2011年3月3日木曜日

特許:【補正の機会を与える義務…否定】「解釈」:(知財高裁平成23年3月3日判決(平成22年(行ケ)第10307号審決取消請求事件))






特許:【補正の機会を与える義務…否定】「解釈」:(知財高裁平成23年3月3日判決(平成22年(行ケ)第10307号審決取消請求事件))




知的財産高等裁判所第4部「滝澤孝臣コート」


平成22(行ケ)10307 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成23年03月03日 知的財産高等裁判所

(知財高裁平成23年3月3日判決(平成22年(行ケ)第10307号審決取消請求事件))

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【補正の機会を与える義務…否定】「解釈」




判示・縮小版なし


(知財高裁平成23年3月3日判決(平成22年(行ケ)第10307号審決取消請求事件))

第2
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事案の概要

本件は,原告が,下記1のとおりの手続において,原告の本件出願に対する拒絶査定不服審判の請求について,特許庁が,本件補正を却下し,発明の要旨を下記2の特許請求の範囲の記載のとおり認定した上,同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記3のとおり)には,下記4の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。





検討


(1)
本件出願に適用される法17条の2第1項は,特許出願人が同法50条に
よる拒絶理由通知を受けた後は,最初の拒絶理由通知を受けた場合の指定期間内,
最後の拒絶理由通知を受けた場合の指定期間内及び拒絶査定を受けた場合の査定不
服審判請求の日から30日以内にするときに限り,願書に添付した明細書(特許請
求の範囲を含む)及び図面の補正をすることができると規定している。これは,無
制限に補正を認めたのでは,手続を複雑にし,特許庁の負担もいたずらに増すこと
になり,ひいては迅速な権利付与手続の妨げにもなること,出願人同士の公平性の
確保という見地などから,願書に添付した明細書及び図面の補正につき,補正ので
きる時期について一定の制限を加えたものである。
これを本件についてみると,本件出願については,原告が本件審尋書を受領した
時点において,上記1のとおり,平成19年8月20日付けで拒絶理由通知がされ
て補正をすることができる指定された期間が経過し,また,平成20年7月1日の
審判請求の日から30日の期間も経過していたのであるから,拒絶査定の理由と異
なる拒絶理由があるとして改めて拒絶理由が通知される場合は格別,審判官におい
て,法律上,特許出願人である原告に対して補正の機会を与える義務はない。
しかるところ,本件審決は,平成19年8月20日付け拒絶理由通知書,原告か
らの同20年2月22日付け意見書及び手続補正書,同年3月27日付け拒絶査定
で一貫して対象とされていた事項について,同拒絶査定と同じ理由で本願発明を査


  • 7 -


定することができないと判断したものであるが,原告としては,査定不服審判請求
の日から30日以内にする補正において,この点について適切に補正する機会が与
えられていたものである。それにもかかわらず,原告は,この時点に至っても,な
お,審判官とのせめぎ合いの中でできるだけ補正可能性のある広い特許請求の範囲
を模索するとして,拒絶理由通知に対応した最終的な補正方針に基づく,より限定
された特許請求の範囲の補正をせずにいたというのであって,このような対応をし
た原告が,改めて拒絶理由が通知される場合でないのに,その場合と同様に補正の
機会を与えられなかったことを不当であるなどと主張することは失当というほかな
い。
(2)
この点について,原告は,本件審尋書において,「回答がない場合であっ
ても,審理において不利に扱うことはありません」との記載がされたことをもっ
て,回答書の提出後に,少なくとも1回は,意見書及び手続補正書を提出する機会
が与えられるべきであるなどと主張する。
しかしながら,本件審尋書は,「前置報告を利用した審尋」を行うために原告に
対して送付されたものであるところ(乙1),これは,審判請求人に対して,前置
審査の結果である前置報告の内容を審尋により送付し,審査官の見解に対する反論
の機会を与えることにより,審判における審理・判断を充実させるために行われて
いるものであって,「前置報告を利用した審尋」が行われたことをもって,審判請
求人に更なる補正の機会が与えられるものではない。
そして,このことは,本件審尋書においても,備考欄において「この審尋は,拒
絶理由の通知(同法第159条において準用する同法第50条)ではありませ
ん。」と記載されて明らかにされているものである。また,同備考欄における「回
答がない場合であっても,審理において不利に扱うことはありません」との記載
も,仮に回答がない場合であっても,回答がある場合と比べて審理において不利に
は扱わないという意味以上のものとは解されないものであって,同記載をもって,
審判請求人に必ず補正の機会が与えられるべきものであるとの原告の主張は,同記


  • 8 -


載を正解しないというにすぎず,これを採用する余地はない。
(3)
なお,原告は,以上るる主張するところをもって,本件審判手続には,特
許法153条2項の違反があると結論付けているが,その適条はともかく,原告の
主張を採用し得ないことは以上説示したとおりである。


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結論

以上の次第であるから,原告の請求は棄却されるべきものである。
知的財産高等裁判所第4部
裁判長裁判官 滝 澤 孝 臣


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Last Update: 2011-03-07 11:28:58 JST

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