2011年2月28日月曜日

特許:【特許法36条4項1号該当性判断】「事実認定」:(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10320号審決取消請求事件))






特許:【特許法36条4項1号該当性判断】「事実認定」:(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10320号審決取消請求事件))




知的財産高等裁判所第3部「飯村敏明コート」


平成22(行ケ)10320 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟
平成23年02月28日 知的財産高等裁判所 

(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10320号審決取消請求事件))

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【特許法36条4項1号該当性判断】「事実認定」




判示・縮小版なし


取消事由3(本願発明ないし本願補正発明に関し,特許法36条4項1号の要件を満たさないとした判断の誤り)について

本願発明及び本願補正発明について特許法36条4項1号の要件を満たさないと判断する。その理由は,以下のとおりである。


まず,原告は,「審決は,図3と図4を適切に区別せず,又は,仮に区別したとしても,図3,図4と本願発明ないし本願補正発明との技術的対応関係を考慮せず,特許法36条4項1号の要件を満たさないと判断した誤りがある。」と主張する。

しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。

すなわち,審決は,本願発明ないし本願補正発明の技術事項が本願の明細書の発明の詳細な説明に明確かつ十分に記載されているかを判断するに当たり,「図3は『映像画面における変換範囲の各色情報の位置を示した図』(【図面の簡単な説明】の記載を参照。)とされるものであって,当該図面の記載から,符号10が付された略正方形の図形,当該図形の内側であって符号11が付された直線,当該直線上に符号12が付された略正方形の図形,符号12が付された略正方形の図形,当該図形の内側であって,『CBAabc』との記載と直線状に並んだ複数の略正方形の図形が窺える。さらに,図4は『色情報を高域周波数を用いた波形要素に変換した波形図』(【図面の簡単な説明】の記載を参照。)とされるものであって,横軸を0∼0.1mS(判決注:前記1のとおり,『0∼1mS』の誤記と認める。)とする『ミリ秒』及び『色調(明度,彩度)』とし,縦軸を『色相』とする棒グラフが記載されており,当該グラフの記載から,棒の高さは左から右に向かって,はじめの5本は次第に長くなり,5本目以降は同一の長さであることが窺える。」(審決2頁35行∼3頁11行,5頁10∼21行)と認定した。その上で,審決は,これらの記載をどのように組み合わせると「映像画面の変換範囲から各色情報を波形要素として色波形変換した高域周波数の波形」(本願補正発明)ないし「変換元の色情報を波形要素に変換した高域周波数の波形」(本願発明)が得られるのか具体的に記載されておらず,技術常識を併せみても上記事項が明らかであるとはいえないと判断した。

そうすると,審決は,図3と図4を区別し,図3,図4と本願発明ないし本願補正発明との技術的対応関係を考慮しているというべきであり,その判断過程及び判断内容に誤りはない。また,本願の明細書(乙6)の【図面の簡単な説明】【0016】の記載を勘案して図3と図4を組み合わせたとしても,「色情報」を「高域周波数の波形」に「変換」することの具体的内容を特定する記載がないことに変わりはなく,本願発明ないし本願補正発明に関する明細書が特許法36条4項1号の要件を満たすとはいえない。

したがって,原告の上記主張は理由がない。


次に,原告は,「音の大きさを変化させて所定の音色の波形に変換するシンセサイザー等は慣用技術であり,シンセサイザーの技術分野における波形変換方法から図4の内容を把握して,本願発明ないし本願補正発明の具体的構成を特定することができる。一方,図4の波形は,色相,明度,彩度のそれぞれの色情報に応じて波形(振幅,長さ,傾き)も変わることを意味しており,色情報に応じた波形に変換するという技術的意義を有する。すなわち,図4の内容から,波形のもととなる要素として,色情報の色相,明度,彩度を用いるという技術的意義を把握すれば,波形変換方法について具体的に記載するまでもなく当業者にとって技術的設計事項であるから,本願発明ないし本願補正発明は当業者にとって理解可能である。したがって,図4,技術常識を併せみても,本願発明ないし本願補正発明が特許法36条4項1号の要件を満たさないとした審決の判断は誤りである。」と主張する。

しかし,原告の主張は,以下のとおり失当である。

すなわち,シンセサイザーのような音の大きさを変化させて所定の音色の波形に変換する波形変換方法が慣用技術であるとしても,それは所定の音色の波形を合成するものであり,色情報を音波に変換する技術とは異なるから,シンセサイザーにおける波形変換方法から,図4の内容を把握して,本願発明ないし本願補正発明の具体的構成を理解することはできないというべきである。

また,本願の明細書(乙6)には,「映像色聴方法」について,「画像空間を効率的に色聴し,高速に認識することができる画像認識方法」(段落【0003】),「聴覚から映像画面を色聴できる映像色聴方法」(段落【0004】)との記載があるが,図4の内容から,波形のもととなる要素として,色情報の色相,明度,彩度を用いるという技術的意義を把握できたとしても,そのことによって,当業者において,聴覚から映像画面を認識(色聴)できる「映像色聴方法」を得られるとはいえない。その他,明細書の記載及び図面(乙5,6,8,10)を総合しても,聴覚から映像画面を認識(色聴)できるような色情報の音波への変換方法の具体的内容が特定されているとは認められない。

したがって,図4,技術常識を併せみても,本願発明ないし本願補正発明が特許法36条4項1号の要件を満たさないとした審決の判断に誤りはなく,原告の主張
は理由がない。

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Last Update: 2011-03-03 14:31:03 JST

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