【請求項3】0.9㎥よりも高い梱包容量,および/または350kg/㎥,特に8
00kg/㎥未満の梱包密度を有することを特徴とする請求項1または2記載のベー

【請求項4】少なくとも970mm,特に970~1200mmの高さを有することを
特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のベール
【請求項5】前記パッケージ包装材がフィルム,特にプラスチック・フィルムであ


  • 37 -



ることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のベール
【請求項6】対流に対して気密性を有する接続部が,対流空気が透過不可能なシー
ムであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に請求項のいずれか1項に
記載のベール
【請求項7】空気が透過不可能なシームが,重ね合わせヒートシールシーム,また
はヒレ状シームであることを特徴とする請求項6に記載のベール
【請求項8】前記内接矩形内に位置する前記ベールの頂部側表面の90%が,25
mm以下,好ましくは,10mm以下の距離で前記平坦板から離間することを特徴とす
る,請求項1~7のいずれか1項に記載のベール
【請求項9】ポリエチレン,特にLDPE,または改良ポリエチレン(LLDP
E)から成ることを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記載のベール
【請求項10】前記パッケージ包装材が,ポリアミド層とポリエチレン層を積層し
た積層フィルムであることを特徴とする請求項5~8の少なくとも1項に記載のベ
ール
【請求項11】前記パッケージ包装材が,約100~400μmの厚さを有するこ
とを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のベール
【請求項12】前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動梱包を備え,
および/または,さらにストラップで包装されている,ことを特徴とする請求項1
~11のいずれか1項に記載のベール
【請求項13】梱包後に存在する,外圧に対して少なくとも約0.01barの負
圧が,解放されていることを特徴とする請求項1~12の少なくとも1項に記載の
ベール
【請求項14】(a) 前記フィルタートウを圧縮形態で準備するステップと;
(b) 前記圧縮されたフィルタートウをパッケージ包装材で包装するステップ
と;
(c) 前記パッケージ包装材を気密状態にシールするステップと;


  • 38 -

    (d) 前記包装されたベールにかかる負荷を解放するステップと;
    (e) 外圧に対して少なくとも0.01barの負圧を,前記負荷が解放された



パッケージ包装材内に発生させるステップとを備えた,
特に請求項1~13のいずれか1項に記載のフィルタートウのベールを梱包する
プロセス
【請求項15】前記負圧が前記圧縮されたフィルタートウの自然の膨張によって発
生されることを特徴とする請求項14に記載のプロセス
【請求項16】前記負圧が空気の排出によって発生されることを特徴とする請求項
14または15記載のプロセス
【請求項17】前記空気が,真空ポンプの補助によって排出されることを特徴とす
る請求項16記載のプロセス
【請求項18】周囲圧力よりも約0.15~0.7bar低い負圧が生成されるこ
とを特徴とする請求項14~17のいずれか1項に記載のプロセス
【請求項19】周囲圧力よりも約0.2~0.40bar低い負圧が生成されるこ
とを特徴とする請求項18に記載のプロセス
【請求項20】前記パッケージ包装材が,溶着またはヒートシールによって,特に
重ね合わせシームまたはヒレ状シームを形成するような方法でシールされることを
特徴とする請求項14~19のいずれか1項に記載のプロセス
【請求項21】温度23℃,相対湿度85%で,DIN53,122に従って測定
される水蒸気透過率が,5g/(㎡・d)以下,好ましくは2g/(㎡・d)以下
であるフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項14~
20のいずれか1項に記載のプロセス
【請求項22】温度23℃,相対湿度75%で,DIN53,380-Vに従って
測定される空気に関するガス透過率が,10,000㎤/(㎡・d・bar)以下
であるフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項14~
21のいずれか1項に記載のプロセス


  • 39 -



【請求項23】200c㎥/(㎡・d・bar),好ましくは20㎤/(㎡・d・
bar)以下のガス透過率を有するフィルムをパッケージ包装材として使用するこ
とを特徴とする請求項22に記載のプロセス
【請求項24】少なくとも10N/15mm,特に少なくとも100N/15mmの裂
破強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)を有するフィル
ムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項14~23のいずれ
か1項に記載のプロセス
【請求項25】前記裂破強度が,少なくとも200N/15mm(DIN EN I
SO 527-3に従って測定される)であることを特徴とする請求項24に記載
のプロセス
【請求項26】前記プロセスが,少なくとも300kg/㎥の梱包密度が得られるよ
うに制御されることを特徴とする請求項14~25のいずれか1項に記載のプロセ


  • 40 -



(別紙) 本件訂正後発明
下線部分が訂正箇所である。
【請求項1】ベールの頂側部と底側部に妨害となるような膨張部分またはくびれ部
分が無い,梱包され,ブロック形態に高圧縮したフィルタートウのベールであっ
て,
(a) 前記ベールが,少なくとも300kg/㎥の梱包密度を有し;
(b) 前記ベールが,機械的に自己支持する弾性梱包材料内に完全に包装され,
かつこの材料は,対流に対して気密性を有する1つまたはそれ以上の接続部分を備
えており,かつこの材料は,温度23℃,相対湿度75%で,DIN53,380
-Vに従って測定される空気に関するガス透過率が10,000㎤/(㎡・d・b
ar)未満であるフィルムであって;
(c) 非開封状態のベールを水平面上に配置した状態で,平坦な板をベールの頂
部に圧接させ,ベールの中心に対して垂直方向に100Nの力を作用させたとき,
圧接板に対するベールの垂直投影に内接する最大の矩形の範囲内で,ベールの頂面
における内接矩形内に位置する部分の少なくとも90%が,平坦な板から40mm以
下離間する程度に,前記ベールの頂面および底面が平坦であり;
(d) 前記ベールが,少なくとも900mmの高さを有しており;
(e) 少なくともベールが梱包された後に,外圧に対して少なくとも0.01b
arの負圧がベールにかかっている,
ことを特徴とするフィルタートウのベール
【請求項2】前記ベールが,少なくとも10N/15mmの引裂き強度(DIN E
N ISO 527-3に従って測定)のフィルムを有する,ことを特徴とする請
求項1記載のベール
【請求項3】0.9㎥よりも高い梱包容量,および/または350kg/㎥よりも高
く,特に800kg/㎥未満の梱包密度を有することを特徴とする請求項1または2
記載のベール


