2011年2月28日月曜日

特許:【職権審理結果通知の適法性】「解釈」,【特許法36条1項1号の意義】「解釈」,【無効審判請求の審理範囲と容易想到性】「解釈」:(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10221号審決取消請求事件))






特許:【職権審理結果通知の適法性】「解釈」,【特許法36条1項1号の意義】「解釈」,【無効審判請求の審理範囲と容易想到性】「解釈」:(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10221号審決取消請求事件))




知的財産高等裁判所第3部「飯村敏明コート」



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【職権審理結果通知の適法性】「解釈」




判示・縮小版なし


職権審理結果通知は,当事者又は参加人が申し立てない理由について審理したときに,その審理の結果を当事者等に通知し,相当の期間を指定して,意見を申し立てる機会を与えるものであり(特許法134条の2第3項),意見書の提出を前提としていることからすると,意見書を参酌した上で,その後の審判官の見解が,職権審理結果通知書の記載と変わる場合のあることを予定しているものと認められ,職権審理結果通知書の記載が,審決の結論又は理由を拘束するとの法的根拠はない。

そうすると,本件訂正を拒絶する旨の職権審理結果通知書(甲47)の記載とは結論及び理由を異にして,本件訂正を認める旨の審決が行われたとしても,その点をもって違法ということはできない。

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【特許法36条1項1号の意義】「解釈」




判示



特許法36条1項1号の意義

特許法36条1項1号は,技術を公開した範囲で,公開の代償として独占権を付与するという特許制度の目的に照らし,発明の詳細な説明において開示された技術的事項と対比して広すぎる独占権の付与を排除する趣旨で設けられたものであるから,同号の解釈に当たっては,特許請求の範囲の記載が,発明の詳細な説明に記載された技術的事項を超えるか否かを必要かつ合目的的な解釈によって判断すれば足りると解される。



縮小版


「特許法36条1項1号は,技術を公開した範囲で,公開の代償として独占権を付与するという特許制度の目的に照らし,発明の詳細な説明において開示された技術的事項と対比して広すぎる独占権の付与を排除する趣旨で設けられたものであるから,同号の解釈に当たっては,特許請求の範囲の記載が,発明の詳細な説明に記載された技術的事項を超えるか否かを必要かつ合目的的な解釈によって判断すれば足りると解される。」(知財高裁平成23年2月28日判決(平成22年(行ケ)第10221号審決取消請求事件))

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【無効審判請求の審理範囲と容易想到性】「解釈」




判示・縮小版なし



すなわち,本件無効審判においては,甲1ないし8に記載された公知技術に基づく容易想到性が無効審判請求の理由とされており,甲51ないし62の特許公報等は,審判において証拠として提出されておらず,甲51ないし62に記載された公知技術との対比における進歩性欠如等の無効原因は,本件無効審判で審理判断されていないから,その無効原因を本訴において新たに主張することは許されない。また,仮に甲51ないし62の特許公報等に記載された技術が周知技術といえるものであったとしても,それらの特許公報等は,その内容に照らすと,容易想到性を判断するに当たり,本件無効審判で提出されていた甲1ないし8等に記載された公知技術を単に補うにとどまるものではなく,別途,容易想到性を基礎付ける公知技術を示すものと解されるから,その点からしても,甲51ないし62の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効原因を本訴において新たに主張することは許されない。したがって,原告の上記主張は,その前提において,採用することができず,それを前提とするその余の原告の主張も,採用することができない。

なお,甲51ないし62の特許公報等に記載された技術との対比における進歩性欠如等の無効原因は,本件無効審判とは別に,それらの無効原因に基づいて無効審判請求をした場合には,その無効審判において主張することができる。

5 訂正発明2,3に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由5)について

原告は,訂正発明2と甲1発明の相違点4,訂正発明3と甲1発明の相違点5に係る技術は,本件特許出願前に頒布された多数の特許公報等(甲13ないし15,18ないし30)に記載された技術常識であるとの主張を前提として,相違点4に係る訂正発明2の構成,相違点5に係る訂正発明3の構成は,このような技術常識に基づいて容易に想到し得たものであると主張し,審決がこれらの構成の容易想到性を否定した判断は誤りであると主張する。また,原告は,審決が,甲13ないし15,18ないし30の特許公報等を証拠として採用しなかったことは誤りであると主張する。しかし,原告の上記主張は,以下の理由により,採用することはできない。

すなわち,本件無効審判においては,甲1ないし8に記載された公知技術に基づく容易想到性が無効審判の請求の理由とされていた。他方,甲13ないし15,18ないし30の特許公報等は,仮にそれらに記載された技術が周知技術といえるものであったとしても,それらの内容に照らすと,相違点4に係る訂正発明2の構成,相違点5に係る訂正発明3の構成の容易想到性を判断するに当たり,甲1ないし8に記載された公知技術を単に補うにとどまるものではなく,それとは別に,容易想到性を基礎付ける公知技術を示すものと解される。

そのため,本件無効審判においては,請求の理由の補正が許されない限り,甲13ないし15,18ないし30の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効理由を主張することは許されなかった。しかし,相違点4に係る訂正発明2の構成,相違点5に係る訂正発明3の構成は,本件訂正により追加,変更されたものではなかったから,甲13ないし15,18ないし30の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効理由を追加するとの無効審判請求の理由の補正は,訂正請求によって補正の必要が生じたものではなく,請求の理由の補正として許容される余地はなかった(特許法131条の2第2項1号参照)。したがって,本件無効審判においては,甲13ないし15,18ないし30の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効理由の判断をすることができなかったものであり,同旨の審決の判断に誤りはない。そして,本件無効審判において,甲13ないし15,18ないし30の特許公報等に記載された技術に基づく進歩性欠如等の無効理由は審理判断されていないから,その無効理由を本訴において新たに主張することは許されない。なお,甲13ないし15,18ないし30の特許公報等に記載された技術との対比における進歩性欠如等の無効原因は,本件無効審判とは別に,それらの無効原因に基づいて無効審判請求をした場合には,その無効審判において主張することができる。

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Last Update: 2011-03-03 12:31:21 JST

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