  • 41 -



【請求項4】少なくとも970mm,特に970~1200mmの高さを有することを
特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のベール
【請求項5】前記梱包材料がプラスチック・フィルムであることを特徴とする請求
項1~4のいずれか1項に記載のベール
【請求項6】対流に対して気密性を有する接続部が,対流空気が透過不可能なシー
ムであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に請求項のいずれか1項に
記載のベール
【請求項7】空気が透過不可能なシームが,重ね合わせヒートシールシーム,また
はヒレ状シームであることを特徴とする請求項6に記載のベール
【請求項8】前記内接矩形内に位置する前記ベールの頂部側表面の90%が,25
mm以下,好ましくは,10mm以下の距離で前記平坦板から離間することを特徴とす
る,請求項1~7のいずれか1項に記載のベール
【請求項9】ポリエチレン,特にLDPE,または改良ポリエチレン(LLDP
E)から成る梱包材料を有することを特徴とする請求項5~8のいずれか1項に記
載のベール
【請求項10】前記梱包材料が,ポリアミド層とポリエチレン層を積層した積層フ
ィルムであることを特徴とする請求項5~8の少なくとも1項に記載のベール
【請求項11】前記梱包材料が,100~400μmの厚さを有することを特徴と
する請求項1~10のいずれか1項に記載のベール
【請求項12】前記ベールが厚紙または合成布地から成る追加の移動用梱包を備
え,さらにストラップで包装されている,ことを特徴とする請求項1~11のいず
れか1項に記載のベール
(本件訂正前の【請求項13】を削除)
【請求項13】(a) 前記フィルタートウを圧縮形態で準備するステップと;
(b) 前記圧縮されたフィルタートウをパッケージ包装材で包装するステップ
と;


  • 42 -

    (c) 前記パッケージ包装材を気密状態にシールするステップと;
    (d) 前記包装されたベールにかかる負荷を解放するステップと;
    (e) 外圧に対して少なくとも0.01barの負圧を,前記負荷が解放された



パッケージ包装材内に発生させるステップとを備えた,
特に請求項1~12のいずれか1項に記載のフィルタートウのベールを梱包する
プロセス
【請求項14】前記負圧が前記圧縮されたフィルタートウの自然の膨張によって発
生されることを特徴とする請求項13に記載のプロセス
【請求項15】前記負圧が空気の排出によって発生されることを特徴とする請求項
13または14記載のプロセス
【請求項16】前記空気が,真空ポンプの補助によって排出されることを特徴とす
る請求項15記載のプロセス
【請求項17】周囲圧力よりも0.15~0.7bar低い負圧が生成されること
を特徴とする請求項13~16のいずれか1項に記載のプロセス
【請求項18】周囲圧力よりも0.2~0.40bar低い負圧が生成されること
を特徴とする請求項17に記載のプロセス
【請求項19】前記パッケージ包装材が,溶着またはヒートシールによって,特に
重ね合わせシームまたはヒレ状シームを形成するような方法でシールされることを
特徴とする請求項13~18のいずれか1項に記載のプロセス
【請求項20】温度23℃,相対湿度85%で,DIN53,122に従って測定
される水蒸気透過率が,5g/(㎡・d)未満,好ましくは2g/(㎡・d)未満
であるフィルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13~
19のいずれか1項に記載のプロセス
(本件訂正前の【請求項22】を削除)
【請求項21】200㎤/(㎡・d・bar)未満,好ましくは20㎤/(㎡・
d・bar)未満のガス透過率を有するフィルムをパッケージ包装材として使用す


  • 43 -



ることを特徴とする請求項13~20のいずれか1項に記載のプロセス
【請求項22】少なくとも10N/15mm,特に少なくとも100N/15mmの引
裂き強度(DIN EN ISO 527-3に従って測定される)を有するフィ
ルムをパッケージ包装材として使用することを特徴とする請求項13~21のいず
れか1項に記載のプロセス
【請求項23】前記引裂き強度が,少なくとも200N/15mm(DIN EN
ISO 527-3に従って測定される)であることを特徴とする請求項22に記
載のプロセス
【請求項24】前記プロセスが,少なくとも300kg/㎥の梱包密度が得られるよ
うに制御されることを特徴とする請求項13~23のいずれか1項に記載のプロセ


  • 44 -





H230328現在のコメント


(知財高裁平成23年3月24日判決(平成22年(行ケ)第10214号審決取消請求事件))

【訂正の可否】【サポート要件】【実施可能要件】【進歩性】「事実認定」の判決です。

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Last Update: 2011-03-28 21:50:52 JST

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……………………………………………………判決末尾top
メインサイト(Sphinx利用)知財高裁のまとめMY facebook弁護士・弁理士 岩原義則知的財産法研究会ITと法律研究会弁護士・弁理士サービスのフェイスブック活用研究会

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